All Chapters of やわらかアルファとおっさんオメガ: Chapter 31 - Chapter 32

32 Chapters

10-3

 志郎は、持っている服の中でも一番仕立ての良いスーツを着て、岩崎総合病院の前に立っていた。 休診日にここに来たのは、カケルの「志郎さん、兄さんに会ってください」に〝そそのかされて〟の結果だ。──それでも、親族勢揃いの顔合わせとかじゃないだけ、まだマシか……。 とはいえ、それはむしろ、最初にタケルが値踏みをしてきているとも取れる。 だから一番まともに見える服装でやってきたのだ。「志郎さん! こっちです」 正面玄関ではなく、救急外来の扉から、カケルが手を振った。「これ、お兄さんに渡してくれる? 甘いものが好きなら良いんだけど」「手土産なんて、気を使わなくてもいいのに……。あ、カステラだ! お義姉さんが喜びます」 渡された紙袋の中を見て、カケルは嬉しそうに言った。「カケルくん……、俺、変じゃない?」「すごくかっこいいです。アルマーニですか?」「いや……、個人店舗のフルオーダー。俺の一張羅?」「惚れ直します」「よせよ……」 廊下を歩き、タケルの執務室へと案内される。 扉を開けると、そこにタケルが待っていた。「は……はじめまして、瀬尾志郎と申します」「こんにちは、岩崎尊です」 握手を求められ、志郎は応じたのだが──。 タケルは、その手を握ったまま、深々と頭を下げた。「この度は、愚弟が様々なご迷惑をおかけしまして……」「え……、あの……」 狼狽える志郎は、思わず振り返ったが。 カケルも驚いた顔で首を左右に振っている。「カケルは、不束者でございますが、私にとっては可愛い弟です。今後も至らずにご迷惑をおかけすると思いますが、どうか……
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10-4

 マンションに戻ったところで、志郎はぼすんとソファに体を投げ出した。「いや、まいった」「すみません、志郎さん」 後ろをついてきたカケルが、申し訳なさそうにしょんぼりとしている。「カケルくん、全然知らされてなかったの?」「はい……。兄さんは『突然、俺の家に来いと言われても、瀬尾さんが萎縮するだろうから、来慣れてる病院のほうがいいだろう』って、言ったんです」「あ、そう……。さすがに食わせ者だな、きみの兄さん……」 思わず、はぁっとため息が出る。 とはいえ、自分はカケルと番になった。 どちらにせよ、カケルの親族との顔合わせは避けられないのだし、気まずい時間を最短に縮めてくれたタケルには、感謝をすべきなのかもしれない。「ホント……、すみません」 志郎は体を起こすと、傍で床に座り込んでいたカケルの頭を撫でた。「きみは、良い家族に囲まれていて、羨ましいよ」「え……っ? 怒ってないんですか?」「なんで? 挨拶はしなくちゃなんないと思ってたし。どうやってカリフォルニアまで行こうか考えていた」 志郎が促すと、カケルもソファの隣に座り直した。「母さんが、志郎さんのこと気に入ってくれて良かったです」「こんなおっさん見て、喜んでくれると思ってなかった」 志郎は、カケルの肩に頭をあずける。「志郎さん……?」「タケルさんには改めてお礼しなきゃだよなぁ。それに、タケルさんのご家族にも挨拶に行かなきゃ……」「じゃあ僕、それまでにお義姉さんの好物、調べておきますね」 そこで会話が途切れたところで、カケルが変にもじもじしている。「どうしたの?」「あの……、志郎さんは今更こんな話を聞きたくもないかもなんですが&hellip
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