Todos los capítulos de 兄と妹を偏愛する両親は、新年で僕を失った: Capítulo 1 - Capítulo 10

11 Capítulos

第1話

僕、河内純一(かわうち じゅんいち)は三人兄弟の次男だ。家の中では、誰からも気にかけてもらえない「透明人間」のような存在だった。パパとママは、兄と妹の誕生日を毎年丁寧にカレンダーに書き込んでいる。でも、僕の誕生日はいつも忘れられてしまう。兄と妹はいつも、新しいおしゃれな服を買ってもらえる。僕の分の服が買い忘れられることは、よくあることだった。正月の時期になると、兄と妹お年玉をもらえるけど、僕は一度ももらったことがなかった。パパの車が高速道路を走って、家族全員でおばあちゃんの家に帰省する日もそうだった。外は氷点下で凍えるような寒さだった。そんな中、パパとママは僕をサービスエリアに残したまま出発してしまった。トイレから戻ると兄と妹が車に乗り込むのが見えて、追いかけようとした瞬間、車が走り出してしまった。僕は慌てて追いかけながら、大声で叫んだ。「パパ!ママ!僕がまだ乗ってないよ!」でも車はすぐ角を曲がって、あっという間に視界から消えた。僕は車が走って行った方向を見つめて、震える声でつぶやいた。「パパ、ママ、僕はまだ乗ってないんだよ……」その声は風に吹かれ、かき消されていった。期待していた気持ちが、冷たい現実に飲み込まれていった。僕はゆっくりと視線を戻して、周囲を見回した。サービスエリアは静まり返っている。街灯の明かりがあるだけで、人の気配すらない。高速道路を走る車の明かりは流れていくけれど、僕のために止まってくれる車は一台もなかった。その場に釘付けになりながら、淡い期待を捨てられなかった。もしかしたら、パパとママは僕がいないことに気づいて戻ってきてくれるかも。僕は震えながら、家族の車が現れるのをずっと待ち続けた。だんだんと寒さが骨まで染みてきた。足先の感覚も、もうほとんどない。顔も冷たさで赤くなり、涙がこぼれそうになるのを必死に堪えた。泣いたところで、誰かが慰めてくれるわけじゃないと分かっているんだ。あまりの寒さに、僕はトイレの方向へ歩き出した。室外よりは、風を避けられると思ったからだ。静かなトイレには、自分の荒い呼吸の音と風の音だけ聞こえた。抑えていたはずの悲しみが、津波のように押し寄せてきた。去年、僕の誕生日をみんなが忘れていたことを思い出す。家族が
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第2話

こんな人里離れたサービスエリアのトイレに、男の子が一人でいることにびっくりしたのだろう。男性は僕の前まで来て、優しく尋ねた。「こんなところで、一人なのか?パパとママはどうしたんだ?」パパとママという言葉を聞いて、胸が苦しくなった。こみ上げてくる涙を必死にこらえ、震える声で答えた。「僕……パパとママとはぐれちゃって。電話を貸してもらえませんか?」それを聞いた男性は、心配そうな目をして、すぐにスマホを差し出してくれた。「もちろんだ、はやく掛けて。こんな寒いところじゃ、風邪をひいてしまうぞ」僕の指は寒さで凍えてうまく動かせなくなったせいで、何度も番号を打ち間違えてしまった。なんとか正しく番号を入力して、僕は深く息を吸い込んで、通話ボタンを押した。「プルル……プルル……」と無機質な呼び出し音が鳴り響く。心臓が跳ねるたび、期待と不安で押しつぶされそうだった。しかし、いくら待っても電話はつながらない。スマホを握る手が震え、心が少しずつ冷めていった。傍らで見守っていた男性が、そっと声をかけてくれる。「大丈夫、電波が悪かったんだろう。もう一度かけてごらん」僕はこくりとうなずき、もう一度電話をかけ直した。今度こそパパとママが電話を取ってくれるに違いないと、耳をスマホに押しつけながら祈った。呼び出し音が続く中、僕の鼓動は早まり、息苦しさで胸がいっぱいだった。どれくらい待ったのか、ようやく電話が繋がった。風の音と車内の音楽が混じり、「もしもし?」とママの声が聞こえる。張り詰めていた精神がほどけ、目頭が一気に熱くなった。溢れそうな恐怖と悔しさが喉の奥で詰まり、か細い声しか出せなかった。「ママ……僕、車に乗れなかった。まだサービスエリアにいるんだ」僕が言い終わるか終わらないかのうちに、ママの苛立ちを隠さない反論が勢いよく返ってきた。「そんなわけないでしょ!出発前にちゃんと人数確認したし、みんな『揃ってる』って言ったじゃないの?」電話の向こうが一瞬静まった。ママが後部座席の方を振り返っている様子を思い浮かべた。この数秒の沈黙は、どんな寒さよりも僕の心を凍らせた。驚いて心配してくれるはず。そう願った僕の心を裏切って、返ってくるのはママの怒りだった。「何やってるのよ!乗ってないならもっと早く言って!
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第3話

