瀬奈は口を開けたまま固まった。湊斗はそんな彼女を不思議そうに眺めていた。何をそんなに驚いているんだ、とでも言いたげな顔だ。(いやいや、むしろアンタはどうしてそんな平然ととんでもないことを言うわけ!?)その発言の真偽は定かではないが、瀬奈が首を突っ込むようなことではないということだけはたしかだ。実子の里亜に対しても似たようなことを言っていたのだから、ただ単に子供として認めてないって可能性もあるわけだし。「冗談もいい加減にしなさいよ、いくら何でも笑えないわよ」「冗談のつもりはなかったんだが……」瀬奈は何か言いたげな湊斗の言葉を遮った。「とにかく、百合子ちゃんが今日家に来たの。ただお茶して話しただけで危害は加えてないわ。たまたま家の前を歩いていたから招待したのよ。それだけ」「そうか」百合子が家に入った理由を知ると、湊斗はそれ以上は何も聞かなくなった。「……咎めないの?」「咎めるも何も、お前はこの家の女主人だろう?雇われてるわけでもないんだから、どのような行動を取ったところで俺が何か言う権利なんてないだろ」それが意味するのは、ここにいる間は瀬奈の意思を尊重するということだった。(湊斗にしては珍しくまともなこと言うのね……以前とは大違い……)賭けをしてからというもの、彼は瀬奈の行動をあまり制限しなくなった。「それにしても百合子ちゃん、とっても良い子だったわ。湊斗もそう思うでしょう?」「……?あぁ、そうだな……」瀬奈がそれとなく娘に関する話を振ってみるが、湊斗は特別興味を示さなかった。(相変わらず冷たいわね)自分と血の繋がった娘だというのに、どんな話をしたのかとか気にもならないのか。元より子供があまり好きではない人だったけど。二人でリビングへ向かっている途中、湊斗が瀬奈に話しかけた。「お前、里亜に手作りの飯を作ってるんだって?」「当たり前でしょう、母親なんだから」私は沙織たちみたいにシッターなんて頼らないの。もちろん、それを平然と黙認するあなたもどうかと思うけれど。瀬奈は心の中で付け加えた。そんな彼女を横目でじっと見つめていた湊斗は、おもむろに口を開いた。「俺にも作ってくれよ」「……何ですって?」瀬奈は驚いて彼を見た。ふざけているのかと思ったが、彼の目は真剣そのものだった。瀬奈は結婚生活の間、ご飯を作って湊斗の帰りを待ってい
Dernière mise à jour : 2026-05-08 Read More