言い捨てるなり、楓は二人に目もくれず、保安検査場へと向かった。沙弓の表情は目に見えて険しくなったが、人の往来が激しい空港で怒りを爆発させることはなく、M国へ到着してから娘を徹底的にしつけてやろうと決意した。保安検査を通過した後、楓はVIPラウンジへ直行した。間もなく、沙弓と琉生も姿を現した。二人は彼女の隣に腰を下ろし、琉生は時折言葉をかけてきたが、沙弓は無言のままソファに身を預け、目を閉じて休んでいた。やがて、搭乗を促すアナウンスが流れた。三人は機上の人となり、十数時間のフライトを経て、M国の国際空港へ降り立った。到着ロビーに出るなり、黒服のスタッフが足早に近づき、楓のスーツケースを恭しく受け取った。楓は二人の後に続いて迎えの車に乗り込んだ。車が一時間余り走った後、ようやく郊外に佇む広大な邸宅の門前で停車した。邸宅の正門は透かし模様を施した鉄製で、高さは四、五メートルもあり、堂々たる威容を誇っていた。門がゆっくりと開き、車は敷地内へと滑り込む。窓の外には、天を衝くようなゴシック様式の尖塔がそびえ立ち、神秘的で厳かな雰囲気を漂わせていた。尖ったアーチ型の入り口は、まるで大口を開けた怪物のようで、今にも人を丸呑みにしてしまいそうな不気味さがあった。楓が窓外の景色を呆然と見つめているのに気づき、沙弓は冷ややかな笑みを浮かべた。「どう?ここは本国よりずっといいでしょう?」楓は彼女の誇らしげな顔を見て、落ち着いた声で答えた。「別に、本国よりいいとは思わないわ。あなたはそう感じるのかもしれないけど」沙弓の顔が強張り、不快そうに眉をひそめると、彼女はフンと顔を背け、それ以上何も言わなくなった。助手席に座っていた琉生は、沙弓が言葉に詰まるのを見て、思わず眉を微かに上げた。沙弓に対してこれほど堂々と噛み付く人間を見たのは、何年ぶりだろうか。彼女が最も溺愛している娘のデイジーでさえ、沙弓の前ではおとなしくしているというのに。どうやら、これからの邸宅での生活は、思いのほか面白いことになりそうだ。車が車寄せに停車するなり、沙弓はドアを押し開けて降り、振り返ることもなく邸宅の中へと消えていった。楓も車を降り、トランクから自分のスーツケースを取り出し、引いて歩き出そうとした。外国人運転手が慌てて駆け寄り、荷物を
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