湊斗の愛人宅から出た涼は、今度は暁家の本邸へと向かった。黒川区に来たついでに、泰西に挨拶でもしようと思ったのだ。「いつ見てもでっかいな……」涼は目の前に広がる大豪邸を見上げた。暁家は、敷地内に本邸とは別にもう一つ大きな邸宅がある。最も大きな本邸には社長が住み、別邸には後継者の泰西とその妻子が暮らしているのだという。涼は泰西と特別仲が良いわけではなかったが、彼のことは昔からよく知っていた。泰西は暁家の中でも有名人だったからだ。社交的でスポーツ万能な長女。何事においても完璧な長男。特に目立ったところのない次女。暁家の三人の子供たちは界隈ではかなり有名で、その中でも一目置かれていたのが長男の泰西だった。(……まぁ、性格は父親にそっくりで難アリだけど)涼はそんなことを考えながら、家のインターホンを鳴らそうと腕を上げた。そのとき、後ろからふいに声をかけられた。「――あの、一体ここに何の用ですか?」「……あなたは」振り返ると、ロングヘアの綺麗な女性が視界に入った。どこかで見たことがある顔だった。涼は必死になって記憶を辿った。(そういえば……前のパーティーで社長の傍にいたな……)ということは、この家の女主人だろうか。暁社長は未婚のはずだから内縁の妻か恋人か何かか。随分と歳が離れているが、暁グループの社長なら若い美人をいくらでも捕まえられるだろう。「暁社長の奥さんですか?」「……違います。私は副社長である暁泰西の妻です」「あ」彼女は眉をひそめた。(社長の義理の娘だったのか……)泰西の妻は一般女性なため、彼と違って表舞台に姿を現すことはほとんどない。大人になってから泰西とあまり会っていなかった涼は彼女が彼の妻だということに気が付かなかったのだ。「……すみません」「いえ、気にしないでください」泰西の妻はそうは言ったものの、眉間にシワが寄ったままだ。何とも気の強そうな女だ。そういうところが泰西と気が合ったのだろうか。彼女は腕を組んだまま、再度涼に尋ねた。「ところで、こちらへは一体何の用ですか?」「泰西……いえ、副社長に会いに来たんです。高橋涼と言えば伝わると思います」泰西の妻は冷たい瞳で涼を見つめていた。(俺のことを疑っているのか?)しばらくすると、ぷいっと彼から顔を背けた。「夫は今家にはいません。夜には帰ってくるかと」「そ、そう
Dernière mise à jour : 2026-05-16 Read More