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All Chapters of SWEET×SWEET: Chapter 61 - Chapter 70

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**** 翌朝、約束通りに啓太郎は、プリンを持って裕貴の部屋に立ち寄った。ついでに、数日ぶりに朝メシも食わせてもらうつもりだった。 ドアを開けた裕貴は、パジャマの上からいつもと同じカーディガンを羽織ってはいるが、頬に不自然な赤みもないし、全身から漂っていた倦怠感も抜けたようだ。「さっそく来たね」 そう言って裕貴は笑い、何より先に啓太郎の手からプリンが入った箱を受け取る。「お昼に食べよう」 啓太郎にさっさと背を向け、歌うように呟く裕貴に、思わず苦笑が洩れる。どうやら、完全復調のようだ。「おい、今朝はきちんと朝メシを食わせてくれよ」 啓太郎が声をかけると、くるりと振り返った裕貴がニヤリと笑う。「そう言うと思って、準備しておいた」 ダイニングに行くと、裕貴がいう通り、テーブルの上にはしっかりと朝メシが準備されていた。  今朝のメニューはチーズオムレツに、かぼちゃとベーコンのミルクスープ、温野菜サラダという組み合わせだけで感動的だが、そこに、ふかふかのパンケーキとカフェオレまで出されると、啓太郎はイスに腰掛けてこう洩らすしかなかった。「完璧だ……」 「おれが寝込んでいる間、啓太郎には貧しい食生活を送らせたからね。今日からその分を取り戻すよ」 「涙が出そうな言葉だな」 手を合わせてから啓太郎が食べ始めると、プリンを冷蔵庫に仕舞った裕貴は、自分の分の朝メシを準備して正面のイスに腰掛けた。「卵粥か?」 「まだ固形物食べられるほど、胃が元気じゃないからね」 これはこれで美味そうだと思いながらパンケーキを千切っていると、ゆっくりとレンゲを口に運んでいた裕貴が、ふいに上目遣いに見上げてくる。「これも食べたい?」 「……一口だけ味見させろ」 「意地汚いなあ。病み上がりの人間の食べ物まで奪い取るなんて」 「人聞きが悪いこと言うな」 裕貴はレンゲで卵粥を掬うと、芝居がかった露骨さで息を吹きかけて卵粥を冷ますふりをして、恭しく啓太郎の口元まで持ってきた。「はい、あーん」 「――……お前、俺を思いきりバカにしてるだろ」 「おれの愛情だって」 啓太郎は裕貴の手からレンゲを奪い取り、卵粥を味わう。病人食だと思っていたが、ダシは効いており、ほんのりとついた塩味のおかげで、何杯でも食べられそうだ。  何を作らせても上手い奴だと本気で思う。い
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 不安そうな顔をしながら裕貴が立ち上がり、電話の前まで行く。たかが電話が鳴っただけでどうしてこんな顔をするのか、啓太郎は不思議だった。「出ないのか?」 「う、ん……」 恐る恐るといった様子で裕貴は手を伸ばし、ゆっくりと受話器を取り上げた。電話機のディスプレイに番号が表示されるため、相手が誰なのわかっているようだ。  傍で見ていてもわかるほど、裕貴は緊張していた。「……もしもし」 硬い声で電話に出た裕貴の顔が見る間に強張る。一体何事だろうかと気になった啓太郎はイスから腰を浮かせるが、それに気づいた裕貴がこちらを見て、なんでもないと言いたげに小さく首を横に振った。  それから裕貴は受話器を抱えるようにして話し始めるが、やはり只事ではなかった。「なんで、電話してきたの。かけてくるなって、前に言ったはずだけど」 イスに座り直した啓太郎だが、電話の内容が気になって食事どころではない。ちらちらと裕貴の様子をうかがいつつ、パンケーキを小さく千切っては口に放り込む。「えっ、なんで知って――……。それは本当だけど、もう治ったよ」 話しながら裕貴は、苛立ったように何度も自分の髪を掻き上げ、口調もきつかった。それでいて表情にも声にも、戸惑いが滲んでいる。 かかってくるはずのない知り合いから電話がかかってきた、という状況は、他人である啓太郎にも察することができる。