どうにか自宅まで戻ってきた音羽と伏見。 自宅前には流石にもう裕衣の姿はなく、音羽はほっと胸を撫で下ろした。 「流石に裕衣ももういないですね……」 「ああ。長時間待ち伏せていたら不審者だと通報されてもおかしくないからな」 音羽の言葉に、伏見がトランクから荷物を取り出しつつ答える。 伏見の両手いっぱいに荷物が抱えられているが、それでもまだまだトランクには大小様々な大きさの紙袋が残っている。 音羽も荷物を取り出そうとしたが、伏見に呼ばれた。 「荷物は俺が全部持つから大丈夫だ。それより音羽、扉を開けてもらってもいいか?」 「も、もちろんです……!」 伏見の両手は荷物で塞がっている。 確かに、自分が扉を開けないと伏見は家に入れないだろう。 音羽は小走りで玄関に向かうと、電子ロックを解除して扉を大きく開けた。 「どうぞ、蓮夜」 「ああ、ありがとう音羽」 伏見はお礼を口にすると、自然な動作で音羽の唇に軽くキスをした。 途端、朱に染まる音羽の顔を見て、伏見は楽しげに笑うとそのまま中に入って行った。 「音羽、荷物は全部寝室に運ぶぞ?」 「わ、分かりました……!」 「悪いが、寝室の扉も開けてくれ」 伏見の声を追いかけるようにして、音羽も慌てて家の中に入った。 音羽と伏見の姿が見えなくなった時。 近くの壁から人影が覗いた。 「嘘だろう……。やっぱり音羽だ……」 ぼそり、と呟かれた声は低く、動揺しているように揺れていた。 男──玉櫛 樹は、信じられない物を見たとばかりに目を見開き、ただ一点を凝視していた。 視線の先には、先程まで音羽が立っていた場所。 そして、樹が佇む場所からは伏見にキスをされた音羽の横顔がはっきりと見えていた。 突然のキスに、音羽は可愛らしく頬を染めていた。 「……音羽のあんな顔、俺は殆ど見た事がないのに」 樹の脳裏には、可愛らしく頬を染めて照れている音羽の表情がしっかりとこびり付いている。 伏見を見つめる音羽の瞳にはありありと愛情が浮かんでいた。 音羽からの愛情を一身に受けている伏見、と言う男がとてつもなく憎らしい──。 音羽のあんな表情を見られるのは、愛情を向けられていたのは自分だったのに──。 そんな身勝手な感情が樹の胸をぐるぐると巡る。 腹立たしくて、苛立たしくて、気に食わない。 「──音羽
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