《夫と愛人に地獄に突き落とされた私を救ってくれたのは「若」と呼ばれる裏の世界の人でした》全部章節:第 161 章 - 第 170 章

181 章節

161話

「お帰りなさいまし、若!」 「若頭お帰りなさいまし!」 「姐さんもお帰りなさいまし!」 音羽と伏見が手を繋ぎながら門の前まで歩いて行くと、頑丈な門が開き、中から大勢の男たちが出て来た。 男たちは殆どが厳つい見た目で、スキンヘッドの頭にはちらほらと傷跡が目立つ人も多く見受けられた。 大きな声で音羽と伏見を出迎え、腰を落としてずらりと並ぶ光景は圧巻としか言いようがない。 だが、そんな出迎えなど受けた事のない音羽は、呆気に取られ、あまりの勢いに気圧され気味だった。 そんな音羽を庇うように伏見が音羽の前に進み出て、目の前で並んでいる男たちに向かって口を開く。 「おいやめろ。音羽が怖がってるだろうが。顔がやばいやつらは中に入ってろ」 伏見の声音は、普段よりも低く重低音。 ドスの効いた声、と表現するのが相応しいくらいに威圧感のある聞いた事のない声だった。 伏見の言葉に、男たちは「かしこまりやした!」と大声で返事をすると大慌てで家の中へと戻って行く。 その場に残ったのは、強面の男たちではなく伏見のように若く、容姿の整った者や音羽に恐怖を与えない容姿の男たちだけが残っている。 伏見は音羽の腰を抱き寄せると、1番前にいる男を示し、音羽に説明をした。 「音羽。こいつは陸野だ。俺の補佐をしてくれている。俺がいない時は陸野を頼ってくれ」 伏見の言葉に、陸野と呼ばれた男はぴしっとしたスーツ姿に違わず綺麗に音羽にお辞儀をした。 「初めまして、音羽様。若の補佐役の陸野 翔と申します」 「あ、ご、ご丁寧にどうも……」 音羽は呆気に取られたまま、陸野から差し出された名刺を受け取る。 その様子を見つめていた伏見は、音羽の手から陸野の名刺をさり気なく取り上げると「後で陸野の連
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162話

「良く来たな、音羽さん。さあ、こっちに座りなさい」 「は、はい。失礼します……!」 にこにこ。 にこにこ、にこにこ。 音羽が想像していた「組長」と呼ばれる人。 だが、音羽がイメージしていた人物像とは全く正反対と言っていい程の、渋くて容姿の整った男性がそこには居た。 (こう……、ヤクザの組長って漫画やドラマでよく見るような、厳つい顔つきの人を想像していたのだけど……) だが、今。 音羽の目の前でにこにこと嬉しそうに笑っている男性は、伏見の父だと言われて納得する程容姿の整った男性。 そして、その男性の腕の中にはこれまた伏見に良く似た女性がすっぽりと腕に包まれ、抱かれていた。 その女性は遠い目をしていたが、音羽の視線を受けるとハッとして伏見の父の腕の中でしゃんと背筋を伸ばす。 そんな2人に伏見は呆れたような目を向けて口を開いた。 「おい……親父にお袋……。音羽が引いているだろ。少しくらい離れたらどうだ?」 「……蓮夜、お前だってその内同じ事をし出す。慣れろ」 「そうは言ってもな。好きな女の前で両親のだらしない姿を見せたくないんだよ。俺の気持ちを少しは分かれよ……」 だらしない?そうか?と伏見の父は腕の中にいる母親に顔を向けた。 だが、母親は諦めたような顔をして、何の言葉を返さない。 「ほら見ろ。嫁も問題ないと。気にしているのはお前だけだ。音羽さんも別に気にしないだろう?」 急に自分に話を振られた音羽は、慌てて返事をする。 「はっ、はい!仲が良いご夫婦で羨ましいです!」 音羽が咄嗟に返した言葉に、伏見の父は満足そうに、嬉しそうに笑みを浮かべる。 「そうだろう、そうだろう。俺は嫁にベタ惚れでな……。常に傍に居てくれないと不安で仕方ない。だが、音羽さん。こいつは俺の血も引いているから似たような癖が出るかもしれん。それでもいいのか?」 「に、似たような癖……ですか」 「ああ。嫁が少しでも視界から消えると不安でな……。仕事で家を離れる際は仕方ないと割り切っているが、帰ってくるともう駄目だ。どこかに行ってしまいやしないかと不安で常に捕まえておかないと気かますまない」 「そ、そうですか……」 それ程、旦那に愛されているのか、と音羽はちょっぴり、ほんのちょっぴり羨ましく思った。 そんな音羽の気持ちを察したのだろう。 伏見の母親はさ
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163話