しかし相手が裕貴とどんな関係なのかまではわからない。おかげで、聞き耳を立てている啓太郎まで苛立ってくる。「心臓もなんともないよ。どうせおれのことを聞いたんなら、症状も全部聞けばよかったじゃないか。朝から……電話してくるぐらいなら。おれは、声を聞きたくなかった」 声を絞り出すようにして言った裕貴だが、電話の相手に何を言われたのか、数秒の間を置いてから動揺したように視線をさまよわせ、青白い頬にわずかに赤みが差した。「いまさら、そんなことおれに言ってどうするんだよ。……もう用は済んだだろ」 受話器を置いた裕貴が大きく息を吐き出す。極度の緊張から解放されたような姿に、たまらず啓太郎は尋ねた。「電話、誰だ? お前のことをよく知っている人間みたいだったけど」 「……そうだね。嫌になるほど、おれのことをわかってる人だよ」 裕貴は、電話の相手が誰なのか具体的なことは言わなかった。聞かれたくないのだと察した啓
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 横目でちらりと、テーブルの上に置いた貯金箱を見る。相変わらず順調に金は貯まり続けており、この金で裕貴一人ぐらいなら優雅な国内旅行ができるはずだ。 もっとも、引きこもりの裕貴がそんなことを計画するはずもない。 食べ終えた啓太郎は財布を取り出して貯金箱に朝メシ代を入れると、立ち上がってジャケットとコートを着込む。そんな啓太郎を、ホットミルクを啜っていた裕貴が見上げてきた。「啓太郎、今日は帰ってこられる?」 こういうことを面と向かって聞かれたのは初めてで、啓太郎は目を見開く。  晩メシの下ごしらえがあるからと、メールでは当然のようにやり取りすることはあるのだが、実際に裕貴の口から問われると妙な新鮮さと照れ臭さがあった。まるで、新婚夫婦や同棲カップルが交わすような会話だ。「……今から晩メシの準備を始めるのか」 思わず真顔で尋ねると、裕貴は微苦笑を浮かべる。「啓太郎って、食べることしかないわけ?」 「違うっ。お前がいきなり聞いてくるからだ。いつもは朝、そんなこと聞かないだろ」 ふいに裕貴は真剣な表情となり、すがるような眼差しで啓太郎を見つめてきた。「今日は……帰ってきてよ」 「裕貴……?」 「一緒にメシ食おうよ」 こんなふうに言われて、嫌とは答えられなかった。例え芝居だとしても、今の裕貴には放っておけない頼りなさがある。  さきほどの電話が、裕貴の中に大きな変化をもたらしたのだ。 電話の相手を聞きたい衝動をぐっと堪えて、啓太郎は裕貴の頭を乱暴に撫でた。「帰ってはくるつもりだけど、何時になるかわからないぞ。日付が変わるかもしれない」 途端に裕貴はパッと表情を輝かせる。「いいよ。待ってる」 啓太郎はこの瞬間、くらりと目眩を覚えていた。裕貴の反応が愛しかったのだ。  可愛いなどという生ぬるい表情では足りない。忌々しく感じながら啓太郎は、表情を和らげた裕貴を見つめる。 忌々しくも、愛しい生き物を――。** 裕貴に『帰る』と約束したこともあり、啓太郎はこの日、なんとかがんばって早めに会社を出ることにした。早めとはいっても、外はすっかり日が落ちてしまっている。  社員の数人が会社に泊まり込んでいる中、帰る準備をするのはなかなか勇気が必要だが、今日のような日のために、誰よりも会社に泊まり込んでサウナ通いをしていたと思えば、感じる罪悪感
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 街灯や、マンションのエントランスからの照明に照らし出されるその人物の姿は、ひどく印象的だ。何をするでもなくただ佇んで、マンションを見上げているのだ。格好や物腰に少しでも問題があれば不審者だろうが、その人物は様子が違った。 啓太郎と同じぐらいの長身に、いかにも仕立てのいいスーツを着た男で、その上に羽織った同じぐらい物のよさそうなコートが風に揺れている。スッと伸びた背筋と体躯のよさもあり、ただ佇んでいる姿が様になった。  向けられている横顔だけ見ても、かなり整った容貌の持ち主だと知れる。