「でも、パパ、裕也さんの車のことは覚えてないし、いつ来るのかも……」僕が言い終わる前に、プツンと通話が切られた。僕はスマホを握りしめたまま、立ち尽くした。ついに涙がこぼれ、光ったスマホの画面にぽつりと落ちた。その様子を見ていた男性が、僕の肩を優しく叩いてため息をついた。「ほら、そんなに悲しむな。とりあえず俺の家に来て、パパとママに連絡して迎えに来てもらったらどうだ?高速を下りたらすぐなんだ。パパとママが居るところから少し遠いかもしれないけど、ここにずっといるよりはいいだろう」パパとママの不機嫌そうな声が頭をよぎり、僕はその提案を断った。「ありがとうございます。でも家族がすぐ迎えに来るって言ったから、ここで待っていたいです」年越しの日だ。パパとママはきっと、わざわざ引き返して迎えに来たくないのだろう。叔父の河内裕也(かわうち ゆうや)とも元々親しくないし、乗せてもらうために車を止めさせるのはきっと迷惑だ。男性が何か言いかけた時、ポケットに仕舞ったスマホが鳴り出した。同行者に急かされているのだろう。男性は心配そうに僕を見ると、ダウンジャケットのポケットからチョコレートを何個か取り出し、さらに車からベージュの小さな毛布を取って僕の肩にかけてくれた。「これを羽織れば少しは温かくなるだろう。チョコも食べていいからね。もし待っても誰も来なかったら、また誰かに電話を借りるんだ。勝手にどこかへ行くんじゃないぞ」僕は大きく頷き、震える声で、「ありがとうございます」と伝えた。急いでいく男性の背中が見えなくなり、またサービスエリアで一人になった。たまに冷たい隙間風を感じるけれど、肩の毛布のおかげで少し温かくなった。お腹が空いたのを感じて、チョコレートの包装紙を開けて少しだけかじった。万が一のために、チョコをできるだけ残して、ポケットに丁寧にしまった。毛布を体に巻きつけ、風が入らないようにセーターの襟元をきつく閉めた。去年に兄がお下がりとしてくれた古いセーターだ。首元は緩み、袖はほつれかかっている。兄がいらないと言った服を、ママにまだ着れると言われて着せられているものだ。今年の兄は、新品のグレーのスーツに青い蝶ネクタイを買ってもらえて、まるで王子様のようだった。妹のピンクの新しいドレスも、まるでお姫
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第4話

心臓がドクドクと、激しく脈打っていて、息をするのも苦しくなった。胃の中は空っぽで、鈍い痛みを感じた。お腹が空きすぎたせいなのかな。僕は震える手でポケットから残りのチョコを取り出し、ちびちび食べる余裕もなく、丸ごと口に放り込んだ。甘さが動悸を少し和らげてくれたけれど、頭がフラフラするのは治らなかった。体中が冷えていく。風に当たっていた時よりも、骨の芯まで凍みるような寒さだ。毛布をきつく体に巻きつけたが、温もりはどこかに吸い取られてしまったようで、体は少しも温まらなかった。もう立っていられないと思った時、遠くから黒い車がやってきて、サービスエリアの入り口に止まった。藁にもすがる思いで、全身の力を振り絞ってその車へ歩み寄る。下げられた窓から車内を見ると、そこには見知らぬ男性が座っていた。「すみません……電話を貸していただけませんか?すごく、具合が悪くて……」自分の耳にも届かないような、か弱い声しか出せなかった。男性は少し驚いていたが、すぐにスマホを差し出してくれた。「おい、大丈夫か?顔色が悪いぞ」お礼をすることさえ忘れて、ただ凍えた指で一生懸命パパの電話番号を入力すると、今度はすぐに繋がった。「パパ……」泣きそうな声が、震えて止まらなかった。「裕也さんは……いつ来るの?苦しいの……頭もふらふらして、心臓がバクバクしてて。僕、病気になっちゃったかな?」電話の向こうから、明らかに不機嫌そうなパパの声が聞こえた。「また何だよ!待ってろと言っただろう?彼はもう出てるし、道が混んでるだけだ。すぐ着くから!少しも我慢できないのか?自分がもたもたしてたせいで残ってんだろうが。今さら具合が悪いとか、騒ぐなよ」「違うの。パパ、本当に苦しいんだよ……」僕の言葉なんて、どうせ届かないのだ。「わかったから大人しくしてろ!せっかくの正月だぞ、面倒ばっかりかけやがって!」通話はぷつりと切られて、ツー、ツーと無機質な音が続いた。助けを求める言葉を口にする前に、パパが電話を切ったのだ。借りたスマホを返すことも忘れて、スマホを握ったまま、呆然とその場に立ち尽くした。男性が優しくスマホを回収し、親切に声をかけてくれた。「落ち着け。家族はもうすぐ来るはずだ。車の中に入って少し休むか?」僕は首を振った
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第5話

