เข้าสู่ระบบ女の友情とは、儚く脆いものである。湊斗は今回の一件で、そのことをより強く感じることとなった。マナミという自称沙織の親友の女は、まるで彼女を売るようにペラペラと語り始めた。『そういえば……沙織があの一件に関与したと言っていたわ』『…………それは本当か?』『ええ、間違いないわ。ついこの間、酒の席で口を滑らせたのよ。あの女ったら、どこまでも愚かだわ』マナミは沙織とは学生時代からの仲で、かなり親しい間柄だった。お互いが内心どう思っているかは知らないが、何でも打ち明けられる関係なのは間違いないようだ。『沙織が犯行を主導したという証拠が欲しいんだが……』『すぐにでも手に入れるわ、あの女は酒に酔ったら何でも言っちゃうんだから。簡単に引き出せると思うわ。お礼は……わかっているわね?』『…………ああ、約束しよう』マナミは狡猾な女で、事件の証拠を集める代わりに湊斗に金銭を要求した。彼女は金さえあれば何でもする女だった。しかし、要求された額は湊斗にとっては大したことがないので、別に躊躇うこともなかった。マナミは絵に描いたような悪女だったが、約束はきちんと守る女だった。マナミは超小型ボイスレコーダーを着け、沙織に接触した。『証拠を手に入れたわ。あの女の証言は全てここに録音してある』『……感謝するよ、マナミ』湊斗はマナミからボイスレコーダーを受け取った。そこには、恐るべき彼女の犯行内容と隠された本性がハッキリと記録されていた。『―――邪魔だったから、始末しようと思ったの。せめて瀬奈が死んでくれていたらよかったけど、あの女は生きていた』『―――アイツらが失敗したんだって知ったときは焦ったわ。いつ自分に捜査の手が及ぶかわからない。湊斗は絶対に犯人たちをただでは済まさないでしょうから……証拠は全て燃やしておいたの』『―――目的は何かって?そりゃあ湊斗の子である里亜を消すことよ。それ以外にあり得ないでしょう?アイツは生きてちゃいけないのよ。この世からいなくなるべき』どれも、聞くに堪えないような侮辱の言葉だった。もはや沙織を断罪することに対する罪悪感などなかったが、こんなものを聞いたあとでは何の未練もなくやれそうだった。その後、湊斗は共犯の男たちにも面会をし、沙織が首謀者だと証言を取ることに成功した。確実な証拠を手に入れ、彼女を追い詰める準備は着々とできていた
二週間前、湊斗は書斎で一人頭を悩ませていた。彼の悩みはただ一つ。愛人の沙織が起こした事件に関してだった。「どうすれば沙織を追い詰められるか……」瀬奈を誘拐し、殺害しようとしたあの事件。実行犯たちが捕らえられて一件落着したかと思われていたが、彼の中ではまだ終わっていなかった。―――主犯格の沙織を捕まえるまで、戦いは終わらない。実行犯の男には十年を超える重い懲役刑が課され、共犯の男たちにもそれぞれ数年の刑期が課された。彼らがしっかりと罰を受けた中で、沙織だけ何のお咎めもなしだなんて当然認められるはずがない。湊斗は瀬奈の言葉を疑っていなかった。たしかに沙織であれば、里亜を排除しようと考えるかもしれない。彼女はなぜか、自分の子供を後継者にしようと必死だったから。「湊斗……まさかとは思うけど、あの女の子を次の社長にするつもりじゃないよな……?」「……とんでもないことを言うな。あるわけがないだろう」一馬の問いを、湊斗は即座に否定した。彼は元々、後継者のことにあまり関心がなかった。そのため、別に誰が跡を継いでもかまわないと思っていた。社長など疲れるだけだし、なりたい者がなればいいと彼は考えている。親の意思よりも、本人の意思が一番大切だ。そのような考えから、湊斗はあえてその件に言及してこなかった。しかし、そのために沙織が他人を傷付けることを企んでいるのなら、当然後継者の座など与えるはずがない。今すぐにでも彼女を痛い目に遭わせてやりたかったが、すぐにとはいかなかった。沙織は今回の犯行に、自分自身が関与したという証拠を何一つ残していなかった。実行犯たちも口を閉ざしているし、このままでは彼女を捕まえることなどできない。悩みに悩んだ湊斗は、彼女を追い詰めるためにあることを考えた。沙織には、普段からかなり親しくしている女友達がいた。彼女は沙織と似たような性格で、三十を超えてもなお裕福な既婚男性の愛人などで生計を立てているという。そんな彼女に、湊斗は狙いを定めた。「もし、俺が接触すれば……その女は必ず誘いに乗るはずだ……」たとえ親しくしている友人と関係があったとしても、気にはならない。そのようなタイプの女が、神宮司財閥の社長を逃すはずがないだろう。彼はそんな考えから、沙織の親友に近づいた。湊斗の予想は的中、罠だとも知らずに彼女は湊斗の誘いに応じた。も
