私の名前は、高橋美咲。 三年前、高橋拓也と結婚した。 郊外に建てられた新築一戸建て。それは、結婚祝いとして父が贈ってくれた家だった。 拓也は、新卒で入社した商社で毎日遅くまで働いている。 忙しくても優しくて、私はそんな彼を尊敬していた。 不自由のない毎日。穏やかで、静かで、幸せな結婚生活。 ……そう、思っていた。 だけど。ただ一つだけ、私の中で、埋まらないものがあった。 私は、拓也との子供が欲しかった。 結婚して一年が過ぎた頃、私は一度だけ、その気持ちを彼に伝えたことがある。 「今は仕事に集中したいんだ。ごめん」 困ったように笑いながら、拓也はそう言った。 責めるつもりなんて、最初からなかった。 だから私は、「そっか」と笑って引き下がった。 ……でも。 その日からだった。 拓也が、子供の話を避けるようになったのは。 気付けば、最後に拓也に抱かれたのは―― もう一年以上も前になる。 それでも私は、拓也のことを愛していた。 そして明後日は、私たちの結婚記念日。 だから私は、ちゃんと気持ちを伝えようと思っていた。 あなたが、そばにいてくれるだけでいい。 子供は、いつか授かれたらそれでいい。 もし負担になるなら、私は待つから。 ちゃんと、拓也の隣にいられるなら、それで良かった。 そして―― 結婚記念日当日。 私は朝から、少しだけ浮かれていた。 拓也を仕事へ送り出した後、料理の準備を始める。 ちゃんと私の気持ちを伝えるんだ。 拓也が大好きなメニューで食卓を埋めていく。 拓也の喜ぶ顔を想像すると、自然と頬が緩んでしまう。 食卓には花を飾って、少しだけ豪華な料理を並べた。 準備は完璧だった。 あとは、拓也が帰ってくるだけ。 それでも、私は待ち続けた。 けれど、彼が来ることはなく、メッセージ一通さえ届かなかった。 21時。 まだ、帰ってこない。 22時。 不安になって、メッセージを送る。 『まだ残業してるの? 帰り道で何かあったんじゃないかって、すごく心配してるよ』 既読は、つかなかった。 23時。 本当に、どうしたんだろう。 残業だとしてもさすがに遅すぎる気がする。 心配だけが、どんどん募っていく 何度画面を見ても、既読はつかない。 「......電話してみようかな」 そう呟いて携
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