「……これ、どうして……」 それを見た瞬間、月乃の顔から一気に血の気が失せた。あまりにも正直なその反応に、東和は嗜虐的に口元を歪めた。 手にした小瓶を軽く揺らす。 カラカラ、と。 中の錠剤がぶつかり合う乾いた音が室内に響いた。それはまるで、月乃への警告音のようだった。「月乃ちゃん。これね、君のバッグから出てきたんだよ」 東和は小瓶を指先で弄びながら、わざとゆっくりと言葉を重ねる。その声には、薄く笑いが滲んでいた。「一条に盛るつもりだったんだろ? ちゃんと見てたよ。ワインに入れてたよな。……まあ、せっかく入れたのに、一条に全部ぶちまけられて無駄になったみたいだけど」 そこで彼はわずかに首を傾げる。「それにしても……君、いつからそんな下劣な手を使うようになった?見ていて、こっちが哀れになってくるよ」 冷えきった視線が月乃を射抜く。 核心を突かれ、月乃は引きつった笑みを浮かべた。 彼女は必死に声を整える。「樹くん……何か誤解してない?これはただのビタミン剤だよ……。いくら私でも、一条くんに何かしたいからって、そんなもの使うわけないでしょ……」 言葉は最後に向かうにつれどんどん小さくなっていく。自分でも苦しい言い訳だと分かっていた。 顔にも隠しきれない動揺が浮かんでいる。 東和が、そんな稚拙な嘘に騙される相手ではないことくらい、月乃もよく知っていた。 それでも、何か言い訳せずにはいられなかった。 案の定、東和は鼻で笑う。 嘲るような、冷たい笑いだった。 片手で小瓶の蓋を開けると、中の白い錠剤を足元へと無造作にぶちまける。ぱらぱら、と白い粒が床に散った。 月乃は思わず身を強張らせる。「へえ。ただのビタミン?てっきり媚薬かと思ったよ」
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