【牌神話】〜麻雀烈士英雄伝〜 賛

【牌神話】〜麻雀烈士英雄伝〜 賛

last updateLast Updated : 2026-04-13
By:  彼方Completed
Language: Japanese
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 北山銀次(通称ジンギ)は現代のねずみ小僧になりたかった。悪どく稼ぐ悪党どもに正義の鉄槌をと、悪党を騙す詐欺師になり、その命がけのスリルを楽しんでもいた。しかし、大物を騙すような詐欺師をやる上では組織活動が必要なためヤクザ連中に手を借りることに、そういうなかで自分は正義の極道になることを夢見たりもしたが、なってみて分かったことは極道に正義なんてなかったという当然の現実だった。  自分がここにいるのは違うと気づいたジンギは組抜け。  さて、次は何をするか、と行き当たりばったりの人生を送っていた。  そんな中、最近変な夢を見るようになった。夢の中で語りかける天使の声に従い雀荘の扉を開くと? 異次元麻雀闘牌劇!開幕

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Chapter 1

【牌神話】〜麻雀烈士英雄伝〜 賛

親友の桐山彩(きりやま あや)の結婚式で、ブーケが私・白河雪乃(しらかわ ゆきの)の手に飛び込んできた。

彩がにやにやしながら近づいてきた。

「霧島誠(きりしま まこと)を付き添いに呼ぶの、どれだけ大変だったか知ってる?