そんな音羽の隣に座っていた伏見は、申し訳なさそうに音羽の肩に手を置いた。 「すまない、音羽。結婚したい女性が居る、と親父に話した時に俺と音羽が昔会った事がある事も、音羽の両親の事も……全部話してある」 俺は、伏見組の次期組長だから。 一緒になる人の情報はある程度調べられるんだ、と伏見が説明をした。 それを聞いた音羽は、伏見の両親に顔を向けた。 「──なら、私が過去に結婚していた事も……、子供を産んだ経験がある事も、全部……?」 音羽の言葉に、伏見の父と母は頷いた。 するり、と父の腕から抜け出した母は、音羽の目の前までやって来ると膝を着いて音羽の手を握った。 「……ええ、ごめんなさいね音羽さん。あなたの許可も何も得ていないのに……こんな風に調べてごめんなさい」 「い、いえ……。隠すつもりはなかったですし、今日、この場で私もお話するつもりでした。……お話して、ご両親を説得しよう、と思っていたんです……」 「大丈夫よ、説得なんて必要ないわ。過去に蓮夜を助けてくれただけであなたはとても優しくて素晴らしい人だと分かっているわ。それ以降……大人になってから沢山辛い思いをしたわね……。これからは蓮夜と一緒に幸せになってくれたら嬉しいわ」 伏見の母親から優しい表情で優しい言葉をかけられ、音羽の涙腺は決壊した。 「すっ、すみません……っ、こんな風に言っていただけるとは思わなくって……っ、ご両親には厳しい事を言われる、と覚悟をしておりました……、それなのに……っ」 「あらあら。目が腫れちゃうわ。蓮夜、音羽さんを部屋に案内してあげて。そして、うちの事をしっかり説明してあげなさい」 母親にそう言われた伏見は「分かったよ」と言葉を返し、その場に立ち上がる。 「音羽、立てるか?」 「うっ、は、はい……」 よろよろ、と音羽が立ち上がるのを伏見が支える。 音羽を支えた伏見は、両親に顔だけを向けて話した。 「離れを使ってもいいか?そこで音羽に話す」 「ええ、掃除をさせてあるから大丈夫よ」 「蓮夜、明日の朝食は家族で食べるぞ。音羽さんを連れてくるんだぞ?」 「──……分かってるよ」 伏見は小さく言葉を返すと、音羽を支えながら部屋を出て行った。 ◇ 本邸とは別にある離れ。 そこに移動している間、不思議なほどにこの家に居る他の人達と会う事は無かった。
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164話

