《夫と愛人に地獄に突き落とされた私を救ってくれたのは「若」と呼ばれる裏の世界の人でした》全部章節:第 151 章 - 第 160 章

181 章節

151話

寝室に残された音羽は、息を整えると伏見が出て行った寝室の扉を見つめる。 「……電話が鳴る事なんて、今まで殆どなかったのに」 震える体を何とか起こし、呟く。 伏見とこう言う事をする際。 寝室で、伏見のスマホが着信音を鳴らす事は殆どなかった。 こうして伏見と抱き合う時に、電話が鳴って中断してしまう──、そんな事は今まで1度もなかったのだ。 伏見が敢えてそうしてくれているのだろう、と音羽は薄っすらと感じていた。 伏見は、音羽との時間を大事にしていた。日中も音羽と過ごしている時は、なるべく仕事の対応はしない。 音羽と過ごしている、そんな時に仕事の電話が鳴るのは無粋だ。 だから音羽は伏見と過ごしている時に電話に出る姿を殆ど見た事がない。 恐らく、ほんの数える程度。 しかも、夜──。 こうして2人で寝室に居る時に電話が鳴る事なんて、そして伏見が電話に出る事なんて、今までなかった。 今日が初めてだ。 音羽は、力が入らない体を何とか動かし、足をベッドから下ろす。 足に力が入らず、ガクガクと震えているがそれでも立ち上がろうとした時──。 「──音羽?どうした?」 扉を開けて、伏見が戻ってきた。 伏見は音羽がベッドから降りようとしているのを見て慌てて駆け寄ってくると、音羽を支えた。 「手洗いか?それなら連れて行くぞ?」 「あ、蓮夜──。違うんです、蓮夜が……」 「俺……?」 きょとん、と目を瞬かせている伏見に音羽は自分の行動が恥ずかしくなってしまい、さっと目を逸らした。 「その……蓮夜が戻って来なくて……」 恥ずかしそうにしている音羽を見て、伏見はぴんときた。 自分の考えが合っているなら。 伏見は自分の口元が笑みの形に変わるのを感じた。 「何だ……?俺が居なくて寂しくなった?」 「──っ!?」 伏見の言葉を聞いた瞬間、音羽の顔が一瞬で真っ赤に染まった。 音羽が何か言葉を発さなくとも、その反応だけで答えは出ているような物だ。 伏見は嬉しそうに目を細めると、ベッドから降りてこようとした音羽を抱き上げた。 「──きゃあっ!?」 いきなり抱き上げられ、視界が高くなった事に驚き、音羽が声を上げると、伏見は楽しそうに歩き出した。 「汗やら色んな物で体が気持ち悪いだろう?一緒に風呂に入ろうか、音羽」 「えっ、やっ、大丈夫です…
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152話

◇ 音羽の甲高い嬌声と、お湯が跳ねる音が浴室内に響く。 伏見は自分に跨る音羽の腰を掴む手のひらに力を込めて腰を突き上げた。 「──あっ!」 「……ふっ、」 いったい、どれだけの時間こうしてお風呂で体を繋げているのだろうか。 音羽は、快楽でぼうっとする頭で考える。 伏見と一緒にお風呂に入れば、こうなる事は目に見えていた。 だが、強く拒む事もできず音羽は伏見から与えられる快楽にただただ喘ぐだけしか出来ない。 「──〜っ」 音羽が声にならない声を上げ絶頂に達すると、一拍遅れて伏見が音羽の体を力一杯抱きしめ、ぶるりと体を震わせた。 先程までお湯の跳ねる音と、水音、肌を打つ音や嬌声が木霊していた浴室内は、今は2人分の荒い息遣いが響くのみ。 「音羽……」 「ん、蓮夜……」 伏見が音羽のお腹に腕を回し、音羽の首筋に頬を擦り寄せる。 それがとても擽ったく、音羽が小さく声を漏らすと何の気なしに伏見が口を開いた。 「例のパーティーは、来週だ……。ドレス姿の音羽が色んな奴の目に入ると思うと、少し気分が悪い」 「──っ!」 「見せびらかしたい気持ちと、音羽を誰にも見られないように部屋に囲っておきたい気持ちがせめぎ合ってる……」 「まぁ……ふっ、ふふ……」 「何がおかしいんだ?」 不機嫌さを隠しもしていない伏見に、音羽は笑い声を零してしまう。 むすっとする伏見の頬を音羽は優しく撫でつつ、こつんと額同士を合わせた。 「でも……大切なパーティーです。蓮夜も言っていたでしょう?あの人達に、今の私を見せつけるんです。……私に対して犯した罪を償わせないと……」 「そうだな……。正攻法じ
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153話