七年間ずっと片想いしてたんだから、そのブーケ持って告白してよ!」

私はブーケを抱えたまま、呆然として固まった。

彩は知らない。私と誠は、もうすでに一年間こっそり付き合っていたことを。

片想いがついに実ったと思っていた。苦労の末に手に入れた幸せだと。

でも、彼に別れを突きつけて家から来た見合いの申し出を断らせようとしたあの日。

彼は気だるげに笑って、ひとつも気にした様子もなく言った。

「雪乃、七年も俺に片想いしてたくせに、本当に俺から離れられるのか?」

我に返った瞬間、誠が真っすぐ歩いてきて、私の腕からブーケを抜き取った。

固まった私の顔を見て、眉を上げながら、確信と侮蔑が混じった目で言った。

「雪乃、やっぱりそうだろ。お前は俺から離れられない」

ブーケを抜き取られた瞬間、指先にはまだ茎の粗い感触が残っていた。

かすかな冷たさも。

誠は私をもう一度見ることもなく、振り返ってそのブーケを林千夏(はやし ちか)の前に差し出した。

「千夏、この花はお前に似合う」

千夏は誠の大学の先輩で、誰もが注目する学園の高嶺の花だった。

誠の親が幾千人の見合い相手から選び抜いた、一番お気に入りの嫁候補でもあった。

千夏は花を受け取り、頬をほんのり染めて上目遣いに言った。

「誠、雪乃ちゃんは気にしないかな?誠のお母さんが昨日も早く決めなさいって言ってたし」

わざわざ私を見ながら言った。挑発的な目をしていた。

周りの事情を知らない同席者たちが騒ぎ始めた。

「つきあっちゃえ!つきあっちゃえ!」

「霧島さんと林さんが並んで歩いてるだけで、本当に絵になるよね!」

「またすぐ披露宴に呼ばれそう!」

私はその場に立ち尽くして、両腕はまだブーケを抱える姿勢のままだったが、手の中は空っぽだった。

七年間の青春が今まさに尽きようとしている、そんな空虚さによく似合っていた。

誠が振り返り、視線がようやく私に落ちた。

口の端に気だるい笑みを乗せて言った。

「あいつは物分かりの良い子だから、騒がないだろうさ」

物分かりの良い子。

物分かりの良い子だから、付き合っていても彼の隠された恋人として、「妹分」のふりをするしかなかった。

物分かりの良い子だから、自分のブーケを他の人に渡されても、彼の中で私は笑顔で祝福するべきだった。

隣で彩が地団駄を踏んで、誠をきつく睨んで私の手を引いてずかずかと詰め寄ろうとした。

「霧島、どういうつもり?このブーケは雪乃が受け取ったのよ!あなたって……」

私は彩を引き止めて、静かに首を振った。

私の恋心を、これだけ長い間、知っているのは彩だけだった。

心配してくれているのも、悔しいと思ってくれているのも分かっていた。

片想いと言うにはあまりにも苦しかった。

触れたくて何度も引っ込めた手、言いかけて何度も飲み込んだ臆病さ。告白して全部壊れるくらいなら、友達のままの方がましだと思っていた。

でも誠のあの「七年も俺に片想いしてたくせに、本当に俺から離れられるのか?」という言葉が、私を侮辱した。

彼はずっと知っていて、あえて言わなかったのだ。ただ私が沈んでいくのを、もがくのを、黙って見ていたのだ。

誠は私の様子を見て、目の奥の笑みをさらに深くした。近づいてきて、耳元でせせら笑った。

「拗ねるなよ、今夜家に来い。

いい酒が何本か届いたんだが、お前カクテル作れるだろ?作りに来い」

高いところから見下ろすようなあの口調が、嫌でたまらなかった。

顔を上げて、誠の視線と正面から向き合った。

いつも少し冷たさを帯びたその目が、今は面白がるような光を持っていた。

「誠、私たちはとっくに終わってる」

誠の顔の笑みが一瞬固まったが、すぐに目が冷えた。

「雪乃、そういう焦らし方は一度で十分だ。

俺はそんなに辛抱強くない、おとなしくしろ、な?」

私はじっと彼を見つめた。七年前に一目惚れしたあの少年は、いつの間にかいなくなっていた。

もう何も言いたくなかった。振り返らずに宴会場の外へ歩き出した。

後ろから千夏の優しく慰める声と、誠の苛立たしそうな鼻息が聞こえた。

その瞬間、胸の中が今まで感じたことのない静けさで満たされた。

もう好きじゃないと認めることは、そんなに難しいことじゃなかった。
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第2部 一章【ジンギ!】その1 第一話 天賦の才を持つ勝負師
1. …天賦の才を持つ勝負師よ… 近いうち、あなたはかつてのライバルと邂逅するでしょう。あなたをよく知る旧友と… その時は彼を手伝ってみなさい。あなたにもそれは運命の扉を開く事になるでしょう。 …あなたに能力を授けます。◆◇◆◇牌神話 第2部 麻雀烈士英雄伝一章 ジンギ!~北山銀次物語~その1第一話 天賦の才を持つ勝負師ジリリリリリリリ!!(うるせえ)ガン! 目覚まし時計を叩き割る勢いで止めて起きる。これはいつもの事だ。全くタフな時計だぜ。ゴクッゴクッゴクッ!「っはー!」 寝起きのよくないおれは枕元にいつも水のペットボトルを置いてから寝てる。寝起きに飲んで酸素を脳に送れば目が覚めやすいからだ。(今日は何時からだったっけ) カレンダーでシフトを確認する。(11時か。余裕だな。風呂入ってゆっくり支度して適当にメシ食ってから向かおう)──────「よしっ! 行くか」 おれは玄関に立ててある愛車(スケボー)を手に取って出勤する。これがおれの交通手段だ。 男の名は北山銀次。通称『ジンギ』と呼ばれる男。 これは、不思議な力を与えられたギャンブラーの物語。 物語の始まりは数年前まで遡る――────────────「これからどうすっかなー」 北山銀次(ジンギ)は素寒貧だった。ほんの数年前までは極道やら悪党やらを相手に詐欺をするという人生を賭けた大博打を打って2億円を勝ち取っていたのにだ。数字で書けば200000000円である。どうやって無くせばいいのかという程の金額だが、約2年で全額溶かしてしまうのがジンギであった。 (つうか、今朝変な夢見た気がするけど、どんな夢だったっけ。なんか力をくれてやるぞ。みたいな? そんなだったのは覚えてるんだけど) あてもなく歩いているとそこに雀荘を見つけた。(麻雀か、昔得意だったなー。友達としかやったことないけど…… そういや、旧友を手伝えって言われた気がするな! うん、なんとな~く思い出してきた) 何も考えずに(まあ、ヒマだし)で雀荘に入ってみたジンギ。少し麻雀するくらいの軍資金ならまだある。そんな生活を続けて数日、今日も知らない雀荘へと向かう。すると……「おおーーー! ギンジじゃないか久しぶり!」と店の人が懐かしそうにする。それは旧友のマサルだった。「あれ? ここマサルの