「落ち着いたか?」 「すみません、蓮夜……大丈夫です」 離れの部屋。 離れに移動してきた音羽と伏見。 部屋に入るなり伏見は音羽に座布団に座るよう進め、自分は備え付けのキッチンに向かい、音羽と自分の飲み物を用意すると音羽の傍に戻ってきた。 冷たい緑茶が切子グラスに注がれていて、ガラスに氷がぶつかる音がとても澄んでいて、耳に心地よかった。 「本当にすみません……突然泣いたりして、蓮夜のご両親は驚きましたよね……」 グラスを両手で持ったまま俯いた音羽が呟く。 音羽の目の前に座っていた伏見は優しい声で「そんな事ない」と答えた。 「……今までどれだけ音羽が大変な人生を送ってきたのか……俺の親父も、お袋も十分分かっている。辛い日々を思い出して感情が昂るのは良くある事だから、気にしないでいい」 「……どうして蓮夜はそんなに優しいんですか。蓮夜だけじゃない。蓮夜のお父さんも、お母さんも私にあんな風に優しく声をかけてくれて……」 「俺が優しい……?音羽がそう思ってくれるのは、俺が音羽の事が大事で、好きだからだ。好きな女に優しくしたいのは当然だろう?」 すり、と伏見の手が音羽の頬を優しく撫でる。 音羽は無意識に伏見の手のひらに自分の頬を擦り寄せた。 そんな音羽の行動が伏見は愛おしくてたまらない。 たまらず、伏見は音羽の唇を塞いだ。 まるでじゃれ合うように何度も音羽の唇を啄んでいると、擽ったかったのだろうか。 音羽は小さく笑い声を漏らす。 「ふっ、ふふ……っ、擽ったいです蓮夜……」 「ああ、やっと笑ったな。本家に来てから音羽の表情が強ばっていたから……。緊張なんてしなくて良い。音羽はもうこの家の一員だからな」 「──んっ」 何度も何度も角度を変えてキスを落とされていた。 それが伏見がぐっ、と顔を寄せてきて音羽の後頭部を手のひらで引き寄せた。 次第に激しくなるキスに音羽の頭はぼうっと霞がかってくる。 息が苦しくなり、小さく喘ぎながら音羽が伏見の胸を叩くと、たっぷり音羽の口内を蹂躙し尽くした伏見の唇がようやく離れた。 息を乱していた音羽は、たまらず伏見の胸元に寄りかかると、伏見は音羽の髪の毛を指に巻き付けたり梳いたりして遊んでいる。 とくとく、と規則正しく脈打つ伏見の心臓の音が音羽の耳に届き、ようやく息が整って来た頃。 音羽はもぞり、
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165話

あれ程好意的に受け入れられるとは考えていなかったのだ。 離婚歴がある事も。 恭を産んでいる事も。 しっかり説明しないといけない、と音羽は気負っていた。 玉櫛 樹と結婚した事は、音羽にとって人生で1番のミスだ。 だが、彼と結婚したからこそ恭を授かった。 それだけが、音羽にとって樹と結婚して良かったと思えた。 だが、音羽にとって恭の存在が宝物だとしても。 伏見の両親にとってはそうとは限らない。 わざわざ離婚歴があって、子供もいる自分を選ぶより、結婚歴がなく、伏見より若い女性は沢山居る。 (それに……) 音羽の気持ちが落ち込む。 以前、都内の高級クラブに伏見と一緒に行った時。 あからさまに女性から敵意を向けられた事を音羽は覚えている。 伏見は、伏見組の若頭だ。 彼の仕事を知っている女性は、音羽が思っているより多いだろう。 仕事に理解がある女性より、何も知らない自分を選んでくれた事が音羽は嬉しかった。 だから、どれだけ反対されたとしても、ご両親を説得しよう──。 そう、覚悟を決めていた音羽だったのだが、実際伏見の本家にやって来てみれば、伏見の両親は音羽にとても好意的で。 それどころか、音羽の過去も何もかも全て知った上で歓迎してくれたのだ。 一体、伏見はいつから──。 いつから、自分を迎え入れたいと思い、両親に自分の事を話してくれていたのだろう、と音羽は涙で滲む視界で伏見の顔を見つめた。 「ど、どうした音羽?」 音羽が涙を浮かべている様を見て、伏見が狼狽える。 そんな伏見がとても愛おしくて、音羽はふるふると首を横に振って笑った。 「──いえ、蓮夜にとっても愛されているんだなぁって再確認したんです」 「……?当然だろ?」 あっけらかんと答える伏見に、音羽はぎゅっと抱きつく。 「まさか、私が離婚している事も……それに恭ちゃんがいる事も説明してくれていて……ご両親にも受け入れて下さっていて……。私、幸せ過ぎて死んじゃいそうです」 「それは困る。音羽はまだまだこれから幸せになるんだから、これくらいで死なないでくれ」 くつり、と喉奥で笑った伏見に、再び唇を塞がれる。 音羽は伏見の首に自らの腕を回し、キスを受け入れた。 「私だけじゃなくて、恭ちゃんも一緒に大切に思ってくれてありがとうございます、蓮夜」 「当然だ。音羽が
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166話