啓太郎はどちらかといえば気安い感じがする外見だが、男は対照的に、近寄りがたさを放っていた。怜悧で、いかにも切れ者然としており、鋭い目をしている。表情らしい表情はないが、翳りのようなものが漂っていた。 年齢は啓太郎より少し上ぐらいの、やけに印象的な男――。 一体何者だろうかと思いながら男の側を通りかかった啓太郎だが、ハッとして、男が見上げる先に視線を向ける。単なる思い込みかもしれないが、裕貴の部屋の辺りを見ているような気がした。  視線を感じたのか、男が静かに啓太郎を見る。横顔から感じたとおり、やはり整った顔立ちをしており、それが過ぎて酷薄そうですらある。 啓太郎と目が合った男は、何も言わず軽く会釈をして歩き始めた。  すれ違う瞬間、威圧的なものを感じる。踏ん張っていなければ、見知らぬ男のために危うく道を開けそうだった。 振り返り、男の姿が消えるまで見送った啓太郎は、急いでエントランスへと駆け込む。なぜだか、男のことをすぐに裕貴に報告しなければならない気がした。 勘違いにせよ、本能にせよ、啓太郎の直感が告げるのだ。あの男は危険だと。 乗り込んだエレベーターの扉が五階で開くとすぐに飛び出し、裕貴の部屋のインターホンを何度も鳴らす。  驚いた顔でドアを開けた裕貴は、パジャマの上からいつものカーディガンを羽織っていた。「どうかした? 啓太郎……」 裕貴の顔を見た途端、啓太郎の中で張り詰めていたものがプツリと切れる。思いきり肩を落として、大きく息を吐き出した。「いや……、お前が朝、らしくないこと言うもんだから、心配だった」 「優しいなあ、啓太郎は」 からかうように言われ、啓太郎の顔は熱くなってくる。今になって、自分は何をあんなに慌てていたのだろうかという気になっ
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「残念だけど、お前みたいに『可愛い』男の子じゃなかったぞ」 「……嫌味ったらしい。おれだって本気で言ったんじゃないんだから……」 「いやいや、お前は本当に可愛いぞ」 今度は本気で背を殴りつけられたので、裕貴をからかうのはそこまでにしておく。怒らせると、晩メシも食わせてもらえないまま、部屋から叩き出されそうだ。 開けた缶ビールを一口飲んでから、啓太郎はマンションの前で見かけた印象的な男の姿を脳裏に蘇らせる。「――可愛くはなかったが……やたらイイ男だったな。俺みたいに」 裕貴から思いきり冷たい眼差しを向けられた。さきほどの仕返しのつもりらしい。「冗談だ」 「遠慮しなくていいよ。啓太郎はイイ男なんだから」 可愛くない、と口中で呟いてから、不毛な嫌味の言い合いを終わりにして、話を戻す。「スーツを着てた。年は、俺より少し上……、三十を少し出たぐらいだったな。イイ男というのはおいといて、やたら迫力があるんだ。そんな男が一人でマンションの前に立って、じっと部屋を見上げてるんだから、やっぱり気になるだろ?」 キッチンに戻ろうとしていた裕貴の足が止まり、ぎこちない動きで啓太郎を振り返った。 心なしか、顔が少し強張っている。どうかしたのか尋ねようとした啓太郎より先に、裕貴は思いきったように尋ねてきた。「……その人、部屋を見上げてたって、本当……?」 言い様のない不安が足元から這い登ってくる。この瞬間になって、裕貴に言うべきでなかったと啓太郎は後悔したが、もう遅かった。「ああ……。なんとなく、お前の部屋の辺りを見てるような気がした。前に、お前の部屋の前に女が来てたときの印象があるから、単に俺の思い込みかもしれないが」 目に見えてそわそわと落ち着きをなくした裕貴は、何かを思い出したように急いで隣の部屋へと行き、窓を開けた。冷気がダイニングまで流れ込んでくるが、かまわず裕貴はベランダへと出てしまう。  啓太郎も立ち上がり、隣の部屋へと行く。裕貴は、暗くてよく見えないはずなのに、手すりから身を乗り出すようにしてマンションの下を見ていた。その姿は必死で、どこか怯えているような――それでいて、待ちかねているようにも見え、啓太郎を複雑な気持ちにさせる。 マンションを見上げていた男に、裕貴は心当たりがあるのだろう。実際そうなのかどうかは問題ではなく、裕貴が心を乱し
