その後、瀬奈たち三人は近くにあるファミリーレストランで昼食を摂ることにした。暁家の令嬢と令息がファミレスを昼食に使うなど前代未聞だった。メニュー表を見た泰西がポツリと言葉を溢した。「……こんなものを食べるのか?」「アンタ、庶民の飯は食べられないとでもいうわけ?」「兄さん、ここのご飯とっても美味しいのよ!」瀬奈と静香は暁家を既に出ており、質素な暮らしを送っていた。そのため、彼女たちにとってはファミレスのご飯なんて食べ慣れたものだ。しかし、泰西だけは違う。彼はいつも高級なランチを嗜んでおり、ファミレスなんて入ったこともなかった。庶民的な食事を嫌っているわけではないが、ただ初めてなので困惑していた。そんな彼を置き去りに、瀬奈と静香は話を進めていく。「私ハンバーグにしようかな!ライスとセットで!姉さんは?」「そうねぇ……期間限定のこのドリアすごく美味しそうだわ」二人がタブレットで注文を終えたあと、瀬奈は一人取り残されている泰西に尋ねた。「兄さんは何にするの?」泰西は未だ決められていないのか、メニュー表をめくってばかりいる。そんな彼に呆れた瀬奈は、勝手に注文を始めた。「兄さんの分は私が決めてあげるね!一番のオススメを注文しておくわ!」「お、おい……瀬奈……」泰西は瀬奈を止めようと声を上げたが、彼女はお構いなしに注文を終えた。泰西の食の好き嫌いを把握しているわけではないが、このままではいつまでたっても決められない。時間は無限にあるわけではないのだ。このあとも、久々に二人と買い物でもしたいし。「私が責任もって美味しいものを選んでおいたから、安心してね。兄さん」「……お前、そこまで大胆だったか?」ニッコリと笑う瀬奈に、泰西はそれ以上何も言えなかった。しばらくすると、三人のいるテーブルに料理が運ばれてきた。瀬奈が泰西のために選んだのは、一番人気メニューであるチーズインハンバーグだった。「兄さん、私のイチオシよ。ぜひ食べてみて」「……」瀬奈に薦められ、泰西はナイフで一口サイズに切ったハンバーグを口に運んだ。何回か咀嚼をしたあと、ゴクリと飲み込んだ。「……美味いな」「ね!?美味しいでしょう!?」泰西がポツリと溢した一言に、瀬奈は嬉しそうに笑った。完璧な兄に初めて認められたような気がしたのだ。「昔から誰よりもプライドの高いアンタがね…
Última atualização : 2026-09-30 Ler mais