All Chapters of 誰かと添い遂げる人生より、自由に羽ばたきたい: Chapter 21 - Chapter 22

22 Chapters

第21話

2年という月日が、まるで風にめくられる本のページのように、あっという間に過ぎ去っていった。梓の人生は、はっきりと右肩上がりの曲線を描いていた。ドリームワークスで、彼女はアシスタントから、中小規模のプロジェクトを一人で任されるデザイナーにまで成長した。梓が手掛けたいくつかの古民家リノベーションや個性的な民宿のプロジェクトは、その土地の文化を巧みに取り入れ、空間での感動体験を大切にしたデザインで高い評価を受けた。さらには、業界でも注目度の高い新人デザイン賞を受賞するほどだった。菖蒲はますます梓を頼りにするようになり、重要なクライアントの多くが彼女を指名するようになった。梓の名前は、デザイン業界の狭い範囲ではあるが、少しずつ知られるようになっていった。それは、誰かの妻としてではなく、一人のデザイナーとしてだった。続けていたヨガやトレーニングのおかげで、体調もどんどん良くなっていった。背中の傷跡はまだ残っていたが、梓はもう平然と向き合えるようになっていた。あるデザインサロンのイベントでは、「傷と再生」をテーマに、不完全な印をデザインのインスピレーションに変える方法を語り、多くの人々の心を打った。彼女は依然として独り身だったが、その生活は充実していた。泳げるようになり、バリスタの資格を取り、さらには外国語の勉強も始めた。週末は同僚と食事をすることもあれば、一人で展覧会やコンサートに出かけたり、家で本を読んだり絵を描いたりして過ごした。自分の時間もお金も、そして気持ちも、すべて自分でコントロールできる自由を彼女は楽しんでいた。そんな梓に転機が訪れたのは、ある国際的なデザイン交流プロジェクトだった。F国の有名なデザイン事務所が、国内のいくつかのアトリエと提携し、優秀なデザイナーを選んでF国で1年間の研修を受けさせるというものだ。ドリームワークスはその枠を一つ獲得し、菖蒲は迷うことなく梓を推薦した。「あなたのデザインには何か特別なものがあるの。静かなのに力強くて、風情をうまく捉えている。でも、ただ記号的に表現しているだけじゃない」菖蒲は彼女に言った。「行ってみて。世界は広いのよ。あなたにはもっと大きな舞台が必要だわ」このチャンスを前に、梓は少しだけためらった。見知らぬ土地、言語の壁、まったく新しい環境。だが
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第22話

4年後、晩秋の東都国際空港。国際線到着ロビーは、人でごった返していた。アナウンスが多言語でフライト情報を流し、あちこちでキャリーケースの車輪が転がる音が響いている。梓はカートを押しながら、人の流れに乗ってゆっくりと出口へ向かった。彼女は仕立ての良い、オフホワイトのトレンチコートを着ていた。中にはライトグレーのカシミアのセーターと黒いスラックスを合わせている。首に巻いたエルメスのスカーフは、先日F国へ出張した時に買ったものだ。長く伸ばした髪は緩くカールがかかっていて、肩にふわりと流れている。上品な薄化粧に金縁の眼鏡が、知的でクールな印象を一層際立たせていた。長旅で少し疲れている様子だったけれど、瞳は澄んでいて静かだった。落ち着いた雰囲気が漂っている。4年もあれば、人は充分に生まれ変わることができる。頻繁な海外出張やハードな仕事、そして様々な文化に触れるうちに、梓のかつての未熟さや迷いは消え去っていた。多くの経験を積んだからこその、穏やかさと自信に満ちたオーラが身についていた。それは世界に揉まれ、仕事によって磨かれた輝きで、内側から自然と滲み出ていた。今回梓が帰国したのは、母校からの招待があったからだ。「地域文化と現代デザインの融合」というテーマで講演会をする傍ら、国内の大きな観光プロジェクトの打ち合わせも兼ねていた。スケジュールはぎっしりで、東都での滞在は2日間だけだ。出口に近づいた時、梓は無意識に出迎えの群衆に目をやった。様々な名前が書かれたボードと、到着を待ちわびる人々の顔が見える。その時、彼女の視線が不意に止まった。人垣の少し外れた場所に、一人の男が立っていた。勇太だった。彼は、ずいぶん老けたように見えた。歳を取ったというより、精神的にすり減っている感じだ。服装はきちんとしているが、どこか背中が丸まっている。目の下には深い隈があり、表情からは拭いきれない疲労と陰りが感じられた。勇太はそこに突っ立って、ぼんやりと出口のあたりを見渡していたが、やがてその視線が梓と絡み合った。その瞬間、彼は何かに打たれたように固まった。その瞳には驚きや衝撃、信じられないという気持ち、そしてほんの少しの……惨めな期待が浮かんでいた。梓の足は止まらなかった。歩く速ささえ、一瞬たりとも変わらなかった。彼
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