都内、某ホテル。 ホテルのメインホールを貸し切って開催されるパーティーは規模もとても大きく、音羽は来場者の多さにくらり、と目眩を覚えた。 「──っと、……大丈夫か音羽?」 「え、ええ……すみません、蓮夜。こんなに大きなパーティーは初めてで……」 「そうなのか?」 意外そうに目を丸くする伏見に、音羽は頷いた。 実際、音羽は何度かパーティーに参加した事はある。 当時、夫である樹に誘われて何度かパーティーに参加した。 だが、樹の会社に裕衣がインターンとして入社してからパーティーに誘われる事は目に見えて減っていった。 樹は、業界でも有名なほどの女好きだ。 そんな彼が音羽に一目惚れして、口説き落として音羽と付き合い、そして結婚した。 その期間がとても短く、当時周囲は沸き立ったものだ。 女にだらしのなかった樹がたった1人を選び、結婚までした。 これが真実の愛か、と当時はどこに行っても騒がれたものだ。 そんな周囲の騒ぎに、音羽も流されてしまっていた部分もある。 両親を亡くし、日々生きるのに必死だった音羽。 そんな音羽の目の前に、見目も良く権力も、地位もある男が跪き、愛を乞うたのだ。 大財閥の御曹司に見初められた、一般女性──。 まさしく、音羽の身に起きたのは壮大なシンデレラストーリー。 だが、そんな幸せな日々は1年と持たずに消えた。 あれだけ音羽に愛を囁き、愛を乞うていた樹は、手に入れたものに段々と興味を失っていった。 そして、元々の女好きな性格が音羽を妻に迎えたとは言え、簡単に治る訳がなかったのだ。 あっという間に音羽は樹から興味を失われ、裕衣が会社にやって来てからは彼女を伴い、パーティーに参加する事が増えたのだ。 妻を同伴するよ
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154話

あそこに居る女性は誰だ? あんな美しい女性、居たか? あの男は──今噂になっている人材派遣会社の代表じゃないか!?結婚していたのか!? 周囲は、噂話をしていたが音羽にも伏見にもそんな話は耳に届いていなかった。 誰も今の音羽がかつて、玉櫛ホールディングス代表の社長夫人だった事は覚えていない。 大騒ぎになったのは、一瞬だけ。 あれから、5年以上が経っている。 このような業界では昔の事はすぐに風化し、忘れ去られていく。 だが、この音羽の事を信じられない、と凝視する人間も居た。 「──あれ、は……、音羽……?」 「え……?樹?今なんて言ったの?」 このパーティーに参加していた玉櫛夫妻。 樹と裕衣は、音羽と伏見が会場にやって来る少し前に到着していた。 周囲がざわめき、美女が居ると色めき立っているのを見て、樹も鼻の下を伸ばしてその美女を探していたのだ。 参加者が注目する方向に視線を向けると、そこには曲線美が綺麗で、普通だったら艶めかしく下品とも取れるようなドレスを上品に着こなした女性が幸せそうに傍らの男に笑いかけ、歩んでいる姿があった。 最初は柔らかそうな肢体に視線が行っていた樹だったが、顔を見てみたい、と体から顔に視線を移してそこで絶句した。 見間違うはずが、無い。 確かに5年前、自分がプロポーズをして妻にした女が。 そして、不倫相手のために切り捨てた女が。 自分の子供を産んだ女が、目の前を颯爽と歩き、去って行ったのだ。 樹は唖然と目を見開き、ただただ音羽を遠くから見つめる事しか出来なかった。 自分の隣に立っている裕衣なんぞ目にも止まらないほどの美しさ。 それに、子供を産んでいるとは思えないほど若々しく、しなやかな肢体。 5年前より確実に色気が増した音羽を遠目から見た樹は、ごくりと喉を鳴らした。 (音羽──、あれは間違いなく音羽だ……!まさか、俺がこのパーティーに参加すると聞いて、追いかけて来たのか……!?) それほどまでに音羽に想われている──。 樹は壮大な勘違いをすると、にやりと口角を持ち上げて音羽の方へ向かおうと足を踏み出した。 だが、1歩足を進めた所でぐいっと後ろから引っ張られるような感覚に、樹の体はつんのめった。 「──っ!?」 「樹、どこに行くの?」 「……裕衣か。忘れてた」 「わすれ、……ハァッ!
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155話

