十七年前のその日、湊斗はいつものように会社で仕事をしていた。このときには既に妻である瀬奈との仲は壊滅的で、彼は毎日のように夜遊びを繰り返していた。特に相手のことを好きになったわけでもないが、孤独感を埋めるためにはそうする以外の選択肢は無かった。この頃、既に両親は事故で亡くなっており、余計に心に余裕が無かったのだ。そんな彼の元を、一人の女性が訪れた。「――湊斗兄さん、久しぶりね」「……お前」突如何の先触れもなく本社にある彼の社長室にやって来たのは、彼の従兄妹の一人――長谷川小夏(はせがわこなつ)だった。小夏とは家同士の付き合いがあり、昔から親しくしていた。しかし、ある一件を機に彼女は実家と縁を切り、それからは会うことも減って行った。――そんな彼女が、どうして今になって俺の元へ?「何故こんなところにいる?」「兄さん、お願いがあってここに来たの。どうか私の話を聞いてほしい」「……」真剣な面持ちの小夏に、湊斗は仕事中だったが断ることができなかった。彼女を奥の部屋に通し、二人で向かい合って座った。小夏とこうして話すのは、実に四年ぶりのことだった。彼女は湊斗の一つ下で、最後に会ったのは小夏がまだ十六の高校生だった頃だった。「――実はね、夫が亡くなったの」「何だと……?」突然の告白に、湊斗は衝撃を隠しきれなかった。(小夏の夫が亡くなっただと……?)湊斗がここまで驚いたのには理由があった。小夏は昔から、実の両親とは折り合いが悪かった。彼女は裕福な家庭の生まれだったが、父と母は厳格な人で、昔から衝突してばかりだった。そのせいか、小夏の学生時代はなかなかに荒れていた。夜遊びを繰り返し、勉強もろくにしなくなった。権力を持つ両親のおかげで何とか高校には進学できたものの、そこでも彼女は真面目に勉学に励むことなく、毎日のように遊び歩いていた。両親はそんな小夏に愛想を尽かし、ほとんど見放していた。いつからか遊びに対しても何も言わなくなり、そのことがきっかけで彼女の行動には拍車がかかった。――そして十六歳になった冬、小夏は当時付き合っていた年上の恋人との子供を妊娠した。両親はそれを機に小夏と絶縁し、彼女は家を出て行った。小夏はそのまま付き合っていた恋人と結婚し、彼と同棲する運びとなった。それから四年の月日が流れ、今に至る。湊斗は最後に会ったときより
Last Updated : 2026-07-01 Read more