勲は、たまらなく彩葉に会いたかった。その想いこがれる気持ちは、退院する瞬間、最高潮に達した。車が彩葉の暮らす邸宅の前に停まると、勲は何だか違和感を感じた。邸宅の周りにはたくさんの車が停まっていて、門は花や風船で飾られているのだ。嫌な予感がして、心臓が冷たくなる。よろめきながら車のドアを開け、勲はちょうど出てきたスタッフらしき人を捕まえた。そして、かすれた声で尋ねた。「今日、ここで何かあるんですか?」スタッフは不思議そうに勲を一瞥する。しかし、勲の様子があまりにも不憫に思えたのだろう、丁寧に質問に答えてくれた。「今日は中島さんと入江さんの結婚式ですよ。参列者の方ですか?でしたら、招待状を拝見させていただけますか?」結婚式……英樹と彩葉の……勲は、頭を鈍器で殴られたような目眩に襲われ、立っているのもやっとだった。彼は車のドアに手をつき、荒い息を繰り返す。あ、ありえない。なんで、こんなに早く?勲はスタッフを突き飛ばした。相手の制止も、後ろにいた運転手の驚きの声も聞こえない。狂ったように、邸宅の中へと走り出した。周りの参列者たちは談笑していて、時折、奇妙な目で勲を一瞥するが、すぐにまたお喋りに戻る。しかし、勲にはそんな視線を気にする余裕はなかった。彼は、正面に置かれた白いバラのアーチを、食い入るように見つめていた。音楽が鳴り始める。聞き慣れた、結婚式のあの曲だ。アーチの向こう側にある扉が開く。そこから、彩葉が現れた。勲は、思わず息を呑んだ。陽の光が、少し俯いている彩葉の純白のドレスに降り注ぐ。その手にはブーケが抱えられていた。そんな彩葉は、いつもと全く違って見えた。自分の前でいつも見せていた、あの怯えたような、どこか悲しげな表情ではない。少し緊張しているようだったが、それ以上に期待に胸を膨らませているように見えた。その瞳が、キラキラと輝いている。彩葉は英樹の腕を組み、ゆっくりとバージンロードを歩いた。黒のタキシードに身を包む英樹は、凛々しい表情でずっと彩葉のことを見つめている。しかし、その顔からは、隠しきれない喜びが溢れていた。勲は、二人が一歩、また一歩と自分の方へ近づいてくるのを、ただ見ていた。頭は真っ白になった。思考が停止し、ただ一つの事実だけが頭をよぎる――
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