「──えっ、あそこに居る男性って……もしかして、伏見さん!?」 裕衣の声が甘ったるく媚びるように跳ねる。 その声を聞いた樹は、不愉快そうに眉を潜めると裕衣に目を向けた。 「──伏見?あの男の事を知っているのか?」 「ええ、家の近くに住んでいる方よ!」 「……家の近く?」 裕衣の言葉に、樹の眉間の皺は益々深くなっていく。 「……偶然か?それとも……」 樹はそうぽつりと呟くと、裕衣の腕を引いたまま再び歩き出した。 「えっ、え、樹あなた伏見さんを知っているの!?」 「いや、見た事もない」 「えっ、じゃあどうして──」 裕衣の声が弾んでいる。 樹は煩わしそうに眉を顰め、裕衣の問いには答えぬまま音羽と伏見の背後から近付いた。 樹と裕衣が音羽達の前にやって来る、少し前。 伏見の事を知っている参加者に声をかけられ、音羽と伏見は足を止めて話しかけて来た参加者に対応していた。 「いやあ、伏見さんの会社は今飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長されていますね!ぜひその急成長の秘訣を教えていただきたいものです!」 ははは、と大きなお腹を揺らしながら豪快に笑う男性に、伏見はさらりと答える。 「そうですね……最近、運命的な出会いをしたからでしょうか?」 伏見はそう口にすると、意味ありげに音羽に流し目を向け、音羽の腰に回していた手に力を込めて強く引き寄せた。 「私には勿体ないくらいの女性と出会えて……そして共に歩むパートナーに私を選んでくれた。……彼女と出会えてからとても幸せな事ばかりが起きていますよ」 「れ、蓮夜……」 伏見の言葉に、周囲に居た女性たちはほう、と感嘆のため息を零し、男性達は伏見にそんな事を言わせた女性──音羽を驚きの表情で凝視した。 「ああ、あまり彼女を見つめないでください。私以外の男に彼女の意識が逸れるのは嫌ですからね」 伏見は艶っぽい表情で微笑むと、音羽の額に唇を落とす。 瞬間、周囲の女性達からは悲鳴が上がり、男性達は慌てて音羽から目を逸らした。 伏見の目が。 周囲の男性達に向けられた目が、牽制するように冷たく細められたのだ。 思わずゾッとするほどの寒気を覚えた男性達は、音羽を見てしまわないよう、そして音羽から自分が認識されないように必死になった。 伏見と会話をし
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156話

