Semua Bab 【牌神話】〜麻雀烈士英雄伝〜 賛: Bab 31 - Bab 40

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第2部 二章【あなた好みに切ってください】その1 第三話 住む世界が違う

30.第三話 住む世界が違う「桐谷さんは何歳なんですか?」「26」「若いのねえ。羨ましいわ」「ナガネオさんには年齢差を感じないけどね。むしろ歳下に見えますよ」「歳下は言い過ぎよお。本当にお世辞が上手ねえ」そう言いながらナガネオさんは嬉しそうにニコニコしていた。「どんな髪型にしよーかなぁー。私好みにしていいんでしょう? アナタ二枚目だから髪型次第では惚れちゃうかも♡」「そりゃあいいや。ぜひともナガネオさんが惚れるくらいカッコいい髪型にしてよ」「いいの~? イケメンだし彼女いるんじゃないの?」「いるわけないだろ。この髪型だよ?」髪は放置していた期間が長すぎてだいぶみっともなく伸びていた。こんな髪型で彼女がいるわけがない。「そっか」「そっかってのも失礼だな」と言って2人で笑った。かっこよく切ってもらおう。──────「はい! できあがりました!」「おーー、ありがとうございます」「クサ○ギキョウをイメージしたんだけど」「あー、言われてみれば」 するとナガネオさんは「ちょっと待ってて」と言って何かを書いた。メモ書きをしている。なんだろう。 そっと見えないようにおれにそのメモ書きを渡してきた。(これ、私の連絡先……。あなたがその気にさせたんだから責任とってデートしてよね)(えっ、ほんとにいいの?)(だって、私好みの理想の男性が誕生しちゃったんだもん♡) こんなことってあるんだ。すごいな。 おれはその日から長根尾舞と付き合うことになった。◆◇◆◇「……という経緯でおれは彼女ができたので次回のマカオ旅行はパス。代わりに賤機(しずはた)でも誘ってやって」と桐谷ススムは悪友の北山ギンジ(通称ジンギ)に話した。 桐谷と北山は毎年定期的にマカオ旅行をする仲である。なら彼女も連れて行けばいいじゃないかと思う人もいそうだが。(マカオって彼女連れとかそういうノリで行く所じゃないんだよね) 少なくとも桐谷には彼女連れで行く所には思えなかった。それは例えるなら風俗嬢の元に自分の彼女と一緒に行くのと同じで、わけがわからない状況になるのだ。「なんだよそれ、そんなことあるのか。おれも今度から床屋のオッチャンに切ってもらうのやめて美容室行ってみようかな」「ジンギさん、なんか最近コンビニにお気に入りの子いなかったっけ? その子はいいのかよ」「
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第2部 二章【あなた好みに切ってください】その1 第四話 足るを知る

31.第四話 足るを知る ジンギの言う通り①-④は来てちょっとした臨時収入が入った桐谷。「ほら、だから言ったろ? 10000賭けとけばよかったのにな」とジンギは言うが桐谷はそうは思わない。増えたならそれでいいのだ。   桐谷は『知足(ちそく)』という言葉が好きだった。足るを知る。禅の教えだ。ギャンブルをするならこの考えを持たないと永遠に勝たない。 100張って当てても1000張っておけば良かったなんて思ってしまう人には勝利の満足感は永遠に訪れない。負けるまで張り続けてしまうだろう。だから、足るを知る。このくらいでいいと言う考えを持つ。それが勝利者になるための思考回路だと桐谷は思っているのでレースなど当たればそれだけでいいのである。 桐谷は、このちょっと増えたお金を入金する前に何か有意義な使い道はないか? と考えた。自分の贅沢には絶対使わない桐谷だったが、今は長根尾舞(ながねおまい)がいるのでそこはケチケチしない。そう言う所も桐谷の良いところだった。 自分の節約に他人を巻き込んだりは決してしない。あくまでも節約生活をするのは自分だけ。臨時収入があれば彼女にはプレゼントをと考えるのだ。 とは言え、なんの記念日でもないので高価なものはさすがに買わない。そもそも基本収入の無い桐谷にとってギャンブルの勝ちは『臨時収入』ですらないただの『収入』なのだ。なのでなにか、程よい価格の素敵なものはないか。そう思っていた所にガラス工房が目に入る。『ガラス工房【AB】』という看板は傷一つなくピカピカでまだオープンしたてのようだ。工房内で販売もしている。(これだ!) 店内を覗いてみると綺麗なガラス工芸品が数千円で販売されていた。中でも桐谷の目を引いたのはガラスの中にガラスで作った柑橘系の輪切りがいくつも入った瓶のようなペンダントが素敵だなと思った。(これはきっと長根尾さんに似合うな)「これ、ください」「ありがとうございます! こちらはお買い得品で2000円ですね」「そんなに安くていいんですか! こんな綺麗な作品が」「オープン記念にお買い得品コーナーを設けてみたんです」 よく見てみたらたしかにその一角にこっそりとそう書いてあった。「またいらして下さいね」「はい」 長根尾舞への程良い価格の素敵なプレゼントが手に入り桐谷は大変満足した。 残額を銀行へ入金
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第2部 二章【あなた好みに切ってください】その1 第伍話 落ち目の仕掛け

