【今月の管理費は3万円です。お支払いをお願いします】食卓に置いてあった夫の加藤涼太(かとう りょうた)のスマホが光り、私はちらっと見て手に取った。「管理会社が計算を間違えたんじゃない?うちの団地、管理費は月1万円くらいでしょ?」涼太はさっと立ち上がると、スマホを奪い取ろうとした。「きっと向こうの間違いだよ。俺から言っておくから」でも、私はもうリンクを開いて詳細画面を見てしまっていた。【物件名、夕凪の丘。所有者、菅原恵(すがわら めぐみ)】今、台所で料理をしている若い家政婦の名前が、恵だった。頭の中が、真っ白になった。私たち家族3人は古くてせまい団地で暮らしているのに、夫の涼太はうちの若い家政婦に、豪邸を買ってあげていたなんて。涼太はスマホをひったくると、さっと画面をロックした。私は彼の動きをじっと見つめ、冷たい声で言った。「夕凪の丘の名義人は、恵さん。なのに、管理費の催促はあなたに来るのね。どれから説明してくれるつもり?」涼太はスマホを画面が下になるようにテーブルに置くと、水を一口飲んでから話し始めた。「田舎の親戚が、家のことでちょっと特別な事情があってさ。それで菅原さんから名義を借りたんだよ。その親戚、最近海外に行ったから、俺が代わりに管理を頼まれてて」「どの親戚?」「お前は知らない人だよ。田舎の叔父」涼太は、嘘をついている。結婚して10年。涼太の親戚には全員会ったけど、そんな叔父はいなかった。もっと問い詰めたかったのだが、涼太は困ったような顔で言った。「まさか、俺が家を買って菅原さんにあげたなんて思ってないよな?俺の給料、知ってるだろ?そんな大金があったら、とっくに都心に引っ越してるって」涼太は平然とした様子で、話しながら息子の加藤充(かとう みつる)に味噌汁をよそってあげた。台所の換気扇が止まり、恵が豚の角煮を運んできた。「梓(あずさ)さん、お料理はこれで全部です、どうぞゆっくり。私は娘のことがあるので、先にお暇しますね。食べ終わった食器は、台所に置いてくだされば大丈夫です。明日の朝、私が片付けますから」恵はさっきのやり取りを知らない様子で、黙々とエプロンを外し、靴を履き替えて帰っていった。その間、涼太とは一度も目を合わせなかった。私を避けるよう
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