冗談でもなければ、陽菜をからかうつもりでもなかった。 昨日、一条が口にした言葉は、紛れもなく本心だった。 陽菜はふっと視線を落とし、小さく微笑んだ。 一条の真剣さはちゃんと伝わっていた。けれど、長いあいだ臆病なまま生きてきた彼女には、「自分から男性を追いかけたい」などと、そんな言葉を簡単に口にすることはできなかった。「……大丈夫です、一条くん」 結局、口をついて出たのは、それだけだった。「俺は本気だよ、藤野。凌の性格は、俺がいちばんよく分かってる。お前から言わなければ、あいつは一生気づかない。……それくらい、お前ももう分かってるだろ?」「一条くん……私、鷹宮さんと本当にどうこうなりたいなんて、考えたことは……」 一条は即座に言葉を返した。「どうして? お前みたいないい女なら、凌だってきっと好きになる」 あまりにも不意打ちのような言葉だった。 褒められたことに、一条本人よりも陽菜のほうが大きく動揺してしまう。 胸の奥が落ち着かず、どう返していいのかも分からないまま、陽菜はただ俯き、自分の靴先をじっと見つめた。 一条が「手を貸す」と言ったのも、もしかしたら一時の気まぐれなのかもしれない。 さっき月乃と言い争いになった時、自分は一条の味方をした。そのことで、一条に借りを感じさせたくはなかった。 もともと彼は何も悪くない。 自分も、ただ言いたいことを口にしただけ。 それだけのことなのだから。 そんな陽菜の様子を見て、一条はそれ以上無理に説得しようとはしなかった。 ただ向けられる視線だけは、相変わらず真剣で。 そのまっすぐな眼差しに、陽菜はどうしても目を合わせることができなかった。* 家に戻った一条は、何気なくメールボックスを開いた。すると、一通の招待メールが目に留まる。 慈善パーティーの招待状だった。 差出人の名前は不明。 だが主催は、一条グループと懇意にしている中堅企業のひとつだった。 おそらく一条家との関係をより深めたいのだろう。その流れで、彼にも一通届いたに違いない。 本来なら、こうした商業色の強い催しに一条はあまり好感を持っていなかった。 チャリティーディナーなんて、聞こえはいい。 その裏でどれだけの資本の思惑が動いているのか、分かったものではない。 善意もあるだろう。 本当に社会のために力を尽くした
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