「泣いてばかりだな……」 伏見は小さく笑うと、困ったように眉を下げて音羽の流れる涙を指で拭う。 その行為もとても優しくて音羽は伏見への気持ちがどうしようもなく大きくなるのを感じた。 これ程自分を愛してくれる人は、二度と現れないだろう。 心の底からそう思った音羽は、伏見の首に回していた腕に少しだけ力を込めた。 不思議そうにしつつ、伏見は素直に音羽に顔を寄せてくれる。 間近で数秒見つめ合い、音羽は自ら伏見の唇に自分の唇を重ねた。 軽く重ね合う程度。 だけど、音羽からのキスに伏見は驚いたように目を見開き、そしてすぐにとろんと目を蕩けさせた。 伏見の瞳には「嬉しい」と言う感情がありありと見て取れた。 さっきのキスは、途中で止めてしまった。 だから音羽は自分の後頭部に回った伏見の手のひらに引き寄せられ、深く濃厚なキスをされても今度は胸を叩いたりして止める事はしなかった。 ◇ 明け方。 昨夜は濃厚な夜を迎えてしまった、と音羽は寝起きのぼんやりとした頭で考える。 音羽の隣には、肌を晒したままの伏見が同じ布団に入り、音羽を抱きしめた格好のまま。 「蓮夜、蓮夜起きて……」 音羽は軽く伏見に声をかけつつ肩を揺すってみるが、深く寝入っているのだろうか。 伏見はぴくりとも動かない。 穏やかで、規則正しい伏見の寝息だけが聞こえてくる室内で、音羽はどうしようか、と考える。 昨夜はさんざん伏見に喘がされ、喉が乾いてカラカラだ。 (そう言えば……この離れに来た時に蓮夜が用意してくれたお水……まだテーブルの上に残ってるわよね?) 自分のお腹辺りに巻きついている伏見の腕を、起こさないように慎重にどかし、音羽は音を立てないように起き上がる。 体のあちこちが痛いし、筋肉痛のような痛みを感じるがなるべくゆっくり動く。 伏見が着ようと思っていたTシャツだろうか。 近くに無造作に置かれているのを見つけて、音羽はとりあえず何も身につけていない状態から伏見のTシャツを拝借して身に纏う。 伏見の身長は平均男性に比べ、とても高い。 体もがっしりとしているため伏見が着ているTシャツは音羽が着ると太ももあたりを軽く隠してしまう程の大きさだ。 「……わ、ぶかぶかだ」 音羽は自分の姿を見下ろすと少しだけ喜色に満ちた声で呟く。 まるで全身を伏見にすっぽりと包まれてい
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167話

「体は?大丈夫か?」 グラスから唇を離した伏見にそう言われるなり、音羽は顔を真っ赤にした。 赤く染まった頬のまま、じとりと伏見を睨んだ音羽は、もにょりと口を開く。 「……毎回心配してくれるのは嬉しいですけど、そう思うなら少しは手加減してください」 「最初はな、そう思っているんだが……」 そこで不自然に言葉を切った伏見が、グラスで自分の口元を隠しつつ、目の前に居る音羽をゆっくりと見下ろす。 上から下までじっくりと伏見の視線が辿るのを感じて、音羽は何だかその視線がこそばゆく感じてそっと目を逸らす。 伏見が片手で持っていたグラスをシンクに置いたのが、逸らした視界の端に映った。 と、同時に伏見が音羽の耳元で低く囁いた。 「音羽が毎回俺を煽るからしょうがないだろ?」 「──あ、煽っ!?」 「今だってそうだ。俺の服を着て、そんなに刺激的な格好をしている。これを煽っていないと言わずして、何を言うんだ?」 「なっ、そ、そんなつもりは──」 ただ、何も身につけないのは流石に、と思って音羽は伏見のTシャツを借りただけだ。 それがどうして伏見を煽るだなんて結果になるのか。 音羽は思わず言い返そうとしたが、自分を見下ろす伏見の瞳に、危険な色が浮かんでいるのを見て音羽は息を呑んだ。 「この下には何も履いてないんだろ?」 「──ひゃあっ!」 「ああ、ほら。こんな簡単に裾から手が入る。上は?上も何も付けてない。これで煽ってないなんて信じられないな」 「ちょっ、やだっ、蓮夜……」 喋りつつ伏見は音羽のお尻に手を回し、大きな手のひらでお尻を揉む。 そして、片手はお尻を揉みながらもう片方の手はワンピースのようになっている裾から手を差し込み、するすると伏見の熱い手のひらが音羽の下腹部を撫で、薄い腹を撫で、そして胸へと伸びる。 「──ひぅっ」 臀部への刺激で、音羽の胸の先は既に硬くなっていた。 そこを伏見の指先が優しく弾き、音羽は思わず上擦った声を上げてしまった。 びくっ、と体が跳ね、膝から力が抜けてしまった音羽の足の間に自らの膝を差し込んだ伏見は、ぐっと覆い被さるようにして音羽の唇を塞いだ。 「んぅ……っ!?」 キスの間も、音羽の体を這う伏見の手の動きは不埒に、そして段々と大胆な動きに変わって行く。 明らかに快楽を引き出すような動きに変わり、音
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168話