32.第伍話 落ち目の仕掛け その日は近所の雀荘『三元』に遊びに行ってた。いつもいる常連客との麻雀。見飽きた顔だが、麻雀はいつやっても新鮮だ。同じ場面など二度と来ないのだから。 今日は上家の小宮山(こみやま)さんがずっと不調らしい。彼はいつも強いから今日は遠慮なく勝たせてもらおう。回収回収。 小宮山さんはもう肩で息をしていた。汗をかきながら今にも死にそうな目で牌を見つめる。────── 小宮山さんにアガリがないまま、もう何時間が経っただろうか。ほんの千点すらアガれない。そんな時。打②「チー」 ②③④のリャンメンチーを小宮山さんがしてきた。久しぶりに小宮山さんの声を聞いた気がした。そのことに気付いて(ここには絶対にオリないとだめだ!)とおれは全力警戒。落ち目の仕掛けには絶対放銃してはいけないのだ。それは別に、流れがどうこう、勢いがどうこうといった類の昭和雀士の理論ではなくて、人間の心理から読み取ったものだ。 今回も失点を重ねていて追い詰められてる小宮山さん。そんな人がそれでもリャンメンチーしたんだから。その事に注目しないといけない。 つまりその手は満貫ある。必死こいてメンゼンでテンパイさせなくても十分な勝負手で待ちも普通にリャンメンと読んでいい。しかも3面待ちよりもリャンメンの可能性の方が高いとも読める。 少しでも、(いや、スルーでもいいかもな)と思える言い訳がある手であれば追い詰められた人はチーしない。というより、出来ないのだ。負けが込んでいる人は(リーチしてツモで仕上げて裏も乗せたい。一気に取り戻すにはそれしかない)という心理が働いて滅多な手では鳴けなくなっている。 例えリャンメンチーして3面待ちが残る満貫であれ。(この待ちならまだ鳴かなくてもいいんじゃない?)という言い訳を発動させるため鳴けなくなっている。なので小宮山さんの鳴きはリャンメン待ち満貫以上と読むのが正解。待ちは端に掛かっている1-4か6-9だろう。早くテンパイに取らないと切られてしまうという(今鳴くべき理由)があるのだ。 …タン…トン…スタン…トン…  流局「テンパイ……」 小宮山さんは6-9索待ちの中ドラ3だった。予想通りだ。おれは9索を掴んでベタオリを決めていた。運の悪いことにオリると決めたおれの所にばかり6-9索はやってきた。「……………………ラス
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第2部 二章【あなた好みに切ってください】その1 第六話 痛い勲章