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 一度疑念を抱くと、何もかもが嫉妬を煽る燃料になる。「知っている男かもしれないのか?」 なるべく静かな口調で問いかけると、やっと裕貴は振り返った。困ったような顔で曖昧に首を動かした。「わからない……。でも、今朝電話があったから、もしかして、と思ったんだ」 あっ、と啓太郎は声を洩らす。「今朝の電話って、俺がいるときにかかってきたやつか?」 「ずっと電話なんてしてこなかったのに、急にかかってきたから……怖かった」 視線を伏せた裕貴は、やっと寒さに気づいたように肩をすくめ、部屋に戻る。窓を閉めてから、隙間なく厳重にカーテンも閉めた。向けられた背が不安を物語っているように見え、たまらず手を伸ばした啓太郎は、慎重に裕貴の後ろ髪に触れ、撫でる。 肩に手をかけ、そっと引き寄せると、裕貴のほうから身を寄せてきた。柔らかな髪に唇を埋めながら啓太郎は、裕貴が怖がっている相手が誰なのか尋ねたくて仕方ない。しかし、裕貴が着ているカーディガンに視線を移した瞬間、大事なのは『誰か』ということではないと知る。  大事なのは、裕貴がその相手とどんな関係を持っていたかということだ。 腕の中の裕貴の感触に、強い独占欲を覚える。誰にも触れさせたくないと思いながらも、すでに誰かが触れているのかもしれないという考えが頭から離れず、啓太郎の心を揺さぶった。「啓太郎……?」 肩にかけた手に力を込めると、不安そうに裕貴が顔を上げる。啓太郎は乱暴に不揃いな髪を掻き上げてやってから、裕貴の目を覗き込んだ。  裕貴もじっと啓太郎の目を見つめ返していたが、啓太郎の目にどんな感情が宿っているのかわかったのか、小さく笑った。「……啓太郎、怖い顔してる」 「怖いか?」 「啓太郎は優しいから、怖くない」 それが世辞なのか、本当に裕貴がそう思っているのか、啓太郎には判断がつかない。感情表現が素直なようでいて、裕貴は気持ちを隠すのが巧い。だからこそ啓太郎は、翻弄されてしまうのだ。 誘われるように裕貴の唇を塞ぐと、もう止まらなくなる。啓太郎は夢中で裕貴の唇を貪り、口腔に舌を差し込んで舐め回す。唾液を交わし合うことすら抵抗ないほど、裕貴とのキスは啓太郎に馴染んでいた。  そんなキスを、裕貴が他の人間とも交わしていたのかもしれないと考えると、嫉妬の苦しさに胸を掻き毟りたくなる。 嫉妬の原因の一つで
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「怖いというより――……、不安なのかもしれない」 「何がだ。俺がいるなら、ストーカーも誰も、入ってこられないだろ」 パジャマを脱がせながら裕貴の首筋に軽いキスをすると、背に回された両手にきゅっとワイシャツを握り締められた。「……おれ、今の生活気に入ってるんだ。一人で家にずっと閉じこもったままで、誰とも話さないでいるのは楽だったけど、それでも寂しくなかったのかって言われたら、多分寂しかったんだと思う。だけど、誰でもいいから話し相手になればいいのかって言えば、そうじゃない。隣に住んでいるのが啓太郎でよかったと思う」 裕貴の言葉に啓太郎の胸の奥がくすぐったくなる。剥き出しにした白い肩先に唇を押し当て、軽く歯を立てると、ピクリと裕貴は体を震わせた。「おれは、啓太郎込みの生活が気に入っているし、心地いいんだ。だから誰にも邪魔されたくない」 「邪魔しそうな奴がいるのか?」 啓太郎が顔を上げると、裕貴は楽しそうに笑いながら頬にてのひらを押し当てる。「――啓太郎、顔怖い」 肝心なところではぐらかされ、啓太郎としては眉をひそめるしかない。すると、裕貴に頭を引き寄せられ、唇を吸われた。  普段は長い前髪に隠れがちな裕貴の目が、しっかりと啓太郎を見上げている。勝ち気で挑発的なのに、どこか臆病さも潜んでいる目だ。 裕貴を怯えさせないよう、啓太郎は額や頬に丁寧なキスを繰り返し、最後に唇に触れる。舌先を触れ合わせてからゆっくりと絡め、言葉の代わりに官能的なキスを交わす。 