松永に電話をかけると、彼は三コールほどで応答した。「もしもし、神宮司さん?」「あ、松永さん……急に電話してしまってすみません」電話の向こうから、いつものチャラチャラした松永の声が聞こえる。いくら心に余裕がないとはいえ、彼に電話をかけるだなんて。自分でもありえないと思っていた。「全然、気にしないで。だけど本当にかけてくるとは思わなかったから驚いたなぁ」「わ、私も電話をかけることになるとは思ってもいませんでした」その言葉に、松永はアハハッと声を上げて笑った。一生繋がることがないと思っていたのは、お互い様だ。「どうかしたの?旦那さんのことで何かあった?」「あ、いえ……そういうわけではないんですけど……」瀬奈は松永相手に、正直に事情を話すことができなかった。そもそも彼はつい最近出会ったばかりで、湊斗とは話したこともない。そんな彼にこのような話をするのは正解なのだろうか。そのような思いから素直に打ち明けることが出来ずにいたものの、松永はそんな瀬奈の気持ちを見抜いていたようだ。「いやぁ、神宮司さんがわざわざ俺に電話かけてくるってことは旦那さん関連だろ?」「そ、それは……」心の中を見透かされたようで、瀬奈は認めざるを得なかった。「旦那さんと上手くいかなくて寂しくなっちゃった?なら、俺が一日相手してあげようか?今から君の家に――」「冗談はやめてください、松永さん」瀬奈は松永の馬鹿げた提案に、即座に断りを入れた。悩んでいたから電話したというだけであって、彼女まで不倫をしようなんて意思はない。「まぁ、そうだな……俺が神宮司さんと関係持っちゃったら旦那さんが可哀相だもんな」「前から思ってたんですけど、私と夫どっちの味方なんですか?」松永は瀬奈のその質問には答えなかった。代わりに、彼はしみじみと過去を思い返していた。「神宮司さんを見ていると、昔を思い出すな……俺もそういうときがあったなぁ」「そういえば、松永さんって昔結婚してたんでしたっけ」「ああ、そうだよ。社員の誰かから聞いたのか」松永が過去に結婚しており、その後離婚したという話は飲み会で隣に座った女性社員から聞いた話だった。今どき夫婦の離婚なんてそれほど珍しいことではない。離婚したというだけで色眼鏡で見るのも間違いだろうと思い、そこまで気にはしなかった。「前に神宮司さんが旦那さんを
最終更新日 : 2026-08-30 続きを読む