「──音羽」 背後から聞こえた声。 懐かしくも、憎らしい声──。 その声に名前を呼ばれた瞬間、音羽はびくりと肩を震わせた。 音羽の腰を抱いていた伏見にも音羽の震えが伝わったのだろう。 伏見は先程まで男性に向けて浮かべていた笑みを消すと、すうっと目を細めた。 周囲を凍らせるような冷たい視線と雰囲気に周囲に居たパーティーの参加者達は体を震え上がらせた。 そして、それは音羽に声をかけた樹も一緒──いや、音羽に直接声をかけた樹への伏見の殺気は周囲とは違い直接樹に向けられている。 そのため、樹は直接自分に向けられた伏見の底知れぬ殺意に顔を真っ青にした。 だが、樹が言葉を失っている一瞬の内に伏見は殺気を押し込めると、冷ややかな目を樹に向けた。 そして、興味を失ったように樹から視線を外し、伏見の顔は音羽に向けられる。 先程のような雰囲気など微塵も感じさせず、音羽に蕩けるような笑みを浮かべて見せている。 「──音羽」 伏見は甘く蕩けるような低い声で音羽の名前を呼ぶと、自分を見上げる音羽に軽くキスを落とした。 「れ、蓮夜……っ!」 「はは、悪い」 音羽の意識が、樹よりも自分に向いた。 それが分かり伏見は機嫌良さげに笑みを浮かべる。 一方樹は、自分が話しかけたと言うのに音羽が振り向きもせずに伏見に視線を向けたままなのが面白くなく、音羽の腕を掴もうと手を伸ばした。 「──おい!」 「……おっと」 だが、樹が音羽に触れようとした事を瞬時に悟った伏見は音羽の腰を抱き寄せて自分の胸に抱き寄せた。 「わ……っ!」 音羽は小さく声を上げると、そのまま伏見の胸に抱かれ、抱き込まれてしまう。 音羽は自分の後頭部に回った伏見の手に顔を引き寄せられ、自分の顔が伏見の胸にぺたり、と当たり頬を赤く染めた。 「……私のパートナーに気安く触れようとしないでくれ、玉櫛さん」 だが、頭上から落ちた伏見のひやりとした声と冷たい態度に、音羽の赤く染まっていた頬はすうっと冷めていく。 そうだ、この場所には今、樹が居るのだ。 音羽は伏見に抱き寄せられたまま、ちらりと視線だけを動かして背後を確認する。 すると、そこには。 「お前……っ、その女を離せ……、その女に話がある」 怒りを必死に堪え、拳を震わせている樹がそこに居た。 伏見は樹に音羽の姿が映らないように音
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157話

驚愕に満ちた、裕衣の叫び声が上がる。 その場に居合わせた参加者達が、どうして裕衣がそれ程驚きに満ちた声を上げるのか理解出来なかった。 理解出来ていたのは、当事者の音羽と伏見。 そして、樹と裕衣の4人のみだ。 裕衣は信じられないと言う顔をしていたが、次第にその表情は醜悪に歪み、忌々しげに音羽を睨み付けた。 そして、音羽を指差し樹に向かって大声で問う。 「どうしてここに音羽が!?それに、伏見さんの隣に居るの!?あなたは音羽が伏見さんと一緒にいるのを知っていたの!?私というものがありながら、まだ音羽なんかを欲しているの!?」 「裕衣──っ!」 「何よ!伏見さんは音羽なんかと一緒に住んでいるのよ!しかも家のすぐ近くにね!」 裕衣は、先日伏見の家まで来ている。 伏見の家は玉櫛の家と然程離れていないのだ。 その事を樹に伝えた裕衣だったが、その声はあまりにも大きく、周囲に集まっていた参加者達の耳にも入ってしまった。 「──なんだ?」 「伏見さんのパートナーと知り合いか……?」 「待てよ……音羽……、音羽?」 「何だか聞き覚えがあるぞ」 「玉櫛家に、音羽……待て……」 周囲のざわめきが樹の耳にも入り、樹ははっとする。 不味い、このままだと音羽がかつて玉櫛家の妻だった事が周囲にバレる。 音羽に何の後ろ盾もなければバレた所でどうって事はなかった。 だが、今音羽の隣にいる男は伏見だ。 最近自社の業績を伸ばし、数々の会社を買収している。 それも、まるで狙ったかのように樹の玉櫛ホールディングスと取引のあった会社から。 そこまで考えた樹は、はっと目を見開くと音羽と伏見を見た。 樹が伏見を視界に入れた瞬間、伏見が口角を上げて笑む姿が目に入った──。 その瞬間、樹は全てを悟ったかのような顔をした。 伏見は樹のその表情を見て、益々笑みを濃くする。 「──っ、貴様っ、わざと……!これも、全て計算尽くか……!」 「何を突然訳の分からない事を……」 樹が伏見に向かって指を突き付けると、伏見は喉奥でくつりと笑い、軽く肩を竦めた。 そんな彼らの周囲では、ざわめきは大きくなっていく。 誰かが音羽の名前に聞き覚えがある、と話し始め周囲の人間と情報を共有しだしてしまう。 その光景を見た樹は、このままだと音羽の正体が知られてしまうのも時間の問題だと判
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158話

