LOGIN「あなたの旦那さんの子、できちゃった」 親友にそう告げられた瞬間、私の世界は壊れた。 しかもその理由は―― 「だって、美咲産めないじゃん」 夫と親友。 一番信じていた二人に裏切られた私は、静かに決めた。 もう、許さない。 愛も、人生も、未来も―― 全部、奪い返す。
View Moreポケットの中で、スマホが震えた。 画面に表示された名前に、 一瞬だけ呼吸が止まる。 沙織。 嫌な予感がした。 震える指でメッセージを開く。 そこに書かれていたのは... 「拓也……生理来ないんだよね。」 その一文を見た瞬間、 頭の奥で何かが崩れ落ちる音がした。 ……ああ、そういうことか。 今までの沙織の異常な執着も、 あの歪んだ笑顔も、 全部、この瞬間に繋がっていたんだ。 でも... これは、全部俺が招いた結果だ。 逃げ場なんて、どこにもない。 美咲の笑顔が、脳裏に浮かぶ。 あいつは何も知らないまま、 俺を信じている。 ……なのに俺は。 「美咲……本当に、ごめん……」 誰に向けるでもない謝罪が、 小さくこぼれた。 震える指で、沙織に返信を打つ。 「……責任は取るから」 送信ボタンを押した瞬間、 取り返しのつかない現実が、確定した。 ......それから。 俺は仕事を理由にして、 沙織との接触を意図的に避け続けた。 届くメッセージには、 最低限の返事だけを返す。 「大丈夫?」 「いつ会える?」 「ちゃんと考えてる?」 そのどれにも、 曖昧な言葉でしか返せない。 ……わかってる。 最低だってことくらい。 でも...... 正直に言えば。 もう、関わりたくなかった。 あの一言を送ったくせに、 “責任を取る”なんて言ったくせに、 現実から目を逸らしているのは... 他でもない、俺自身だった。 明日バレてもいい…… そんなヤケになった日々を、どうにかやり過ごす。 最低限の生活。 美咲が作ってくれるご飯も、 最近は味がしない。 それでも俺は、 嘘を上塗りしながら生きていた。 そんな日々が続いていた――ある日。 美咲が、妙なことを言い出した。 その日、俺は沙織の家に少しだけ顔を出し、 自宅へ戻った。 「ただいま……」 キッチンから顔を出した美咲が、柔らかく笑う。 「おかえり。いつもお疲れ様」 「……あれ、起きてたの?」 「うん。ちょっとだけ。 拓也の顔見てから寝たくて」 「無理すんなよ……ありがとな」 「ご飯、温める?」 「……軽くでいいや」 いつも通りの会話。 いつも通りのはずなのに―― どこか、空気が違った。 「……やっぱり今日も、遅か
「美咲に何かあったの?拓也さん」 にっこりと笑う沙織に、俺は強く言葉を返した。 「美咲が倒れたって連絡があった!! 今は構ってやれない! お願いだから邪魔しないでくれ!!」 その瞬間...... 沙織の表情が、はっきりと歪んだ。 「……美咲の話はしないでって言ったよね!!」 張り裂けるような声。 その目は、まるで笑っていなかった。 背筋に、ぞわりとした寒気が走る。 ……なんなんだよ。 どうして、こんな時にそんなことが言える。 胸の奥に、怒りと同時に 言いようのない違和感が広がっていく。 そして初めて―― 俺は沙織を“疎ましい”と感じた。 けれど、それは同時に 自分自身への嫌悪でもあった。 美咲を裏切っているのは、俺だ。 この状況を招いたのも、全部......俺自身。 だったら、これは当然の報いなのかもしれない。 ここで取り乱せば、全てが終わる。 分かっているのに、 胸の奥で何かが、ゆっくりと黒く濁っていく。 愛情だったはずの感情が、 形を失い、“執着”へと変わっていく。 ……それを、俺ははっきりと自覚していた。 「……ごめん。悪かった。気が動転してた」 「うん……ならよかった」 何事もなかったかのように、 沙織は俺に抱きついてきた。 その腕の力が、やけに強い。 俺は、それを振り払えなかった。 むしろ.......抱きしめ返してしまった。 事情を話すと、沙織は迷いなく言った。 「一緒に行こうよ。