翼はまた仕事に戻っていった。電話を切る前、受話器越しに涼太の声が聞こえてきた。「ずっと凛さんからの電話はまだかって聞いてたくせに、いざ電話が来たら一言だけで切るんだから。本当、じいちゃんは気難しいね」しかし、翼は孫の文句など気にも留めず、さっさと電話を切った。梓もすぐに続ける。「佐野先生には一応報告しておきましたけど、先輩からも伝えてあげてください」「わかった」凛はすぐに克哉へと電話をかけた。凛から直接報告をもらった克哉は、ようやく肩の力が抜けた。次は、柑奈。ビデオ通話をかける。柑奈の隣にいる康平の姿も見えた。すっかり顔色が良くなっている。日和と梓が画面に顔を寄せ、凛と一緒に呼びかけた。「院長先生、こんにちは!康平くんも元気?」康平が目をくりくりさせ、「姉ちゃん」と言った。3人全員が映るように、凛はカメラの角度を調整する。「そうだよ、みんな姉ちゃんだよ」と優しく語りかけ、康平に薬は飲んでいるか、食事は取れているかと尋ねると、康平は素直に頷いた。再び柑奈の顔が映る。「千石先生と植田さんが帰る時に、裁判の話を教えてくれたの。勝ったのよね?」日和が声を上げる。「どうして勝ったことを知ってるんですか!」柑奈は笑って言った。「凛は良い知らせしか言わない子だからね。ビデオ通話までしてくるなら、きっと嬉しい報告だと思ったの」凛は頷いた。「はい。裁判所が不倫相手に全額返還を命じて、智也には財産分与をさせない判決を下しました」柑奈は智也という名前すら聞きたくない様子で、すぐに話題を変えた。「康平、もうすぐ退院なの」「良かったです」凛も頷く。「今度の連休、康平をこっちに呼んで、大きい病院で一度しっかり検査を受けさせようと思っています」「あなたに迷惑をかけない?」「ええ、もう自分の家がありますから。それに、連休には引越しを済ませるつもりですから」柑奈は安心したように頷いた。「そう、じゃあまた連絡して」それから、少し話をしてから電話を切った。拓海が補足する。「柊病院なら、国内の自閉症治療の権威を呼べると思いますよ」凛は返した。「その時になったらまた考えます」医療分野で本当に信頼できる専門家を探すなら、論文データベースで関連疾患の論文責任著者や研究チーム代表者を調べればいい。その分野の第一線で
Read more