寝室に残された音羽は、息を整えると伏見が出て行った寝室の扉を見つめる。 「……電話が鳴る事なんて、今まで殆どなかったのに」 震える体を何とか起こし、呟く。 伏見とこう言う事をする際。 寝室で、伏見のスマホが着信音を鳴らす事は殆どなかった。 こうして伏見と抱き合う時に、電話が鳴って中断してしまう──、そんな事は今まで1度もなかったのだ。 伏見が敢えてそうしてくれているのだろう、と音羽は薄っすらと感じていた。 伏見は、音羽との時間を大事にしていた。日中も音羽と過ごしている時は、なるべく仕事の対応はしない。 音羽と過ごしている、そんな時に仕事の電話が鳴るのは無粋だ。 だから音羽は伏見と過ごしている時に電話に出る姿を殆ど見た事がない。 恐らく、ほんの数える程度。 しかも、夜──。 こうして2人で寝室に居る時に電話が鳴る事なんて、そして伏見が電話に出る事なんて、今までなかった。 今日が初めてだ。 音羽は、力が入らない体を何とか動かし、足をベッドから下ろす。 足に力が入らず、ガクガクと震えているがそれでも立ち上がろうとした時──。 「──音羽?どうした?」 扉を開けて、伏見が戻ってきた。 伏見は音羽がベッドから降りようとしているのを見て慌てて駆け寄ってくると、音羽を支えた。 「手洗いか?それなら連れて行くぞ?」 「あ、蓮夜──。違うんです、蓮夜が……」 「俺……?」 きょとん、と目を瞬かせている伏見に音羽は自分の行動が恥ずかしくなってしまい、さっと目を逸らした。 「その……蓮夜が戻って来なくて……」 恥ずかしそうにしている音羽を見て、伏見はぴんときた。 自分の考えが合っているなら。 伏見は自分の口元が笑みの形に変わるのを感じた。 「何だ……?俺が居なくて寂しくなった?」 「──っ!?」 伏見の言葉を聞いた瞬間、音羽の顔が一瞬で真っ赤に染まった。 音羽が何か言葉を発さなくとも、その反応だけで答えは出ているような物だ。 伏見は嬉しそうに目を細めると、ベッドから降りてこようとした音羽を抱き上げた。 「──きゃあっ!?」 いきなり抱き上げられ、視界が高くなった事に驚き、音羽が声を上げると、伏見は楽しそうに歩き出した。 「汗やら色んな物で体が気持ち悪いだろう?一緒に風呂に入ろうか、音羽」 「えっ、やっ、大丈夫です…
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