光は立ち上がり、裁判官をまっすぐ見据えながら、落ち着いた口調で主張を始めた。「裁判長。被告の帰国以前において、谷口氏との間に存在したのはあくまで法的な投資提携関係であり、共同の研究プロジェクトに基づくビジネス目的の正当な資金のやり取りに過ぎません。原告側が提出した証拠は、被告が帰国後、谷口氏と面識があったという事実にすぎません。帰国前からの不適切な男女関係があったという証明にはなりえず、これまでの正当な投資提携という合意を覆す根拠としても不十分です。したがって、本件対象となる金銭のうち、被告が帰国する以前に発生した分については、通常の投資取引として認定されるべきであり、無償贈与には当たりません。よって返還対象に含めるべきではないと主張します」光の主張を聞き終えると、凛は向かいに座る三人をまっすぐ見つめた。「つまり、あなたたちは不倫の事実自体は認めるということですね」智也は凛を見る。まさか、いつか二人が法廷で向かい合う日が来るなんて、想像したこともなかった。凛はもう、自分の言うことを何でも受け入れてくれる妻ではない。冷静に事実を突きつけてくる、元妻になってしまったのだ。凛を前にすると、智也は反論の言葉が出てこなかった。彼女に対して、罪悪感があるのだ。そして柚葉に対しても、同じように罪悪感を感じている。喉元を何か見えない力に締め付けられるようで、この法廷での対峙に、智也は一言も声を出せない。ただ、黙って認めるしかなかった。柚葉も、もはや言い返すことはできなかった。これだけの証拠が並んでいるのだから、写真は偽物だとか、お腹の子どもは智也の子ではない、なんて言えるはずがない。もしそんなことを言えば、周囲は自分をどう見る?そして、これから智也は自分との関係をどうするつもりなのだろう?自分は己の身体を傷つけてまで流産という結果を作り、智也の罪悪感を引き出した。そして、これから先も、自分が欲しいものを手に入れるためには、智也を縛り続けるしかない。すると、謙介が淡々と述べ始めた。「本件対象となる財産は、いずれも夫婦の共有財産です。被告小林柚葉が帰国した後、被告谷口智也が家庭生活の維持とは無関係に高額な財産を一方的に贈与した行為は、公序良俗に反するものであり、法的に無効です。また、被告小林柚葉は正当な対価なく財産を受け取っており、さ
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