私も心配だし……」 そして、続ける。 「今すぐ行くと逆に怪しいよ? 明日なら自然に会えるしさ」 「……」 「そしたら、二人でもっと一緒にいれるじゃん?」 無邪気に笑うその顔が、 どうしようもなく怖かった。 ……もう俺には、止められない。 ごめん。美咲…… 「病院で、たまたま会ったことにしよう」 その提案に、頷くしかなかった。 断ったら、何をするか分からない。 ......俺は、もう怯えていた。 こうしてまたひとつ、嘘を積み重ねる。 翌日、俺たちは病院へ向かった。 病室で再会した美咲の表情は、凍りついていた。 ……当然だ。 こんな偶然が、あるはずがない。 それでも俺は... 美咲の無事を、この目で確かめたかった。 「美咲!大丈夫か!? 心労で倒れたって聞いたけど
あの日から、沙織からの束縛が強くなる。毎日、執拗に送られてくるメッセージ...「今日、会えるかな?」「連絡ないの?」「部屋で待ってるからね」と誘惑を誘うような、沙織の際どい画像が添付されて送られてくる。そして俺は、その異常な行動を抑えるために、自分自身も狂った流れに巻き込まれていく……。美咲はあの日から、まるで何かを諦めたように、おとなしくなっていた。傷付けた罪悪感はあった。大袈裟になる前に落ち着いたのなら...俺は、それで済んだのだと、勝手に思い込んでいた。最近は、どうやったら沙織との関係が切れるかばかりを考えている。美咲も子供が欲しい...と悩んでいるみたいで相談があったのだが...沙織との一件が終わるまでは...興味がないふりをして、やり過ごした。そんな生活が続いていた。こんな生活が長く続くわけがない...早く、どうにかして終わらせないとその思いで常に心はモヤモヤしていた。そして...とうとう、俺が恐れていたことが起きた。いつものように沙織から着信がくる...「今日、時間ある?」「ちょっと話があるんだけど、これないかな?」沙織から普段とは違うような文面...「大丈夫だよ。部屋に向かえばいいかな?」「ううん。いつもと違う感じが良いからカフェにこれない?」......嫌な予感がする。疑心ながらに俺は「了解」とだけ返事を打ちカフェに向かった。奥の席から手を振る沙織。俺は向かいの席に座る。「どうしたの?急に...長い時間は無理だよ」沙織に少し面倒な態度で声をかける。「たまには良いじゃん?...ちょっと聞きたいことがあったからさ」何か良いことがあったのか?上機嫌な沙織は話を続ける...「ねぇ...私と拓也の将来って...どうしたいとかどうなりたいってある?」将来...?どうしたい?もう、終わりにしたい、は多分答えじゃない。沙織は急に何を考えているんだ?。そもそも関与しないって...「どうしたいって...?」俺は苦笑いをしながら言葉を返す。「だから...私達の将来だよー。結婚とか、子供とか...?ちゃんと考えてる?」また、沙織のズレた感じが出ただが、今回は機嫌良く話している...何を企んでいるんだろう...けどここで話を合わせないとマズイ...「そ
「必ず!約束するから待ってて」「うん...わかった...でも来なきゃ...」と途中で電話が切れた。俺は...沙織を止めなきゃ...全てが終わってしまう...。と言う答えだけははっきりとしていた。退社後に、すぐに沙織の家に向かう。「...来てくれたんだね。」不機嫌そうにドアを開ける沙織に歪な雰囲気を感じていた。「何があったんだよ?美咲に何か話したのか?...おいっ!ちょっ...」玄関に入るとすぐに押し倒された。上にまたがる沙織...「ねぇ...しよ...」押さえつけられるように俺は抵抗せずに沙織を受け入れた。気持ちが晴れた沙織が俺に倒れ込む...その沙織を抱きしめる。「落ち着いた?...何があったか聞かせてよ?」沙織は目を合わせずに答える。「なんか...幸せそうに拓也の話してた。それが...なんか...見下されてるように感じちゃって...」俺は、その話を理解できなかった。俺たち夫婦の仲には介入しないんじゃなかったか?