娘が亡くなった日、あの子の位牌を、黒崎家の仏壇に置いてあげたかった。しかし、まだ5歳だった黒崎達也(くろさき たつや)が、その位牌を床に投げつけ、めちゃくちゃに踏みつけた。「こいつは黒崎家の子供じゃないだろ!なんでここに置くんだよ!あんたが死んだって、あんたの位牌も絶対ここに置いてやらねえから!」その仏壇に置かれている「あの女」の位牌が目に入ったが、私は何も言わなかった。私の視線に気づいた達也は、慌ててその位牌を庇うように、立ち上がった。「なんなんだよ!あんたなんかが、ママに敵うわけがないだろ!愛人はどこまでいっても愛人なんだよ。まともな人間扱いされると思うな!」まさか、この手で育ててきたこの子が、こんなにも父親にそっくりになるなんて。私は目の前にいる実の息子を見つめながら、底なしの絶望に沈められる。「僕を数年育てたからって、母親気取りするなよ。僕の母親は、ママ一人だけなんだからさ。もし文句があるなら、この家から出ていけよ!」達也はまだ知らない。自分が叩き壊したその位牌が、実の姉のものだということを。しかし、もう何もかもがどうでもいいのだ。娘がいなくなってしまった今、私がここにいる意味なんてないのだから。「言われなくても、今日出ていくよ」私は床に散らばる位牌の破片に目を落とした。胸に色々な感情がこみ上げてくる。かわいそうな梓……死んでも、安らかに眠ることすらできないなんて。かがんで梓の位牌を拾い集めようとしたその時、誰かが思い切り蹴散らした。信じられない思いで顔を上げると、それはまたしても達也だった。どうしてこんなに幼い子供が、これほどまで意地悪になれるのだろうか。だが当の本人である達也は、私を軽蔑しきった顔で見ているだけだった。「なに見てんだよ、この愛人が!これ以上見るなら、その目玉えぐり出してやるからな!それに、そんなガラクタをもし拾おうとしたら、この家から追い出してやる!」まだ5つの子が、どうしてこんな酷いことを言えるのか分からなかった。とてもこの歳の子が口にするような言葉とは思えない。私は声が掠れた。「その言葉……誰に教わったの?」すると達也は、ふんっと鼻で笑った。「あんたに決まってるだろ?他に誰がいるって言うんだよ、この愛人が」こんな風に罵られても、いつもなら私
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