瀬奈と里亜がいない神宮司家にて。邸内の書斎で、湊斗は一人深いため息をついていた。瀬奈が実家に帰ってから数日が経っていたが、彼はかなり疲弊していた。特に仕事が忙しいというわけではない。彼が疲れている理由はただ一つ。「二人がいないというのは、こんなにも辛いのか……」目の下に大きなクマを作った彼が、ボソッと呟いた。「そんなふうになるくらいなら、あのとき縋ってでも引き留めておけばよかっただろう?快く笑顔で送り出したのはお前自身じゃないか」同じ部屋で作業をしていた一馬は、呆れたように彼に言葉を返した。縋っても引き留める――そうするべきだっただろうか。そう思い始めた湊斗は、静かに首を横に振った。いや、そんなことはできない。「彼女を縛り付けたくなかったんだ。重い男だと思われて嫌われたくもなかったし……瀬奈には自由に過ごしてほしかったからな」「重いのは事実だろう?瀬奈ちゃんも既に知ってるだろうに、今さら隠すことなんてないさ」慰めているのか、貶しているのか。しかし、今は一馬と言い争いができるような気分ではなかった。一馬はそんな湊斗の気持ちに気付くことはなく、そういえばと何かを思い出した様子で尋ねた。「それより、計画は順調にいっているのか?」「ああ、沙織の犯行の証拠を見つけることができた―――これがあれば、あの女を法的に処罰することができる」キッパリと言い放った湊斗に、一馬はホッとしたように笑った。「よくやったな、湊斗。お前のこれまでの苦労は報われたんだ」「ああ、たった数週間のことだというのに、ずいぶんと長く感じるな……」一仕事終えたようにゆっくりと息を吐いた湊斗に、一馬が労うようにその肩を撫でた。「そのために、今まで瀬奈ちゃんを遠ざけていたんだろう?」「ああ……ようやく終わったのかと思うと気が楽になったな」湊斗は肩の荷が下りたように伸びをすると、数週間前までの出来事を回想した。彼は瀬奈から距離を置いているかのように見えたが、実はそれにはきちんとした理由があった。始まりは、二週間前の夜のことだった。
その後、三人は近くにあるデパートでショッピングを楽しんだ。セレブが多く訪れる都内の高級デパートに来るのは久しぶりだった。「姉さん、兄さん、早く早く!」「瀬奈、あまり急ぐな……」瀬奈は年を取ってもなお、お転婆なところが昔と変わらない。そんな彼女に、泰西も静香もクスリと笑みを溢した。「昔はいつも走っては転んで泣いちゃってたのに……今はすっかり大人ね」「姉さんったら、私のことを何だと思っているの?もう子供じゃないんだから」泰西はそんな妹の姿に、懐かしさを覚えた。そういえば、昔は時々二人で遊んだっけ。瀬奈は幼すぎて覚えていないだろうが、彼にはたしかにそんな記憶があった。無邪気な姿が、あのときに見た彼女と重なった。はしゃぎまわるところも、自分には到底作れない屈託のない笑顔も。瀬奈は良い意味で、昔から何も変わっていなかった。もしも、彼女がいなければ、静香とこんなふうに和解することもなかっただろう。その点で言えば、瀬奈には感謝してもしきれない。「ねえ、見て!あの人たち、とっても綺麗だわ!芸能人か何かのグループかしら?」「あら、本当!特にあの男の人……俳優さんみたいね」誰から見ても美しい三兄弟は、周囲からかなりの注目を集めていた。しかし、三人の時間に入り込んでいる瀬奈たちは、当然そんなこと気にも留めていない。三人全員にそれぞれ配偶者がいるし、別に異性からの人気を集めたいとも思っていなかった。「今日は……欲しいものがあったら何でも言え。特別に俺が買ってやろう」「あら、兄さん、太っ腹なのね?」その言葉に、瀬奈は嬉しそうに笑った。彼女の笑顔に、彼は昔から勝てなかった。泰西は何だかんだ、妹には甘い兄だった。「デパ地下でケーキでも買いましょうよ!今日は兄さんの奢りだし、甘いものを食べると幸せになれるんだから!」「あら、いいわね」静香は彼女の提案に賛成し、三人はエスカレーターで地下へと下りて行った。以前の三人の関係からは信じられないくらいに穏やかな時間が流れていた。(この幸せが永遠に続いたらいいな……)瀬奈は静香と泰西に囲まれながら、心の中で願った。一方その頃、湊斗は愛する瀬奈のためにある決断を下していた――
