All Chapters of 「夫の子を妊娠したのは親友でした。」: Chapter 31 - Chapter 32

32 Chapters

第31話 罰を待つ男。

「美咲に何かあったの?拓也さん」 にっこりと笑う沙織に、俺は強く言葉を返した。 「美咲のお義父さんが倒れたって連絡があった!!今は構ってやれない!お願いだから邪魔しないでくれ!!」 その瞬間...... 沙織の表情が、はっきりと歪んだ。 「......美咲の話はしないでって言ったよね!!」 張り裂けるような声で叫ぶ沙織 その目は、まるで笑っていなかった。 背筋に、ぞわりとした寒気が走る。 ......なんなんだよ。 どうして、こんな時にそんなことが言える。 胸の奥に、焦りと同時に言いようのない違和感が広がっていく。 そして初めて―― 俺は沙織を“疎ましい”と感じた。 けれど、それは同時に自分自身への嫌悪でもあった。 美咲を裏切っているのは、俺だ。 この状況を招いたのも、全部......俺自身。 だったら、これは当然の報いなのかもしれない。 ここで取り乱せば、全てが終わる。 分かっているのに、胸の奥で何かが、ゆっくりと黒く濁っていく。 愛情だったはずの感情が、形を失い、“執着”へと変わっていく。 ......それを、俺ははっきりと自覚していた。 「......ごめん。悪かった。気が動転してた」 「うん……ならよかった」 何事もなかったかのように、沙織は俺に抱きついてきた。 その腕の力が、やけに強い。 俺は、それを振り払えなかった。 むしろ.......抱きしめ返してしまった。 これから起きることをもう考えたくなかった。 そして沙織と2人、美咲との自宅に向かう...... 移動中に改めて現状を話すと、沙織は迷いなく言った。 「美咲は実家に行ったってこと?私たちがずっと一緒に いれるチャンスじゃん!」 そして、続ける。 「せっかく邪魔な美咲がいないんだよね?なら私は何も我慢することはなくない?」 「.......」 「そしたら、二人でもっと一緒にいれるしちゃんと私もアリバイ作り協力するからさ」 無邪気に笑うその顔が、どうしようもなく怖かった。 ......もう俺には、止められない。 ごめん。美咲…… 「まずはさ、私が美咲に用事があって帰宅途中の拓也さんに声をかけたことにしよう!」 その提案に、頷くしかなかった。
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第32話 悪魔の証明。

ポケットの中で、スマホが震えた。 画面に表示された名前に、一瞬だけ呼吸が止まる。 沙織。 嫌な予感がした。 震える指でメッセージを開く。 そこに書かれていたのは... 「そろそろ美咲との結婚記念日だよね?。妬いちゃうの嫌だから私への愛を証明してもらいたいなー。」 その一文を見た瞬間、頭の奥で何かが崩れ落ちる音がした。 .......逃がしてはもらえないのか。 俺は、沙織にメッセージを送る。 「結婚記念日?覚えてないな......証明って何をしたらいい?」 すぐに返信が来る。 「あんなに愛し合った場所に美咲が帰ってくるなんて...... なんか嫌だからさ。今度はテレビ電話繋いで互いにするの」 「馬鹿な事言うんじゃないよ。流石にそれはまずいって」 「拓也さんは我慢できるんだ......あんなに2人で愛し合ってたのに.......」 「わかった!わかったから!美咲が寝てからでも.......」 「嫌、私がしたい時に私が連絡するから!じゃあまたね」 沙織からのメッセージは止んだ。 なんて馬鹿げた事を言い出すんだ。 でも... これは、全部俺が招いた結果だ。 元より逃げ場なんて、どこにもない。 美咲の笑顔が、脳裏に浮かぶ。 あいつは何も知らないまま、俺を信じている。 ......なのに俺は。 「美咲……本当に、ごめん……」 誰に向けるでもない謝罪が、小さくこぼれた。 震える指で、沙織に返信を打つ。 「わかった。言う通りにする。連絡待ってるよ」 送信ボタンを押した瞬間、取り返しのつかない現実が、確定した。 .......それから。 俺は仕事を理由にして、 美咲との接触を意図的に避け続けた。 届くメッセージには、最低限の返事だけを返す。 「いつもお仕事お疲れ様」「まだ残業してるの?」 「頑張りすぎないでね」 そのどれにも、曖昧な言葉でしか返せない。 ......わかってる。 最低だってことくらい。 でも...... 正直に言えば。 もう、美咲とも沙織とも関わりたくなかった。 こんな事態にしたのも自分の所為だ。 「わかった...」なんて言ったくせに、現実から目を逸らしているのは... 他でもない、俺自身だった。 明日バレてもいい…… そんなヤケになった自分を、どうにかやり過ごす。 最低限
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