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5. 第伍話 天使との交流  あれから数日。ジンギはモヤモヤしていた。 (昨日も夢を見た気がするんだが思い出せないな)  どうやら天使には夢の中でしか会えないらしいがジンギは夢を毎度すっかり忘れるタイプだった。 しかし、幻ではないのだとそれだけは認識していた、というよりせざるを得ない状況だった。なぜなら一度雀荘に入れば頭の上にその雀士のジョブとレベルが書いてあるのだから。 ちなみに、窓や鏡などにはその文字は映らないようだ。よって、自分のジョブやレベルは知る事が出来なかった。 (まあいいか、慣れてきたら気にならないな。つうかこの卓、コテツたちとは比較にならん程弱いな。戦士Level10 僧侶Level25 魔法使いLevel9って……。どうやって負けろってんだよこれ)  もちろんジンギは自分のレベルが15であると言われたことはもう覚えていない。  ――数時間後。   普通に負けるジンギ。 (いや、なんでだよ! おかしいだろこれ!)  しかし、麻雀においてこれは少しもおかしな事ではなく、よくある事なのである。麻雀はどんなに優秀な打ち手でも今日覚えたばかりの素人に負ける可能性を持っているゲームだ。 正解を選べるということと勝てるということは決してイコールではない。まして、ジンギは15レベル。なにも不思議なことではなかった。 “わりいけど、一度抜けてメシにしていいか?”とマサルにメールを打つジンギ。“OK”と返事が来る。  ジンギは一旦落ち着こうということで食事をしに出ることにしたのだ。こういう所は非常に冷静で、この冷静
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第2部 一章【ジンギ!】その1 第六話 自己制約
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第2部 一章【ジンギ!】その1 第七話 アキラの選択
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第2部 一章【ジンギ!】その1 第八話 メンバー業の大変さ
8.第八話 メンバー業の大変さ その日は結局そのまま5時間ほど同じメンツで打ち、そこでお役御免になったので近くの漫画喫茶で待機していたがその後呼ばれる事は無かった。(あの商人さん強かったな。メンツが強烈だったから一勝もしてなかったけど、ギリギリまでトップ争いに参戦してた。少し運が傾けば全勝される可能性すらあったな。あのメンツで……たいしたもんだ)なんてことを思いながら現代麻雀という雑誌を読んでいた。真面目な麻雀雑誌のような名前をしているが中身は漫画だ。 麻雀界にまともな麻雀を研究してる人向けの雑誌など無いと言っていい。将棋や囲碁とはそのあたりが大きく違う。しょせん麻雀はその程度だと思われているのだ。また、描いてある内容も悪い。やれヤクザの代打ちだ。やれ、命を賭けるだ。と。麻雀のイメージを悪くするものを描く漫画の多さたるや。(勘弁してくれ。マサルがあれだけ頑張って商売してるのを横で見てる身からしたら、こういうイメージダウンになる漫画は全部燃えてしまえとしか思えない。マサルの真剣な仕事を邪魔するようなものを作るな! なんで主人公がバチコーンと強打してるんだよ! 悪影響を与える内容を描くな! それをどれほど精神を擦り減らしながら、タイミングと言葉を選び、表情まで作りながら「やめてほしい」と『お願いごと』を伝えている店員が全国にいるか。それで逆ギレされても悪いのは店員とされてその人が来なくなれば評価を下げられるんだ。ほぼ客のおれでもそれくらいは察している。メンバーって大変だなって。 そういう世界があること、分かってないから描けるんだろうなぁ) 不愉快になってきたのでジンギは現代麻雀をゴミ箱にドカッ! とぶち込んだ。そしてすぐに気付く(あ、漫画喫茶だった)「チッ!」 一度ゴミ箱にぶち込んだ雑誌をそっと取り出して何もなかったかのように本棚に返すジンギ。まあ、ゴミ箱はなにも入ってないキレイな状態だったのでまだ良かった。雑誌が少し折れ曲がってしまったが。 気付いたらマサルから連絡が来ていた。“今日はもういいよ。ありがとう、お疲れ様”「よっし、帰るかー」 帰る前にアイスココアを一杯だけ飲んでから会計をして、愛車(スケボー)に乗って家へと帰るジンギなのであった。
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第2部 一章【ジンギ!】その1 第九話 打牌はソフトに
9.第九話 打牌はソフトに 次の日は珍しく遅番の助っ人に呼ばれた。夜10時に出勤だと言う。 行ってみるとそこには疲弊してるマサルと有能そうな老紳士が制服を着ていた。「マサル、もしかして昼からぶっ通しで働くつもりなのか? 現状でもうこんなに疲れた顔しといて」「今日だけな。どうしても人が足りなかったから。まあ、明日は休めるし。今日は日曜の夜だから少し頑張れば落ち着くだろ。それまでの辛抱だ」「無理するなよ。あと、こちらの方は?」「こちらは夜間にバイトで入って貰ってる並木さんだ」「並木です。よろしくお願いします」 「北山ッス。よろしくお願いします」「並木さんはね、メンバー業をやりながら頑張ってお子さんを2人育てて成人させたすごい人なんだよ」「マネージャー、そんなこと…… うちはカミさんの方に蓄えがあったし、子供たちだって運良く賢い子に育ったから国立大学に入れて助かっただけで、私立に進学とかされたらお手上げでしたよ」「それでも凄いことですよ。並木さんの雀力なくして達成し得ないことです。尊敬しています」 「まあね~。ギリギリでしたけどねえ。だからマナー悪い人とか来店すると今でもお腹がキリキリしますよね」「どういうことすか?」「例えば打牌は強打で無発声な人がまあいるとしてね? それ、俺らは注意しないといけないじゃない? 店からの『お願い』という形でね」「そうですね」「でまあ 打牌はソフトに、牌は切り飛ばすのではなくて『置く』つもりでお願いします。とか言うとね。逆切れをしてくるんですよ。よくあることなんですけど」「ありますねー」「発声のほうもね、聞こません。とか言ってもね『言ったよ』が始まるんですね。言った言わないじゃなくて聞こえるかどうかだという話は何度したかわからない」「ですね」「それでもってお客さんが怒ったりすると私の言い方に問題があったんじゃないかとか言われるんですよ。そんな上司ばかりなんです、責任を押し付けるようなね。いや、この店は違いますけど」「うざいっすね」「で、それがイエローカードみたいにたまってって、もうあと一度でも怒らせたならクビだみたいな脅しをかけられるんですよ。でも、じゃあ強打を見過ごすことにしたりすると『あのメンバー同卓者のマナーを全然注意してくれないんですけど!』という報告をされて罰されるんですよ。最悪でし
last updateLast Updated : 2026-03-02
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