33.第六話 痛い勲章「お待たせー、キョウくん」「ススムだけど」「知ってるわよう。自分の彼氏の名前くらい覚えてるわよ!」(クサ○ギキョウってことね…… ていうかやっぱり『彼氏』認定なんだ。友達とかじゃなく。光栄だけど、おれでいいのかな……) 「今日はどこに行こうか」「お肉たべたいなー! 焼肉かステーキ! ね、いいでしょ? お腹すいてるのよう」 割と近くにまあまあ安くてボリューム満点で美味しいステーキ屋があるのでそこに歩いて行くことにした。──── 「美味しーー! お腹空いてたから余計に美味しいわ」「うん、うまいな」「痛っ!」「どうしたの」「ちょっと指がね」 見てみると中指の関節が切れて血が出ていた。「傷が開いちゃったみたい。水絆創膏やってたんだけどね。汚い指でしょう? 彼女の指がこんなんじゃ嫌だよね…… タハハ」「そんな事ない。むしろカッコいいよ。勲章じゃないかそれは。何年も働いたプロの証。長根尾さん、すごく尊敬するよ」 すると、少し驚いた顔をしたあと長根尾舞は嬉しそうに笑って「やあね、こんな痛い勲章はゴメンよ。でも、嬉し……。あと、付き合うことにしたんだから『マイ』って呼んでよ」と言った。「歳上の人にそんな呼び捨てでいいのかな」「わかってないわね。歳上だからこそよ」 なるほどそう言うものか。言われてみれば一理ありそうだ。「カッコいいよ、マイ。可愛くてカッコよくて、大人で…… こんな素敵な女性のパートナーがおれでいいのかな」「あなたもカッコいいし、いいのよ」「じゃあ、おれのことも『ススム』って呼んでよ。キョウじゃなくてさ」「あは、気にしてたんだ。わかりました、ススムくん!」「そう言えばプレゼントがあるんだ」「なあに」 桐谷はカバンから先日ガラス工房で買ったペンダントを取り出した。「はい、これ」 それは長根尾マイ専用に作られたかのようにピッタリのサイズだった。「嬉しい。ありがとう」 そう言うとマイはカバンから何か取り出した。「実は私もプレゼント買ってきてるんだ。はい、これ。最近寒いからね」 それはカシミヤのマフラーだった。「こんないいもの、高級品じゃないか」「いいのよ。私は私があげたいものを好きな時に好きな人にあげるの。自由にさせてよね、私の稼いだお金なんだし。プレゼントってね。相手がいない
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第2部 二章【あなた好みに切ってください】その1 第七話 重箱のクニオ

34.第七話 重箱のクニオ 今日もいつものように『三元』へ朝から遊びに行くと そこに知らない顔がいた。 どうやら店長の知り合いのようだが、その人のカゴはチップがパンパンに入っていてカゴも2段になっていた。この店では来店時に預かり金をもらっていてそれが『カゴ代』になる。カゴで精算するのは帰る時だけ。つまり、カゴが2段ということは既に誰かを撃破していて、最終精算にカゴを受け取ったということだ。「あっ、桐ちゃん、いいとこきたね。丁度いま始まったばかりだからすぐ行けるよ。今はじまりの7巡目。どーぞ!」「入ります」 椅子を回して高さを調節し、全体図を見やすい目線にする。椅子の高さひとつ取っても上級者かどうかはわかるものだ。自分の手牌に目線を合わせているようでは素人。プロは全体図を見やすい高さに調整する。 クルクルクルクルキュッ!(このくらいかな)「よろしくお願いします」「はい、よろしく」 おれは財布から預かり金を取り出して店長と代わる。手牌を見たら(おう、ふざけんなよ)となった。 7巡目にして面子なしのバラバラ。安全牌もとくにあるわけでもない(捨て牌にはある)。本当にしょうもない手だった。 こんな未来の無い手で安全牌をキープしないのはかなり疲れてる。負け過ぎて思考停止になっている証拠だった。(多分この人のせいだな) 牌は汗でベトつき汚れていた。「…………」 おれは何も言わずにおしぼりで牌の汚れをとる。「あ、ああごめん、今までずっと全入りしてたからさ。次の半荘で牌交換するよ」と店長が察してくれた。「おはようございまーす」 9時半になって若い女の子が出勤してきた。女子メンバーの『野々あすか』だ。「野々さん、さっそくで悪いけど着替えたら牌交換の準備をしてください」「はーい」 ずいぶん綺麗な子だが、ああ見えて野々は主婦なんだという。数年前に松潤似のイケメンと結婚して今は子供もいるらしい。そんな風にはとても見えない。「おはよう御座います」「おはようございます!」「はよーざーまーす」 9時40分頃になると続々と早番が登場だ。このタイミングで帰るお客さんは多い。早と遅では空気が違う店はよくある。ここ『三元』もそんな店だった。「おれ、ラス半ね」「並木さんラス半でーす!」(なんだ、ラス半か。この並木っておじさん。どんなもんか知りたか
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サイドストーリー1 相合傘 前編

