瀬奈は長い眠りについていた。昨日の夜突然湊斗の前で倒れたあと、彼女は体調を崩して寝込んでしまった。三十八度を超える高熱が彼女を襲い、まともに歩くこともできなかった。こんな高熱を出すのは久しぶりだった。彼女は元々体があまり強いほうではなかった。前に熱を出したのはたしか、家を出る一年くらい前。そのときもこんな感じだったっけ。あのときは今よりもずっと地獄だった。湊斗との離婚を決める前、神宮司邸に瀬奈の味方はほとんどいなかったからだ。たびたびメイドが様子を見に来るくらいで、彼女は放置されていたも同然だった。悪寒や激しい咳に苦しんでいる最中、外からメイドたちの疎ましそうな声が瀬奈の耳に入った。「奥様が熱を出したんですって。看病しろって宮島さんが」「嫌だわ……私たちに移ったらどうするのよ。私来週デートがあるのよ?」「いっそこのまま放置したらどう?死んでくれたら社長も喜ぶんじゃない?」「そうね、そうしましょう。奥様がいなくなったところで沙織さんと再婚するだけなんだから」その発言を聞いた瀬奈は、何が何でも生きてやると強く誓った。沙織に易々とその座を渡すわけにはいかなかった。辛いから早く寝てしまおうと、瀬奈はギュッと目を閉じた。こうしているうちに眠りにつけたらいいな。そのとき、慌てるようなメイドたちの声が外から聞こえた。「ど、どうしてここに……!」誰かが瀬奈の部屋に来たようだった。それから少しして、瀬奈が寝ていた部屋の扉が開いた。別に誰だってよかった。この状況から救ってくれるなら。足音は次第にこちらへと近付いてくる。彼女が薄っすらと目を開けると、ベッドサイドに立っていたのは湊斗だった。いつものように無表情でこちらを見下ろしていた。「………………夢?」「……そうだ」湊斗は素っ気なく返事をすると、熱くなった瀬奈の頬に手を触れた。自分の体が熱いせいか、彼の手がとても冷たく感じた。(私ったら、いつの間にか寝ていたみたいね。こんな夢まで見るなんて……よっぽど湊斗を恋しく思っているみたい……)夢でなければ、湊斗がこんなところへ来るはずがなかった。こんな風に私に優しくするはずがない。そういえば、前も夢の中で優しい湊斗の姿を何度か見たことがある。昔の幸せだった頃に戻ったようで、ずっと寝ていたいくらいだった。「湊斗……」「何だ?」あぁ、夢の中での湊斗は返
Dernière mise à jour : 2026-05-12 Read More