音羽が絶頂の余韻に浸って、息を整えていると不意に体を持ち上げられるような感覚がした。 「──えっ、……あぁっ!」 「──ぐっ」 ぐずぐずに溶けた音羽の中に、勢い良く伏見が突き入れられる。 はくはく、と空気を求めるように動く音羽の口を、伏見は容赦なく自分の唇で塞ぐと、最初から激しく腰を突き上げ始めた。 「──っ、っ!」 シンクの壁に押し付けられ、音羽の両足は伏見に抱えられてしまっている。 自重で深く咥えこんでしまっているせいで、伏見自身が最奥まで届いている。 伏見が腰を突き上げる度に両足を抱えられた音羽の足は、衝撃に比例してビクビクと跳ね上がる。 (これ以上深い所に入ったら死んじゃう──!) 音羽は心の中で悲鳴を上げると、これ以上自分の体が落ちてしまわないように必死に伏見に抱きついた。 音羽が着ていた伏見のTシャツは、いつの間にか鎖骨が見えてしまうほど上に捲り上げられてしまっており、音羽と伏見の裸の胸同士が強く触れ合う。 音羽の柔らかな胸は伏見の胸に潰され、その柔らかさに伏見は目を細めた。 「──んっぅ……!」 一際伏見の突き上げが強くなる。 苛烈な突き上げに音羽は必死に伏見に抱きつき、それがまた伏見の情欲を昂らせる。 キッチンでは、それから暫くの間。 肌を打つ音と酷い水音がひっきりなしに響き続けた。 ◇ 「馬鹿っ、変態っ、ドスケベっ!!」 「悪い、悪かったよ、音羽」 「しっ、信じられないですっ、あんなば、場所でっ!朝からっ、人が呼びに来るまでっ!」 音羽は真っ赤な顔を隠すためにタオルケットを頭から被り、引きこもっていた。 あれから。 伏見に求められるまま、音羽も快楽に溺れてしまった。 早朝に目が覚めてから、いったい何時間体を繋げていたのだろう。 最初はキッチンだった。 だが、時間が経つにつれてする場所は何度も変わった。 キッチンから布団、布団から風呂場。 そして風呂場から最後に布団で再び抱き合っている時だ。 離れの扉が控え目に開く音がした。 そして、これまた申し訳なさそうに、気まずそうに外から声がかかったのだ。 「若、それに音羽姐さん……そろそろ母屋に……」 その声は、音羽にも聞き覚えがあった。 昨日、ここに着いた時に出迎えに来てくれていた伏見の補佐役──陸野だ。 あの声の感じと、申し訳なさそ
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169話

