美穂子は頷いてから、そのまま海斗にメッセージを送った。【凛さんは、今日は食事の時間が遅いみたいです。お腹が空いたら先に何か食べておいてくださいね】海斗が美穂子のメッセージを見たのは、ちょうど凛を迎えに行くために車に乗ったところだった。何のために出かけるのかと美穂子に尋ね、凛が一番町の物件の最終確認に行くと知った海斗は、ふと何か思いついたように目を細めた。運転手に指示を出す。「凛を会社で降ろしたあと、本邸へ行ってくれるか?」運転手は頷いた。南山ヒルズ9号棟に車が近づくと、運転手が智也を見つけ、後部座席の海斗に報告する。車が止まり、準備を終えた凛が出てきたところで、3人が鉢合わせた。いつもなら車の中で待っている海斗だったが、今日は車から降りて、凍てつくような眼差しを智也へ向ける。不愉快だ。「凛、お、おはよう」智也はぎこちなく凛に声をかけた。まるで、二人がまだ出会って間もない関係のようだった。しかし、凛は一瞥をくれただけで何も返さず、そのまま車に乗り込んだ。海斗もいつものように凛の後に続き、その大きな体で彼女を完璧に覆い隠す。智也は慌てて呼び止めた。「凛、今までのことは俺が悪かった。やり直そうとか、許してほしいなんて図々しいことは言わない。ただ……無視だけはしないでくれよ……」その哀願するような態度は、惨めでしかなかった。凛は智也を振り返り、冷たく言い放つ。「私の人生に、あなたはもう存在しないの」海斗も続いた。「まともな元夫なら、死んだ人間のように静かにしているものだ」智也の目が赤く染まる。「凛……」智也が切なげに凛の名前を呼んだが、何の返事もなかった。車が走り出した時、智也は大声を上げる。「凛!」叫び終わると同時に、涙がこぼれ落ちた。バックミラー越しに、どんどん小さくなっていく男の姿を見ていた運転手。智也は、まだ何か叫んでいるようだった。海斗が眉をひそめる。そして、凛にふと問いかけた。「凛。割れた鏡は、元通りに戻ると思うか?」落ち着いた声。しかし、その奥にはわずかな不安が隠れていた。なんと言っても、4年もの月日を共に過ごした相手。海斗は、その4年間を憎らしいほど羨ましく思っていた。海斗の言いたいことを察した凛はこう返す。「砕けた破片を必死にかき集めて貼り合わせれば、形
Read more