去って行く樹と裕衣の背中に、音羽は怒りに満ちた視線を向けると、悔しげに呟いた。 「──逃げる、ですって?私は今までだって1度も逃げた事はないわ。逃げ続けていたのは自分のくせに……!」 「音羽、気にするな……」 悔しさと怒りで、音羽の体が震えている。 隣にいた伏見は音羽の肩を抱き寄せ、優しく抱きしめた。 そんな音羽と伏見の元に、先程まで遠巻きにしていた参加者達が集まってきた。 「──伏見さん」 「玉櫛社長とは顔見知りで……?」 みな、口々にその名前を出す。 表面上は心配している体を装っているが、誰の表情からも好奇心が透けて見えていた。 伏見が玉櫛ホールディングスの協力会社を尽く買収していっているのは周知の事実。 まさか狙ってそんな事をやっていたのか、と皆の興味を集めていた。 ただ、そこに今は音羽の名前も出てきて聞き覚えのある人間も混ざっている。 伏見は音羽にちらりと視線を向けた。 伏見の視線を受けた音羽は、強く1度頷いた。 音羽の強い意志の籠った視線を受け、伏見は殊更ゆっくりと口を開いた。 「そうですね……どうお話をすればいいのか──」 ◇ 「──くそっ、くそっ、くそ!」 「ちょ、ちょっと樹……!」 「どうしてあの場に音羽が居る!?あのパーティーには普通の人間は紛れこめない……!上流階級のパーティーだぞ!」 樹は裕衣の腕を引っ張ったまま足早にパーティー会場を出ると、ホテルのスタッフに車の手配を頼む。 車を待つ間、必死に頭を回転させる。 (これから、どうする!?前科者の音羽はもう二度と俺の目の前に姿を現す事なんて不可能だと思っていたが、今日のパーティーに参加出来ると言う事は、今後似たようなパーティーに音羽が参加する可能性が高い……!) そこではっとする。 先日、あの店で見たのはやはり音羽で間違いなかったのだ。 あの時は音羽と言葉を交わす事などできなかったが、やはりあの場所に音羽もいた。 (俺があの女を見間違う事などなかったんだ……!) 樹が考え込んでいる間、裕衣はずっと横で喚き続けている。 「ちょっと樹、聞いてるの!?伏見さんと音羽がどうして一緒にいるのよ!伏見さんはどうして音羽なんか……!あいつは前科者なのに──」 「うるさい女だな!考え事をしている間くらい黙っている事は出来ないのか!?そんなの俺が知るか
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159話