35.サイドストーリー1 相合傘前編 僕の名前は賤機幸宏(しずはたゆきひろ)。一般企業で働きながら競技麻雀をやるサラリーマンプロ雀士だ。 その日、僕は家から1番近いコンビニである『セブンマート』で新商品印のシールの付いた冷製パスタを購入したくなった。前々日から気になっていたのだが、まだ買おうという決断をするには至っていなかった新商品だ。 初めて見た日は雑誌を買う分しかお金を持ってきてなかったし。昨日はそんなに暑くなかったので気分じゃなかった。 しかし、今日は暑い! これは冷製パスタを買えということじゃないか? 僕は期間限定と新商品に目がないタイプだ。今日の昼飯は決まった。ちなみに、お昼に食べるから昼飯と表現したが、本当言うとこれは晩飯にあたる食事だった。なぜなら僕は雀荘の夜客。夜に打って昼ごろ帰って寝る生活なのだ。今から食べるのは晩飯の役割を果たす食事なのである。 冷製パスタを手に取ってレジに並ぶ。レジに店員は2人おり2人とも若い女の子だった。そこへ頑固そうな老人が順番を無視して精算しようとする。 僕はスッと腕を伸ばしてそれを止めた。「このコンビニはフォーク並びなんです。ほら、足元を見なよ」 足元にはフォーク並びでお願いします的な誘導をするテープが貼ってある。しかし視野の狭い人ならそれに気付いてないだけの可能性はあるのでなるべく穏やかに僕は言った。「おっ、おお。そうか」 恥ずかしそうに老人は最後尾に向かっていった。恥をかかせてしまったのは悪かったなと思ったが、しかし割り込みはダメだ。僕だけが迷惑するわけじゃないしな。 僕が会計する番が来た。レジの女の子は学生だろうか。いや、実は23歳くらいなのかな。背は低いけど。子供ってわけじゃなさそうだ。けっこう長いであろう黒髪をお団子にしていて、それが彼女には似合っていた。瞳の大きな綺麗な子だ。 すると彼女はこう言った。「あたためますか」 冷製パスタである。「う……(笑いを堪えている)まぁそれも美味しい可能性はあるが今日の所は普通に食べてみるよ。あたためは不要で」と僕は冗談を言ってみた。すると彼女もその意味がわかったようで「ヤダ~恥ずかしい」となった。 あんまり面白かったからつい名札を確認してしまった。(アルバイトのタムラユウコさんか) これが僕とタムラユウコさんの出会いだった。◆◇
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サイドストーリー1 相合傘 中編

36.サイドストーリー1 相合傘中編「着いた。ここがおれの部屋。なんだ、タムラさんちの方が遠いのか。そしたら傘は持ってっていいよ。おれここだから、じゃあね」「通り過ぎたわ」「え?」「私んちはもうとっくに通り過ぎてるの。でも2人で歩きたかったから」 何を可愛いことを言い出しているんだこの子は そんなこと言われたらもう……「上がってく……?」「へへへ…… うん。上がってく」 僕はタムラさんを部屋に上げた。◆◇◆◇ タムラさんを部屋に上げたあの日から僕らの交際は始まった。 僕たちはお互い一人暮らしだったし付き合っている人も丁度いなかったので自由な時間に会いに行き。好きなだけ一緒に居た。なんの告白もなくただ自然な成り行きで恋人になっていた。いや、僕には成り行きでもそこにはタムラさんの意志があったと言えなくもなかったが。……そりゃ意志の力あったよな。あえて相合傘して家までついてきたんだから。 僕らは自由に愛し合った。甘えたくなったらくっついて。キスしたくなったら唇重ねて。抱きたくなったら身体をひとつにした。 お互いに合鍵を持ち好きなようにお互いの部屋を使った。 彼女は僕と初めて会った時から惹かれていたという。あの、フォーク並びを指摘したときからだ。「あの時のあなた、素敵だった。お客さんにああいうの言わせちゃ店員失格なんだけど、気難しそうなおじさんとかには女2人番じゃ言いにくくて。だから助かったわ。もう、あの時好きになっちゃってたのよね」「未成年かもと思ってたのにか?」「いいじゃない、未成年だって格好いいんだもん」「未成年じゃないっつの」──── ある日、コンビニでユウコの名札を見たら(社員タムラユウコ)に変わっていた。アルバイトだったはずだが?「社員になったんだね」「そうなの。へへ、褒めてくれる?」 僕はもちろん褒めた。立派だなと思った。この時は素直に嬉しい気持ちになった。 だが、これが別れの始まりだったんだ。
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サイドストーリー1 相合傘 後編

