家に帰ってごはんを食べているとき、幼なじみの松井剛(まつい つよし)が私の従妹・夏川洋子(なつかわ ようこ)のために、北部特殊基地への昇進のチャンスを断ったことを知った。「洋子は地元の大学にしか行けないだろ。おばさんの体調もよくないし。だから俺はお前の出願先も変えておいたよ。俺たち、一緒に地元に残ろう」母の野村恵(のむら めぐみ)もそれに続いて言った。「そうよ、洋子ちゃんのことはあなたのおじさんに頼まれてるんだから。あなたも面倒をみてあげなきゃ。それにどうせ将来、剛と一緒になったらこっちに戻ってくるんだから、東都中央大学なんて行っても意味ないでしょ」そして私が何か言う前に、洋子の目にはみるみる涙がたまって、ぽろぽろとこぼれ落ちた。「私のできが悪いからだよね。居候のくせに、絢香(あやか)さんの邪魔までしちゃうなんて申し訳ないわよ。私に気遣うことないよ、もう行っていいから、私なら一人で大丈夫だから」そう言って洋子が泣き出すと、剛と母はすぐにあたふたして、彼女をなぐさめはじめた。私はそんな彼らを横目に、だまって部屋に戻った。そして出願締め切りの最後の瞬間に、志望校を東都中央大学に書き直した。そもそも東都中央大学に行きたかったのは、ただ剛の近くにいたい、というだけじゃなかった。かつては、私も彼と一緒に、四季の移り変わりの中そのまま年月を重ね、老いていくまで寄り添っていけたらと思っていたが、でも今はもう、そんなのはどうでもよくなった。ただ、私も心に決めていた目標を諦めるわけにはいかないのだ。しかしそう思って、私が志望校を東都中央大学に変えた、まさにその瞬間、部屋のドアが、バンと乱暴に開けられてしまった。ドアのところに、母が鬼のような形相で立っていた。「絢香!早く出て!さっきから食事の席でふてくされて、誰にあてつけてるの?洋子ちゃんはあなたの従妹でしょ、気遣ってあげるべきなのに、なんなのその態度は!今すぐ彼女に謝って!」だが、私は椅子に座ったまま、動かなかった。そして画面の「送信完了」という文字を見つめながら、静かに口を開いた。「私は謝ることなんてなにもしてないでしょ」「なんだって!」母は数歩で駆け寄ってくると、私の腕をぐいっとつかんだ。「反抗する気?お母さんの言うことが聞けないって言うの?今日という今日は、絶対に謝っ
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