胸元にてのひらを這わせると、シーツの上で裕貴が体をしならせ、啓太郎は反らされた喉元に唇を這わせた。すると裕貴の手が今度は啓太郎の喉元に這わされて何事かと思うが、もどかしげにネクタイを解き始めた。  ネクタイが抜き取られ、ワイシャツのボタンを外されていく。しかし啓太郎のほうが焦れて耐えられなくなり、一度体を起こして自分でワイシャツのボタンを外して前を開いた。 抱き合って感じる裕貴の素肌の感触が心地よく、それ以上に異常な興奮を呼び覚まし、一気に頭に血が昇る。裕貴に触れると、いつもこうだった。 片手で裕貴を掻き抱きながら、もう片方の手でパジャマのズボンを乱暴に下ろして脱がせてしまう。裕貴のものに触れることに、とっくに抵抗はなくなっていた。むしろ、いくらでも触れて歓喜の涙を流させていたいと思うほどだ。
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「あぁっ、あっ、あっ、くうっ……ん」 もう片方の胸の突起に顔を寄せ、舌先でくすぐるようにして舐めてから口腔に含む。「あんっ」 裕貴が甲高い声を上げ、ビクンと体を震わせる。啓太郎はきつく突起を吸い上げては、舌先で甘やかすようにくすぐることを繰り返し、指で敏感にしたほうの突起にも同じ行為を施した。 その間も刺激し続けた裕貴のものの先端は、濡れていた。透明なしずくを滲ませるたびに、啓太郎は指の腹で撫でるようにして先端に塗り込めていく。「啓、太郎……、気持ち、いぃ――。そうされるの、好き」 「だったら、もっと感じている姿を見せてくれ。俺は金を払って、お前が感じている姿を見ようとしているんだ。お前には、そんな俺にサービスする義務がある」 「……変な理屈」 裕貴の呟きに小さく噴き出した啓太郎だが、すぐに表情を引き締め、裕貴に快感を与える作業に没頭する。実際、裕貴に触れているのが楽しいのだ。それに、肉体の愉悦に浸る裕貴の様子を見ていると、精神的な愉悦が啓太郎の中に生まれる。  決して、奉仕という気持ちのみで裕貴に触れているわけではない。 反り返った裕貴のものの形をなぞった啓太郎は、さらに柔らかな膨らみへと手を伸ばし、優しく揉み込むようにして愛撫する。  新たな刺激に裕貴は息を詰め、顔を背けながら啓太郎の肩にしがみついてきた。「痛くないか?」 尋ねると、裕貴はやっとこちらを向いてくれ、困ったように笑った。「最初、啓太郎に気をつかってたのがバカみたいだ」 「なんのことだ」 「男の体に抵抗があるだろうから、あまり意識させないようにしよう、って」 「……そういやお前、最初の頃はがんばってたな」 「それが今では、こういうとこまで触れるようになって――」 裕貴の息遣いが弾む。啓太郎が、柔らかな膨らみの中にあるものを暴こうと、指を蠢かし始めたからだ。  刺激が強すぎるらしく、裕貴は両足を閉じようとしたが、すかさず啓太郎は左右の膝に交互に唇を押し当てて動きを止める。「やっ、啓太郎っ……」 「痛くないだろ?」 その証拠に裕貴のものの先端からは、どんどん透明なしずくが溢れ出し、滴り落ちていく。  指を動かしながら啓太郎は、裕貴の顔を見下ろす。乱れた髪が頬にかかり、目には涙が滲んでおり、頬も紅潮していた。 もっと裕貴を乱れさせるにはどうすればいいのか
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「知識としては、わかっていたんだけどな。だけど、お前のここにまで触れるつもりはなかった。それが、俺たちの関係の境界線だと思っていたからだ。だけど最近は……、要領も何もわかってない俺が触れて、お前を傷つけたり、痛い思いをさせるのが怖かった」 そのはずだったのに今は、とにかく裕貴のすべてに触れたくて仕方なかった。そうでなければ啓太郎の欲望は鎮まらない。 裕貴が滴らせたもので濡れた指で、啓太郎は内奥の入り口を慎重にまさぐる。見る間に裕貴の全身は羞恥の赤に染まっていき、ぎゅっと目を閉じたまま啓太郎の手を押し退けようとするが、啓太郎は諦めなかった。「俺のことなら気にするな。抵抗があるなら、自分から触れたりしない。それに、優しくする。