37.サイドストーリー1 相合傘後編 彼女の仕事ぶりは高く評価されていた。 真面目で愛嬌もある彼女はみんなから好かれていて当たり前だった。それにより彼女に辞令が出る。"店長研修として2ヶ月の新宿店勤務" 新宿店勤務となるとここから通うのは大変だ。だが、彼女はそれでも通った。なるべく僕と一緒にいてくれた。だけど。────1週間後「1週間やってみてどう?」「うん、楽しくやってる。最近私のファンができたのよ。いつもスケボー片手にやってくる黒髪ロン毛のイケメンお兄さん」「なんとなく、チャラいな……」「スケボーは単に交通手段なんだって。ゆーくんと同じでギャンブラーさんみたいよ」「あのさ、いつも言ってるけど……」「はいはい、競技麻雀はギャンブルじゃない! でしょ。でも世間は同じように見てるわよ」「その認識をいつか変えてやる。それがプロたちの願いなんだ」「わかりました。ごめんね」────2ヶ月後「私、店長になったよ」 暗い顔で彼女が報告してきた。目は腫れていた。それで僕もすぐ勘づいた。「お別れなんだね」 彼女の担当店舗は神戸市だった。さすがに会えない。「私、自分がどこまでやれるか試してみたい」「そうだね」「ごめんね。勝手に好きになって。勝手に離れてってさ。こんな勝手な女。嫌いだよね」「そんな勝手な所もいい。どんなキミも好きなんだよ」「優しいね。アリガト」 それからは、別れの日が来るその最後の日まで毎日ずっと抱きしめたまま寝た。別れたくなかった。別れが近くなればなるだけ、より一層好きになってた。 そして、引っ越しの日。「ごめんね。今までありがとう」 そう言うと僕に彼女は合鍵を返した。「いや、これは持っていてくれ。いつ、帰って来てもいい。キミをきっとずっと受け入れる僕でいるから。その、約束としてそのまま渡しておく」「ドロボーに入るかもしれないよ?」「いいよ。キミにならなんでもあげる。ユウコ、キミには何されたっていいんだ」 そう言って鍵を受け取らないことにした。僕にはまだ彼女との完全な別れが耐えきれなかったのかもしれない。現実がつらくて、こんな約束をしたのだろう。「約束を…… こんな勝手な私とまだしてくれるの……」 そう言って彼女は一筋の涙を流した。 それを見て初めてこれは本当にお別れなんだ。と終わりを悟った
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第2部 二章【あなた好みに切ってください】その2 第一話 デートも手順が大事

