数年の月日が流れた。かつて小夜子が旅立った異国の地で、通訳・翻訳界の最高峰とされる国際フォーラムが開催されていた。世界中から第一線の通訳者や学者、さらには各国政府の要人たちが一堂に会している。小夜子は、最年少の理事にして首席同時通訳者として、オープニングの基調講演を任されていた。スポットライトを浴びる彼女は、パールの光沢を纏った白いセットアップを完璧に着こなしている。艶やかな髪は上品にまとめられ、知的な額とすらりとした首筋が際立っていた。壇上に立つ彼女は、会場を埋め尽くす聴衆と無数のフラッシュを前にしても、いささかの動揺も見せず、毅然とした態度で語り始める。複数の主要言語を自在に操り、鋭い洞察と独創的な見解を展開していく。古今東西の文献を引用しながらも、その語り口はどこまでも自然で淀みがない。自信、優雅さ、そして圧倒的なプロフェッショナリズム。彼女こそが、この会場で最も輝くセンターだった。講演が終わると、割れんばかりの拍手が会場を包み込み、いつまでも鳴り止まなかった。そこへ、濃いグレーのスーツを纏った、知的な雰囲気の青年学者が白いスズランの花束を抱えて登壇した。彼は穏やかな微笑みを浮かべ、彼女に花を手渡す。二人は見つめ合い、深く頷き合った。その様子からは、言葉を超えた確かな信頼関係が伝わってくる。カメラのシャッター音が重なり、その美しい一瞬を記録していった。その青年は、この地域の言語学界で期待される俊英だった。名門の学者一家に生まれ、若くして数々の功績を挙げているだけでなく、その端正な容姿と紳士的な振る舞いから、誰もが羨む独身貴族としても知られていた。彼と小夜子は多くの国際会議で共に仕事をし、公私ともに深い信頼を築き上げてきた仲だった。メディアは二人を「業界の双子星」と称え、その才能の共鳴と深い絆を報じている。二人がソウルメイトなのか、あるいは恋人同士なのか――報道はあえて核心には触れず、読者の想像に委ねていた。だが、誰の目にも明らかだったのは、今の小夜子が、誰もが仰ぎ見るような新たな高みに到達しているということだ。輝かしいキャリア、満ち足りた日々。そして傍らには、彼女を心から敬い、愛し、高め合える素晴らしいパートナーがいる。これが、彼女が自らの手で掴み取った新しい人生だった。フォーラムは三
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