高梨瞳(たかなし ひとみ)と有馬蓮(ありま れん)は学園公認の、誰もが羨む完璧なカップルだった。蓮は、すれ違う誰もが思わず振り返るほどの学園のプリンスだ。すらりとした長身に、目を奪われるほど整った顔立ち。いつも制服の上に黒のマウンテンパーカーを羽織り、クールでどこか近寄りがたいオーラを纏っている。そんな彼に女子たちは我先にと群がるが、彼の目に映るのは、いつだって瞳だけだった。二人は幼馴染だ。物心ついた時から、二人はいつも一緒だった。一歳の誕生日には互いの小さな手を握り合い、七歳で「大きくなったら結婚しよう」と約束を交わした。十四歳でラブレターを交換し、十六歳で正式に恋人同士となり、十八歳で同じ大学を目指すと誓い合った……永遠に続くと思われた二人の関係が揺らぎ始めたのは、高校三年の春のことだった。クラスに一人の転校生がやってきたのだ。小池桃果(こいけ ももか)という子だ。「成績優秀者による学習サポート」のペアを決める際、担任はあろうことか、蓮を桃果の担当に指名したのだ。「もし断るつもりなら、校内で瞳とイチャつくのを禁止するからな」普段の蓮なら即座に突っぱねるところだが、この脅しには逆らえなかった。最初は本当に、ただの補習のはずだった。勉強を教えたり、校内を案内したりするだけの関係。しかし、次第に歯車が狂い始めた。桃果が「駅前の有名なケーキ屋さん、すごく並んでるけど食べてみたいな」と呟けば、蓮は自習を抜け出してまで買いに走った。桃果がSNSに【なんか今日、しんどい】と投稿すると、蓮は深夜まで通話に付き合い、相談に乗るようになった。極めつけは、桃果の生理痛がひどいと聞いた日だ。蓮は校則違反を承知で塀を乗り越え、コンビニまで温かいココアを買いに走ったのだ……瞳は悲しみに暮れた。怒りをぶつけ、喧嘩をし、別れを切り出すようになった。一度目の別れ話は、電話越しだった。蓮は長い沈黙の後、荒い息遣いだけを返してきた。その夜は土砂降りの雨だった。ふと気づけば、彼は瞳の家の前に立っていた。全身ずぶ濡れのまま、朝まで立ち尽くして。彼は掠れた声で何度も何度も瞳の名前を呼び、「ごめん」と繰り返した。二度目の別れ話の時、彼は学校を丸一日休み、瞳の教室の前で待ち伏せをした。充血した赤い目で、乱れた字で思いの丈を綴った長い手紙を差し出し、「
Read more