◇ 樹が裕衣を引き摺り帰り、パーティーが終わった後。 パーティーに参加していた者の中でこんな噂がまことしやかに囁かれ、ひっそりと広がっていった。 【玉櫛ホールディングスの社長と社長夫人は、無実の人間に罪を着せたらしい】 【用済みになった無実の人間を、玉櫛ホールディングスの社長は捨てて、不倫相手を正妻に置いた】 真偽は不明だが、誰しも人の不幸は蜜の味だ。 それに、多くの人は自分より優れ、成功している者を妬むもの。 しかも、昔からあまり良くない噂ばかりが流れていた会社の社長に対する、噂話。 誰もが興味も持ち、情報の共有をしたがった。 そして、その社長の元妻の存在も、今では思い出されて話の中心に上がっていた。 ◇ パーティーが終わり、家に戻って来た音羽と伏見。 自宅が見えた所で、車を運転していた伏見が呟いた。 「──待て、あそこにいるのは……」 「え……?」 伏見がじっと見つめる視線の先。 不思議に思った音羽が伏見の視線を追うと、そこには。 「嘘でしょ……どうして裕衣が居るの……!?」 音羽の言った通り、家の前には裕衣がパーティードレスにコートを羽織ったままの格好で待っていた。 音羽の言葉に伏見は眉を顰めて言葉を返す。 「……音羽に文句を言いに来たのか、それとも……」 「それとも……?」 「いや、何でもない。どうする?家に帰ろうにも、確実に邪魔をされるぞ?」 「でも、他に帰る場所なんて……」 ないでしょう?と口にする音羽に、伏見は「いや、あるが」とあっさり言葉を返す。 「ここは玉櫛の家の様子を観察しやすくするために買っただけだ。帰る家は他にある」 「えっ!?そうなんですか!?」 驚く音羽に、伏見はハンドルに手を置きちらりと音羽を窺う。 「だが……音羽を連れて帰ったら……周囲がうるさそうだ……」 「か、歓迎されていない、とか……ですかね?」 不安そうにする音羽に、伏見はきょとんと目を瞬かせる。 「ははっ、いや、違う。まさかそっちの可能性を考えているなんて。全くの逆だ」 「逆……?え?か、歓迎してもらえるんですか?」 不安そうに揺れる音羽の瞳に、伏見は安心させるように微笑んだ。 そして音羽の頬を優しく撫で、軽く前のめりになるとさらりと唇を奪う。 「忘れたか?俺の職業を」 「──あっ」 伏見の本来の仕
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160話

音羽が呆けたように「しゅ、祝言……」と呟いた事に、伏見は小さく笑みを零すと「冗談だ」と告げる。 その横顔が悲しそうに見えて、音羽は咄嗟に口を開いた。 「わ、私はそのお家に行っても構いません……!」 「──本気、か?」 音羽の言葉に、伏見は真剣な表情のまま返す。 そんな彼に音羽はこくりと頷いてから「はい」と答えた。 「……本当に組に連れて帰るぞ」 「私は、いい加減な気持ちで蓮夜とお付き合いをしている訳では、ないですから……」 「それはもちろん俺もだ。……本当にいいんだな?」 「はい。蓮夜の本当のお家に……連れて行ってください」 音羽の言葉に伏見は無言で頷き、アクセルを強く踏み込み車の速度を上げた。 スピードを落とさず、家の前を通過する。 前で待っていた裕衣は、今しがた目の前を通り過ぎた車に音羽と伏見が乗っているとは思わなかったのだろう。 手元のスマホに視線を落としたまま、立っていた。 伏見の本来の家──。 それは、伏見組の本拠地と言う事なのだろう。 そこに向かう道中、車内は緊張感が漂っていた。 伏見はいつ音羽から「やっぱり行くのをやめたい」と言われるかと緊張し、音羽はこれから向かう先がどんな場所なのか全く想像できず、そして伏見の父親──組長に初めて会う事に緊張していた。 (蓮夜のお父さん……組長が私の事に反対したらどうしよう……。蓮夜は組の若頭……、なのよね?将来、組を継ぐ人……そんな蓮夜が、結婚歴もあって……子供もいる私を選んでくれたのは凄く嬉しい事だけど……組長には反対されるかも……) 考えていると、どんどん思考がマイナス方向に行ってしまう。 (蓮夜の気持ちに疑いは無い、けど……もし組長に反対されて……親子の仲が悪く
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