再び目を開ける時、体が羽のように軽くなっている感じがした。焦ったママの姿がそこにあるに違いないと思った。昔、僕が転ぶとすぐに駆け寄って抱きしけてくれた時のように、僕を慰めてくれると思った。でも、目の前には相変わらず、ひっそりとした人気のないサービスエリアがあるだけだった。雪がしんしんと降り続き、地面に深く積もっていた。僕は雪の中に横たわっていて、毛布の上に真っ白な雪が少しずつ積もり、元の色がわからなくなっていった。起き上がろうとしたその時、なんと体が地面からふわりと浮き始めた。下を見てみると、雪の上に自分の体が小さくうずくまったまま、微動だにせずにいた。顔から血色がなくなり、唇は青く、閉じた目のまつ毛にまで雪が積もっていた。そこにいるのは、僕だ。けれど今の僕は、宙に浮いている。横たわっている自分に触れようと手を伸ばしたが、その体を通り抜けてしまった。ああ、僕はもう死んだのだ。その事実に、しばらく呆然としてしまった。不思議なことに、恐怖も悲しみもなく、どんな感情も湧いてこなかった。行くあてもなく、何をしていいかも分からず、ただそこに浮かんでいた。時間の感覚さえ消えてしまったのだ。雪が少しずつ僕を覆い隠し、やがてただの小さな雪のふくらみになっていった。遠くで車のライトが光ったが、やはり停まってくれる車は一台もない。日はすっかり暮れて、辺りは暗闇に包まれた。そして、遠くの方から小さな明かりのようなものが目に入った。いくつも集まった、四角い光だった。目を凝らすと、そこは住宅街のマンションで、四角い明かりは窓から漏れる照明の光だった。一人もいないサービスエリアから、やけに明るく見えた。僕は泣きそうになったけれど、涙は出て来なかった。きっと、みんな温かいお家にいて、新しい年を祝っているのだろう。それなのに僕は、こんな寂しい場所で命を落とした。パパとママは、もうおばあちゃんの家に着いたのだろう。何を食べているのかな?僕のことを気にかけてくれているのかな?そう思った瞬間、目の前の景色が揺らいだ。次の瞬間、僕は明るいリビングにいた。おばあちゃんの家のリビングだ。見慣れたベージュのソファと、壁に飾られた家族写真が目に映った。テレビからは大きな音で年末特番が
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第6話