◇ 「ああ、おはよう音羽さん」 「おはよう、音羽さん」 伏見に腰を支えられて母屋に向かった音羽を待っていたのは、笑顔の伏見の両親だった。 「お、おはようございます!遅くなってしまい、申し訳ございません……!」 勢い良く頭を下げる音羽に、伏見は「頭なんか下げなくて良い」と面白くなさそうに言う。 そんな伏見の脇腹を音羽は肘で多少強くつついた。 そんな2人をどこか微笑ましそうに見ていた伏見の母親は、自分の肩を抱いていた父親の腕を払い、立ち上がって音羽に近付く。 「気にしないで大丈夫よ、音羽さん。どうせ蓮夜が無茶をしたのでしょう?可哀想に……馬鹿な男達からは距離を取った方が良いわ」 「えっ、あっ、は、はい……」 手を引かれるまま音羽は母親の隣に座る。 その場に立ったままの伏見に「あんたは父親の隣に座りなさい」と言うように母親が軽く顎をしゃくる。 据わった目で伏見にそれだけを告げる母親。 伏見は母親に何も言い返す事はせず、バツが悪そうに父親の隣に座った。 「音羽さん、今日これから時間はある?」 「わ、私ですか?」 「ええ。もし時間があれば一緒に買い物でもどうかしら?」 にこにこ、と笑顔で買い物に誘ってくれる伏見の母親に音羽はどう返事をしたら、とちらりと伏見を見やる。 だが、伏見は音羽の視線を受けて「好きにしていい」と言うように軽く微笑んだ。 それを見た音羽は母親に向き直り、笑顔を浮かべて頷いた。 「ぜひ、ご一緒させてください」 ◇ 「私、蓮夜を産んでから体を壊してしまってね。蓮夜は一人息子なのよ」 遅い朝食が終わり、午後。 伏見の母親──伏見 百合奈(ゆりな)はどこか寂しそうに笑うと、音羽にワンピースを当てながら言葉を続ける。 「本当は娘も欲しかったんだけど……どうにもならなくて。だから、音羽さんと会えた事がとても嬉しいのよ」 「お母様……」 「それに、音羽さんは子供の頃、蓮夜を救ってくれて……音羽さんのお母様が警察に通報してくれなかったら、蓮夜の身に危険な事が起きていたかもしれない。……だから、音羽さんを始め、音羽さんのご家族にも感謝してもし切れないのよ」 これ似合うわね、と朗らかに笑った百合奈が少し後ろで着いて来ていた伏見にワンピースを渡す。 「だから、蓮夜が結婚したい女性に音羽さんの名前を口にした時、これは運
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170話

◇ 「それじゃあ、気を付けて帰ってね」 「音羽さん。また蓮夜といつでも遊びにおいで」 「はい、今日はありがとうございました。お買い物も、沢山買っていただきすみません」 いいのよ、またね。 嬉しそうに笑って手を振ってくれる百合奈と伏見の父・冬夜に頭を下げた音羽は車の助手席から2人の姿が見えなくなるまで手を振っていた。 買い物を終えた後、伏見の両親と音羽と伏見は近くの料亭で食事をした。 その後は本家には帰らず、そのまま玉櫛の家の近くにある伏見の家に2人で帰った。 伏見が運転してくれている車のトランクには、沢山の贈り物が乗っている。 百合奈は音羽の洋服やアクセサリー、靴やバッグまで購入してくれたのだ。 持ち帰る事が出来ない分は、伏見が配送の手配をしてくれた。 「音羽、疲れていないか?大丈夫か?」 赤信号で車が停まり、伏見がハンドルに手を添えたまま音羽に顔を向ける。 「大丈夫ですよ、すっごく楽しかったです。何だか……お母さんと買い物をしてるみたいで、嬉しかったです」 「そうか、それなら良かった。お袋も音羽と買い物するのが楽しいみたいだ。また付き合ってやってくれ」 「ええ、私で良ければもちろん!」 音羽が笑顔で答えると、酷く優しい顔で伏見が微笑んでいる。 その表情を真正面から見てしまった音羽は、今朝の事を思い出してしまい咄嗟に伏見から顔を逸らした。 (お、お母様とのお買い物が楽しくて忘れてた……!そ、そう言えば昨夜は蓮夜と……ご実家で……っ) それに、恐らく皆に知られていた。 買い物の楽しさでその事をすっかり忘れていたが、伏見と2人きりになった静かな車内で、ぶわりと昨夜の事と周囲に知られてしまったであろう事を思い出し、音羽は自分の顔を両手で覆った。 「──〜っ、は、恥ずかしい……」 蚊の鳴くような声で呟いた音羽に、伏見はちらりと視線を向ける。 赤信号から青に変わり、車がゆっくりと動き出す。 「どうした、音羽?」 音羽の声が聞き取れなかったのだろう。 伏見は運転しつつ音羽に話しかける。 音羽当人は、伏見が前を向いているのをいい事にじっとりとした目で伏見に視線を向け、常より低い声で答えた。 「……ご実家に遊びに行った時は、蓮夜とは絶対に一緒の部屋で寝ませんから」 「──は!?どうしてだ!?」 「わっ、ちょっ、ちょっと
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