「私にもさ...何かあったら助けたいだってさ」「頭きちゃってさ...じゃあ拓也さんちょうだいよ!って言ってやろうかなって...」「!?!?...話したのか!?」俺は咄嗟に沙織の顔を見る。「話してないよ...ただ、そんな態度だから拓也さんも疲れるんだよっては言った」俺は、その発言を聞いて血の気が引いた。そんなこと言ってたら美咲はきっと何か勘繰るかもしれない...何を考えてるんだ...この女は...焦りと困惑で表情が歪む前に、沙織を退けて顔を背ける。「ねぇ...怒らないでよ。最近、会えてなかったから寂しかったの」背中から聞こえる声に、俺は冷たく返す。「ひとまず、美咲の様子見てくるから...」背中から沙織が俺を抱きしめる。「また、来てくれるよね...」「あぁ...安心して...離れたりしないから」と沙織の手を振り払い顔を見ずに沙織の家を出た。帰路の最中、頭の中が焦りでいっぱいになる。まずい…沙織の軽率な一言が、どこまで美咲に届いているのか…美咲は昔から人に責められることになれていない。けど...あの一言だけでも、何か引っかかっている可能性は高い「くそっ…」思わず舌打ちが漏れる沙織のことよりも、今は美咲だもし疑われていたら.....
指定されたカフェは、 沙織が働いているスーパーから 少し離れた場所にあった。 人通りもまばらで、 どこか静かすぎるくらいの空気。 ガラス張りの扉越しに中を覗くと、 落ち着いた照明と、ゆったりとした席の配置が目に入る。 ……こういう店、普段は来ないな。 一瞬だけ場違いな気がして、 足が止まりそうになる。 ......商談だから。 そう言い聞かせて、扉を押した。 カラン、と小さな音が鳴る。 「いらっしゃいませ」 店員の声に軽く会釈をして、 店内を見渡すと―― 「あ、拓也さん」 奥の席で、軽く手を振る沙織の姿があった。 その瞬間。 ほんの少しだけ、胸がざわつ
「……え? 何を言って...」 沙織の声が、わずかに揺れている。 想定外だったんだろうな。 さっきまでの余裕の笑みが、 ほんの少しだけ崩れている。 私は目を逸らさずにしっかりと見つめる。 絶対に...許さない。 「ん?聞こえなかった? 私が育てるって言ったの」 もう一度、同じ言葉を繰り返す ゆっくりと、丁寧に。 決しておふざけなんかじゃなく 誤解なんてさせないように。 「だって、その子――拓也の子でしょ?」 沙織の喉が、小さく動く。 さっきはあれほど自慢してた癖に... 何か言おうとして、 言葉にならないみたい... もう理解なんて求めない。 わかっ
翌日。 昼過ぎ、スマホにメッセージが届いた。 いつもだと珍しい時間... 『美咲、元気してる? いきなりなんだけどさ 今日...時間ある?』 沙織からの連絡だ。 しばらく会えてなかったのに... 何があったんだろ?... 拓也に何か言われたのだろうか。 私のかけがえのない親友。 そして私の子を殺したもう一人... 『あるよ。どうしたの?』 すぐに返信すると、既読がついた。 『久しぶりに会いたいなって』 会いたいなんて思うはずないのに... 『いいよ。どこ行く?』 期待と憎しみが交差しながらメッセージを打つ。 『じゃあ、いつ
朝は、いつもと同じように始まった。 カーテンの隙間から差し込む光。 キッチンで湯を沸かす音。 テーブルに並ぶ、二人分の朝食。 ――違うのは、ひとつだけ。 私は、もう“迷っていない”。 「いってきます!」 玄関で、いつも通りの声を出す。 背後から、拓也の眠たそうな返事。 「……いってらっしゃい」 振り返らない。 振り返る必要がない。 だって――もう、外から塞ぐから。 ドアを閉めた瞬間、表情が消えた。 風は少し冷たくて、気持ちがいい。 頭が冴える。 足取りは軽い。 まるで、買い物にでも行くみたいに。 でも、向かう先は―― “家族”。 インターホンを押す。
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