「いいよ。予約が取れるか確認するね」みんな楽しそうに正月の予定を話し合っている。どこへ挨拶に行くか、どこで遊ぶか、何を買うのか。僕も仲間に加わりたくて、嬉しそうに彼らに近づいた。一緒に行きたいと何度も伝えようとしたけれど、僕の声がみんなに届くことはなかった。そうか、僕はもう死んだんだ。一緒に行けないのだ。兄が急にスマホを置いて、ママのそばへ駆け寄った。「ねえママ、スマホの充電切れた。ママの貸してよ」「まったく、スマホばかり見ないでって言ってるでしょ」ママは文句を言いながらも、兄にスマホを手渡した。妹もやってきて、ママのズボンの裾を引っぱる。「ママ、お金ちょうだい!お菓子買いに行く!」「もうこんな時間よ。これから晩御飯でしょ。また明日ね」ママはそう言いながらも、財布から何枚か札を抜き出した。妹は喜んで、部屋の中を走り回った。最初から最後まで、誰の口からも僕の名前は出て来なかった。まるで、僕という人間は初めから存在しなかったようだ。ママが窓の外を見て、眉をひそめる。「何だか、大事なことを忘れているような気がするんだけど……」その時、おばあちゃんがキッチンから料理を運んできて、テーブルに並べた。「そういえば、純一くんは?あとどれくらいで着くの?もう、なんであの子をサービスエリアに忘れてきたのよ」ママは「あっ」と声を上げ、額をペチンと叩いた。「そうだったわ!純一のこと、すっかり忘れてた」パパは特に気にすることなく、腕を組みながら言った。「今頃はもう裕也と合流してるだろ。あいつがグズグズしてるから悪いんだ。さっさとしていればこんなことにはならなかった」違うよ、パパ。僕、グズグズなんてしてなかったよ。心の中で言い返しても、誰にも届かない。ママは反省しているように、こう言った。「私のミスね。明日、純一にお年玉を多めにあげて謝らなきゃね」僕はその言葉を聞いて、どうしようもない悲しさに襲われた。去年は兄がクラスで一番いい成績を取ったから、お年玉が一番多かった。一昨年は妹が風邪をひいて、パパとママは彼女を元気づけるためにお年玉を一番多くあげた。僕だけは、いつも決まった分のお年玉しかもらえなかった。今回はようやく僕が一番多くもらえるのに、もう使うことはできなくな
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第7話

叔父は気にする様子もなく、笑顔を作って言った。「じゃああんな小さな子供がどこへ行けるんだ?きっと通りすがりの人の車にでも乗せてもらったんだろ。心配させようとして、わざと家に帰らないんだよ」違う、そうじゃない。僕は横で必死に叫んだけれど、どうしても声は届かなかった。パパは慌ててスマホを取り出し、先ほど僕にスマホを貸してくれた人たちに連絡した。一人目の男性に繋がり、パパが通話をスピーカーにして僕のことを尋ねた。「ああ、あの子に電話を貸したよ。それで、家族の迎えを待ってると言っていたな。何だい?まだ子供はそっちにいないのか?」それから、車に誘ってくれた二人目の男性にも電話をかけた。「確かにサービスエリアで電話を貸したけど、そのあとも多分ずっとそこで家族を待っていたぞ。俺の車に入っていいよって言っても首を縦に振らなくてな。まだ見つかっていないのか?」パパが電話を切ると、リビングは静まり返った。ママがぽろりと涙をこぼした。「こんな幼い子供が、どこへ行ってしまったのよ……」すると妹が口を挟んだ。「きっとパパの車に乗れなかったのが悔しくて、わざとみんなに黙ってどっかに行っちゃったのよ。みんなを困らせたくてね!」パパはそれを聞いて怒りに震えた。「なんてわがままな奴だ!見つけたら厳しく叱ってやる!」違う!僕はそんなことをしていない!僕は家族の前で必死に叫んだが、やっぱり誰の耳にも僕の声は届かなかった。叔父は肩をすくめた。「そんなことよりご飯にしよう。運転で腹ペコだよ。せっかくの正月だ。あの子だって明日には連絡してくるさ」おばあちゃんも「早く座って、せっかくの料理が冷めてしまうよ」と促した。家族が再びテーブルを囲むが、どこか重苦しい雰囲気があった。しかしテレビから流れる楽しげな歌番組のおかげか、すぐに賑やかさが戻ってきた。パパは叔父に酒を注ぎ、ママは叔母と世間話で笑い合い、子供たちは学校の話題や唐揚げの奪い合いで盛り上がっている。年越しそばや子供たちの好物、テーブルいっぱいに、美味しそうな料理が並べられていた。彼らは乾杯して正月を祝い、みんなが笑顔で過ごした。まるで僕の失踪なんて、この食事と比べたら取るに足らない出来事であるようだった。僕はテーブルの横に立ち、寂しい気持ちでそ
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第8話