38.ここまでのあらすじ ギャンブラーの桐谷は真面目が取り柄の堅実タイプ。ある日、伸びてきた髪を切りに行ったらひょんなことから恋人ができた。【登場人物紹介】桐谷進きりたにすすむ通称ススム主人公。あらゆるギャンブルを行うが麻雀だけはちょっと勉強不足でまだ弱い。しかし、それゆえに麻雀が楽しくて仕方ない。基本的にはパチスロや競輪、オートレースなどで稼いでいる。長根尾舞ながねおまい通称マイ美容室『エクセレントヘアー』で働くスタッフ。客として来た桐谷とひょんなことから恋仲になった。北山銀次きたやまぎんじ通称ジンギ桐谷のギャンブラー仲間。2人は一緒に海外旅行に行ったりするほど仲がいい。並木邦夫なみきくにお通称重箱のクニオ桐谷の遊びに行く雀荘『三元』の客。三元の店長とは古い仲。その2第一話 デートも手順が大事 今日は長根尾マイとのデートだ。今日のデートは2人で住む物件を探しに行くという予定にしている。一日中物件探しするわけじゃないが、メインはそれとして、とりあえず午前9時に待ち合わせ。 デートに備えて前日は麻雀を早めに切り上げていた桐谷だったが、普段早起きはしないのでやっぱり少し眠かった。 待ち合わせ場所に指定した駅前のカフェに先に着いてウトウトしていた。──────「そろそろ行かない?」 気付いたらマイが横に座ってた。いつの間に寝てたんだろう。「ご、ごめん、寝ちゃって」「ううん、いいの。いつもは夜型なのに遅刻しないで来てくれたんだもん。ありがとうね」 時計は9時40分を指していた約束していた時間は9時である。つまり、マイは何時に来たか知らないが最低でも40分以上起こさずに待っていてくれたということだ。なんて寛大な女なんだろうか。 と、思ったら紅茶とケーキを食べた跡があった。「寝てたから私だけケーキ食べちゃった。もちろんお会計はおごってくれるよね?」「そ、そりゃあもう。任せてください。そんなんで詫びになるなら」 「お会計2680円です」「えっ?(高っけ!)」 伝票をよく見るとケーキは2つ食べてるし紅茶も2杯飲んでいた。「なによう、あなたの分も頼んだけど一向に起きないから私が食べたんでしょ。覚えてないのお」「えっおれ注文してた?」「ぼーっとしながら注文したわよ」「そうだっけか」(全然記憶にない)
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第2部 二章【あなた好みに切ってください】その2 第二話 盲牌のシノブ

39.第二話 盲牌のシノブ 池袋で物件を探したあの日から1カ月が経った。 結局条件を満たしている物件は無く、保留ということになっていた。 長根尾舞はこだわりの多い女だし桐谷は駅近だけは譲れなかった。 市川にかなりいい物件があったがユニットバスであることが不満で結局だめだった。そんなに急ぐものでもないので満足いく物件を見つけるまでは今のままでいい。そういう結論に至った2人だった。 数日後。 桐谷は今日いつも通りの麻雀生活。収入源はスロットや競輪の方がメインだったが麻雀は毎日やってた。 これはもうメシを食うようなものなのだ。人間が食事を当たり前に摂るように。雀士は麻雀を定期的にする。当然の行動なのである。 ただ、今日は少し離れた雀荘に行ってみた。別に理由なんかない。そういう時もある。それだけだ。例えるなら、今日は知らないラーメン屋に行ってみようって事もあるだろう。それと同じ事。◆◇◆◇ その店には盲牌の達人みたいな男がいた。一瞬ヒュッと引いた瞬間に完全に理解しているのである。 しかし、おれはその男の本当の実力をまだわかってなかった。 達人はリーチしていた。おれの下家が打牌すると対面の達人がツモりにいく。少し山に触れた瞬間に上家が遅れて「ポン」と発声。 達人は牌を山に戻す。この一連の流れをおれはしっかり見ていた。(ポンが入る直前、対面さんはツモった牌を目視せずにそのまま捨てようとしてたな…… そして打牌寸前でポンされて引っ込めた。あの時対面さんの親指が触れていたのは『一萬』の『萬』の部分だけ。つまり、萬子は全部通る!)打九「ロン」(エッ!)対面手牌九九①②③④⑤⑥⑦⑧⑨白白 九ロン「5200」「いや……えっ!? なぜ?」 おれはさすがに動揺を隠せなかった。確実に萬子は通ると思ったのに。何がどうなっている?「なぜとは?」「だっ、だって萬子の下半分しか触ってないのに切ろうとしたじゃないですか。それで萬子待ちしてるってどういうあれですか?」「あー『萬』の部分は同じだと思っていたのね。はいはい、なるほど」「同じだと思っていたってどういう事? どう見ても同じじゃないですか」「違うんだな、それが」 そう言って達人は一萬と九萬を見比べさせた。「?………。あっ!」 それは0.3ミリとか0.4ミリとかの違いだった。しかし確かに
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