不安なら、お前がやり方を教えてくれ」 「そんなことっ……、自分の口で言えるわけ、ないだろ」 「なら、俺が思うとおりにしていいんだな?」 涙目で睨みつけてきながら裕貴は言った。「――優しくしてくれないと、嫌だ……」 この瞬間、啓太郎の胸の奥で激しい感情の嵐が吹き荒れる。たまらなく裕貴が愛しいという気持ちだ。  こいつは特別な存在なのだと、心と体で痛感していた。 裕貴の髪を撫でてやってから唇を塞ぎ、啓太郎は口腔に舌を侵入させる。すぐに裕貴が舌を絡ませてきた。  音を立てて裕貴の舌を吸ってやりながら、内奥の入り口を刺激して解していく。頑なな蕾のようでもある裕貴の大事な場所は、どんな愛撫すら受け付けないように感じたが、そうではなかった。  啓太郎が触れれば触れるほど、少しずつ柔らかくなっていくのだ。 自分の唾液をたっぷり指に絡めてから、内奥の入り口を湿らせる。とにかく裕貴に苦痛を与えないようにと、啓太郎は必死だった。  花が綻ぶように、裕貴の内奥の入り口が鮮やかに色づいてくる。それを確認した啓太郎は、裕貴の表情の変化に細心の注意を払いながら、ゆっくりと一本の指を侵入させる。「あっ……」 裕貴が小さく声を上げて頭上の枕を掴む。啓太郎は慌てて顔を覗き込んだ。「痛いか?」 「……啓太郎、おれはガラス細工で出来てるわけじゃないんだから、そんなに気をつかわなくて大丈夫だよ。痛かったら、そう言う。それに、ゆっくりしてくれるから、平気」 裕貴の微笑みに促されるように、指を押し込む。すると、ただでさえ狭い場所だというのにきつく締め付
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 啓太郎は裕貴の腰を引き寄せて両足を抱え上げると、本格的に裕貴の内奥を暴き始める。  熱く湿りを帯び、吸い付くようにまとわりついてくる粘膜と襞をまさぐりながら、指を出し入れして擦っていく。「んっ、んっ、んあぁ――……」 きつく締め付けてくるだけだった裕貴の内奥だが、少しずつ様子が変わってくる。啓太郎の指の動きに合わせたようにひくついている。「裕貴、つらくないか?」 低い声で尋ねると、目を開いた裕貴が微笑む。「平気」 「なら、気持ちいいか?」 「――……うん」 こう言われた瞬間の気持ちはきっと、舞い上がる、と表現できるのだろう。だが同時に頭の片隅では、裕貴に対して誰かが、同じような行為をしたことがあるのではないかと考えてもいた。  裕貴への愛しさが強くなればなるほど、姿の見えない、いるのかいないのかさえわからない相手に対して、狂おしい嫉妬を抱いてしまう。「啓太郎」 何かに気づいたように啓太郎を呼んだ裕貴が、頬に両手を押し当ててきて、慈しむように撫でてくる。それだけで、胸の奥から湧き起こりかけていたどす黒い感情がスッと消えていくようだった。 内奥が物欲しげに指を締め付け、さらに奥へと呑み込もうとする。啓太郎は指を出し入れするだけでなく、中で捏ね回すように動かす。裕貴が腰を揺らして呻き声を洩らした。  感じているのだとわかり、ここで啓太郎は行動を起こす。内奥に含ませた指をもう一本増やしたのだ。「あっ、あぁっ――」 甲高い声を上げて裕貴が身をよじろうとするが、二本に揃えた指で内奥深くを突き上げるようにして動かすと、喉を反らして深い吐息を洩らし、ただ腰をビクビクと震わせた。  啓太郎は繊細な部分を傷つけないよう気をつけながら、内奥を掻き回し、締め付けを堪能するため指を出し入れする。 啓太郎が要領をえてきたように、裕貴も内奥での愛撫に慣れてきたようで、淫らに腰をくねらせ、体をしならせる。そんな裕貴の姿を見ていることに、啓太郎はたまらない精神的な快感を覚えるのだ。 内奥で指を動かし続けながらもう片方の手で、さきほどから啓太郎の望み通りに歓喜の涙を滴らせている裕貴のものを包み込んで擦り上げる。「んあっ」 苦しげに裕貴が首を左右に振り、必死に両手を伸ばして啓太郎の腕に爪を立てた。「あっ、あっ、啓太郎っ……、もう、ダメ、だよ……」 「ああ
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