* * * 事故に遭わなければ、彼女は高校三年生にあがったことになるのか。 自由は葉桜と、白い病院の建物の合間を覗く青空を見上げ、新しい季節の訪れを認める。 五月。 彼女の誕生日のある月。 彼女の名前を意味する花が、咲き乱れる月。 春から夏へと緑が青々と萌えはじめる月。 けれども彼女は未だ、高校一年生の十二月で時間を止めている。誕生日が来れば、彼女は十八歳になるというのに。 病棟内の廊下を抜けて、中庭に出る。 楢篠が連れていってくれて以来、自由にとっても通いなれた病院の内外で、そこがお気に入りの場所になった。彼女の名前の花木が植わっているから。 中庭は、その白い花が満開だった。八重桜が散ってから、バトンタッチをするように咲きはじめた小さな花は、誰からも好かれるような清楚さと可憐さを併せ持っている。 小指の爪先程度の、小手毬の花。 彼女が生まれたときに咲き乱れていたという花。 車椅子の老人や、妊婦さん、つきそいの医師や看護師も見頃の花を愛でている。自由は自分が植えて育てたわけでもないのに、なぜだか誇らしい気持ちになる。彼女と同じ名前の花が綺麗に咲いている、それだけのことなのに。 爽やかな風を頬にあてながら、自由は自分でこれから道を切り開くべく、ゆっくり、中庭をあとにする。 * * * 眠りつづける少女のもとに、今日も花束が届く。 デルフィニウムの濃い青紫の花と、ニゲラの淡い桃色と水色の花が競演している。一年半も続く花の贈りものは、担当医の早咲の心も和ませる。眠りつづける少女が淋しくないよう、優璃はオソザキの花になって、病室に彩りを与えつづける。 「しぶといと、お思いですか?」 「いえ」 優璃は花を贈りつづけることも贖罪のひとつだと考えていた。だが、目覚める気配のない少女に一方的に贈りつける行為は、はたから見ればおかしいと思われても仕方がない。一週間に一度、真新しい花を贈るオソザキと名乗る優璃は、一歩間違えれば執念深いだけの人間に見える。目覚めない少女に花を贈りつづけることが償いになると思い込んで、少女の周囲の人間に煙たがられていることすら気にせず、機械のように見舞いを繰り返す。まるで義務にしてしまったかのように。 真面目で誠実な優璃が、いつ壊れるかと早咲は恐れることがある。患者の加
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