その後、瀬奈たち三人は近くにあるファミリーレストランで昼食を摂ることにした。暁家の令嬢と令息がファミレスを昼食に使うなど前代未聞だった。メニュー表を見た泰西がポツリと言葉を溢した。「……こんなものを食べるのか?」「アンタ、庶民の飯は食べられないとでもいうわけ?」「兄さん、ここのご飯とっても美味しいのよ!」瀬奈と静香は暁家を既に出ており、質素な暮らしを送っていた。そのため、彼女たちにとってはファミレスのご飯なんて食べ慣れたものだ。しかし、泰西だけは違う。彼はいつも高級なランチを嗜んでおり、ファミレスなんて入ったこともなかった。庶民的な食事を嫌っているわけではないが、ただ初めてなので困惑していた。そんな彼を置き去りに、瀬奈と静香は話を進めていく。「私ハンバーグにしようかな!ライスとセットで!姉さんは?」「そうねぇ……期間限定のこのドリアすごく美味しそうだわ」二人がタブレットで注文を終えたあと、瀬奈は一人取り残されている泰西に尋ねた。「兄さんは何にするの?」泰西は未だ決められていないのか、メニュー表をめくってばかりいる。そんな彼に呆れた瀬奈は、勝手に注文を始めた。「兄さんの分は私が決めてあげるね!一番のオススメを注文しておくわ!」「お、おい……瀬奈……」泰西は瀬奈を止めようと声を上げたが、彼女はお構いなしに注文を終えた。泰西の食の好き嫌いを把握しているわけではないが、このままではいつまでたっても決められない。時間は無限にあるわけではないのだ。このあとも、久々に二人と買い物でもしたいし。「私が責任もって美味しいものを選んでおいたから、安心してね。兄さん」「……お前、そこまで大胆だったか?」ニッコリと笑う瀬奈に、泰西はそれ以上何も言えなかった。しばらくすると、三人のいるテーブルに料理が運ばれてきた。瀬奈が泰西のために選んだのは、一番人気メニューであるチーズインハンバーグだった。「兄さん、私のイチオシよ。ぜひ食べてみて」「……」瀬奈に薦められ、泰西はナイフで一口サイズに切ったハンバーグを口に運んだ。何回か咀嚼をしたあと、ゴクリと飲み込んだ。「……美味いな」「ね!?美味しいでしょう!?」泰西がポツリと溢した一言に、瀬奈は嬉しそうに笑った。完璧な兄に初めて認められたような気がしたのだ。「昔から誰よりもプライドの高いアンタがね…
それから数日後。「――姉さん、兄さん!仲直りしたようでよかったわ!」「……アンタ、私を嵌めたわね」静香の鋭い視線に、瀬奈はビクッと肩を上げた。結果仲直りできた静香と泰西だったが、静香は瀬奈に騙されたのが何とも気に入らなかった。彼女はたった一人の妹を心配していた。瀬奈を助けるためにここまで来たというのに、こんなことになるとは思ってもみなかったのである。「アンタがこういうことを企むとは……予想外だったわ」拗ねたような静香に、泰西は横から口を挟んだ。「だが、その罠にまんまと嵌まったのはお前だろう?」「何ですって?」仲直りしてからまだ数日しか経っていないというのに、既に一触即発状態。瀬奈は慌てて二人の間に入り、彼らを宥めた。「姉さん、兄さん、落ち着いて!今日は喧嘩なんてしに来たわけじゃないでしょう?」「……」瀬奈が二人の肩をポンポンと叩き、喧嘩寸前の兄姉を何とか落ち着かせた。今まで誰も止めることができなかった二人の喧嘩だが、瀬奈が間に入れば話は別だ。「……そうね、今日は別に目的があってここに来たんだから」「……たしかに、俺は今も喧嘩なんてするような気分じゃないしな」瀬奈の言葉で、静香と泰西も今日何をしに来たのかを思い出した。泰西が運転する車から降りた三人は、そのまますぐ傍にある墓地へ入った。(兄さんと姉さんと並んで歩くだなんて、初めてかもしれないわね……)瀬奈は横にいる兄姉にチラリと目を向けた。なぜか、二人が一緒にいるととても心強く感じる。しばらく墓地の中を歩くと、目的地に到着した。――『暁家之墓』墓石に刻まれたその文字を前に、瀬奈は二人を振り返った。「兄さん、姉さんも。今日この場所へ三人で来ることができてとっても嬉しいわ」長い間微妙な関係だった二人と、母親の墓参りに行きたいというのは瀬奈の夢だった。しかし、心のどこかで叶うはずがないと諦めていた。「ああ、そうだな……」「それに関しては私も同じ気持ちよ」泰西と静香が、柔らかく微笑んだ。こんなにも穏やかな時間が三人の間に流れるとは、本人たちも想像していなかった。三人は花を供えると、墓の前で手を合わせた。つい最近、日記を読んで初めて知った母の本当の愛。かなり衝撃を受けたが、今ではだいぶ受け入れることができた。(……母さん、どうか安らかに眠ってください)瀬奈は両手を合わせなが