**** 参った、と心の底から嘆息し、啓太郎は会社のプロジェクトルームで頭を抱えていた。 進捗報告会議のため、朝のうちに常駐先の会社に顔を出してから、本来自分が勤めている会社にやってきたのだが、会議に顔を出した上司の顔を見たときから、嫌な予感はしていたのだ。 営業畑一筋でやってきたという上司は、当然のようにプログラムの知識が皆無に近い。それでプロジェクトの進行を決めているのだから、SEやプログラマにしてみれば、迷惑以外の何者でもない。「この状況で、どうやってサブシステムまで回せっていうんだ……」 一人でぶつぶつと呟きながら、テーブルの上を片付けていく。とりあえず、二日後にまたミーティングでここを訪れなければならないので、そのときまでに提案書をまとめて提出しなければならないだろう。 今のうちに手を打っておかなければ、システムと共に――。「心中だな」 啓太郎が洩らした不吉な言葉に、同僚が気づかうような視線を向けてくる。 本来の自分のデスクに戻ると、必要な書類を掻き集めてファイルに突っ込む。それから外注先の会社に連絡して、スケジュールの確認を取る。必要なテスト要員を指名して、なんとか仕事を頼み込んで承諾してもらう。 この際、予算が膨れ上がるとか言っていられないのだ。 それだけのことを手早く済ませた啓太郎は立ち上がると、フットワークも軽く上司の元に行き、必要な決裁をもらいに行く。 それからすぐに、常駐先の会社へと向かう。結合テストが近いので、作業も何度目かの追い込みに入っており、正直、ただの進捗報告会議ぐらいで会社にやって来るのも面倒だ。 もちろん、会社でこんな本音を洩らすことはできないが。 なんにしても、これで今日、帰宅できないのは確実だろう。ハンドルを握りながら、啓太郎は深くため息をついた。 サウナに行って、とりあえずさっぱりしてシステム開発部に戻ってきた啓太郎は、心底うんざりしていた。 啓太郎と同じく、泊まり込んでいる社員の疲れきった顔を見ていると、心なしかシステム開発部全体の空気が澱んでいるように感じる。空調はしっかり効いているはずなのに。「調子はどうだ」 声をかけると、ワイシャツ姿となって袖を捲り上げた男性社員が、イスごと体の向きを変える。向けられた表情は、状況を雄弁に物語っていた。「バグが千を越えた……」
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