ファルサーは、ようやくその場所へ辿り着いた。 まともな登山道も無い山は、全体は剥き出しの岩ばかりだったが、その道なき道を登り切ると急に草地が広がっていた。 そしてその向こうには、町で教えられた通りの岩壁が聳えている。 登ってきた岩場を振り返って見ると、遥か眼下には町から四方に伸びるリボンのような街道と、青い湖が一望出来た。 大きく深呼吸してから隆起した岩壁の傍に歩み寄り、今度は重なった岩襞を根気よく探る。 するとこれもまた町で教えられてきた、洞窟への入り口を見つけることが出来た。 洞窟はなだらかに下降していて、奥のほうまで外の光が差し込んでいる。 これならば、松明を用意せずともかなり先まで進めそうだ。 二十代になったばかりのファルサーは、色の濃い金髪と同じように色の濃いロイヤルブルーの瞳をしていて、大柄で筋骨逞しい、見るからに戦士と解る男だ。 容貌は精悍で覇気に溢れているが、身に付けているのは安価な革鎧と革ベルトで、腰に下げているグラディウスも含めて全体に質素である。 なんの恐れも持たず、迷いもなく、ファルサーは洞窟へと踏み込んだ。 先で真っ暗になったら明かりを用意しようと考えながら進んだのだが、洞窟の長さは外の明かりが届かなくなる手前で終わっていて、そこにはその場に全く不釣り合いな扉があった。 鉄枠が岩壁にしっかりと嵌っていて、木製の扉の中央には重そうなドアノッカーが付いており、鉄枠の少し上のところに〝Lunatemis〟と文字が刻まれている。 そして、ノッカーの丸い手すりには〝ご用件の方は中へ〟と書かれた木製の札が下げてある。 その違和感だらけの状況に顔をしかめたものの、ファルサーは洞窟に入った時と同じように、怯まず扉の取っ手に手を掛けた。 彼は、麓の湖の真ん中にある島に行かねばならなかった。 しかし、湖には船着き場の残骸のような場所があるだけで、小舟すら浮かんでいない。 もっともそれは、当然のことだと思った。 湖の島には強大なドラゴンが棲み着いていて、町の者は誰も近寄らないからだ。 だが、自分はどうしてもあの島へ行かねばならない。 どうしたものかと湖岸で思案をしていたら、その姿を不審に思ったらしい老爺に声を掛けられた。 詳細を語らずに、ただ「島に渡りたい」と言ったファルサー
Last Updated : 2026-03-22 Read more