さっきまで賑やかだった食卓が一瞬で静かになって、テレビから流れる司会者の陽気な挨拶だけが聞こえた。「あ、ああ……すぐに向かいます」パパは電話を切って、力が抜けたように、深いため息をついた。「どうしたの?誰から?」ママの声が震えていた。パパが顔を上げた。目は赤く、唇は震えていた。「警察だ……サービスエリアで凍死した男の子が見つかったらしい。身元は……どうやら純一らしいんだ」「うそでしょ!」ママが悲鳴を上げた。「ありえないわ!純一が……どうして……」言い終わるか終わらないうちに、ママはその場で倒れそうになった。おばあちゃんが慌ててママを支え、叔父は信じられないという顔をしていて、リビングは混乱に包まれた。警察署へ向かう車の中で、ママの涙は止まらなかった。「私の純一……死ぬはずないわ……きっと誰かと間違えたのよ」パパはハンドルを握りしめ、一言も発さなかった。後部座席では叔父が泣いている兄をなだめていて、妹はまだ何が起きたのか理解できていないのか、夜景をじっと眺めていた。僕は宙に浮かび、その様子を見下ろした。不思議と心は落ち着いている。死ぬと本当に幽霊みたいになるんだな。心残りがあれば、こうして家族の後をついてこられるんだ。警察署の明かりが眩しい。警察がパパとママの姿を見て、深刻な面持ちで近づいてきた。「純一くんの家族ですね。こちらへどうぞ」通されたのは、タイル張りの部屋で、中央に金属製の台が置いてあった。警察が白布の端をめくった。ママは布の下の顔を一目見ると、甲高い叫び声を上げて、そのまま気を失ってしまった。パパは後ずさり、呼吸が止まった小さな顔を食い入るように見つめた。それは、僕の顔だった。溶けた雪で髪が濡れ、目は閉じたまま。顔や唇から血色がなくなり、所々に凍傷の跡が見える。台の上にいる僕は静かで、まるで眠っているようだった。しかし、もう二度と目を覚ますことはないと、みんなが理解した。兄は口元を抑え、泣き崩れた。妹はパパの背中に隠れ、小さく呟いた。「パパ、お兄ちゃんどうしたの?なんでここで寝てるの?寒くないのかな」警察はママを休ませたあと、話を切り出した。「この子をサービスエリアに残したのは、何時頃ですか?」パパは枯れた声で答えた。
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第9話

警察は信じられないといった表情で言った。「サービスエリアに子どもを置き去りにして、4時間も迎えに行かなかったんですか?しかも、氷点下のなか、そんな薄着のまま待たせるなんて?」「弟がすぐに行ってくれると思っていたんです……」パパの声が次第に小さくなった。「それと……」警察が記録を見返しながら言った。「防犯カメラの映像によると、午後8時前後にサービスエリアに入った車は一台だけで、運転手は降車もせず、1分後くらいにそのまま車で離れています」叔父が慌てて説明を加えた。「ちゃんと外を見たんです!誰もいなかったんです!この子の親が一回戻って来て連れて帰ったって普通思うじゃないですか!」「車の中で見えなかったからってそのまま離れたんですか?こんなに幼い子供ですよ。車を降りて確認したり、電話で聞いたりするのが当たり前でしょう!」警察の声には抑えきれない怒りが混じっていた。「夜7時の監視カメラの映像では、この子の姿はまだ映っていました。そして子供の死体を見つけたのは8時半です。あの時もし車を降りて探していれば、この子の両親に電話をかけていれば、彼は助かっていたかもしれないんですよ!」その言葉が、全員の心を打ち砕いた。ママは息ができなくなるほど泣きじゃくり、パパは青ざめた顔で立ち尽くした。叔父はうつむき、誰とも目を合わせようとしなかった。この瞬間、彼らはようやく気付いたようだ。僕の死は、決して不慮の事故なんかじゃない。仕方のない運命でもない。僕に構うのが面倒で、みんなが責任を押し付け合い、少しずつ僕を死へと追いやったのだ。……手続きを終え、遺体を引き取ったころには、外が明るくなり始めていた。本来なら晴れやかな正月の朝だ。それなのに、家族の車には小さな棺が載せられた。おばあちゃんの家へ向かう車内は、沈黙に包まれた。ママの泣き声と、妹のあどけない質問だけが響く。「ママ、お兄ちゃんはどうしたの?まだ寝てるの?」おばあちゃんの家に到着した後、棺を見たおばあちゃんが涙を流した。「かわいそうな純一くん……どうしてこんなことに……」叔父一家は、気まずそうにその場に立ち尽くしていた。突然、ママが駆け寄り、叔父の胸ぐらをつかんだ。「なんで探さなかったの?あなたが探していれば、純一は死ななか
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第10話

去年、学校で撮った証明写真が、遺影として真ん中に飾られている。制服を着た僕は、レンズに向かって笑っていて、瞳は輝いていた。僕の身に起きたことを知った親戚や、近所の人たちが悲しんでくれた。「あんなに良い子が。どうして死んじゃったんだろう」「外で凍死したそうよ。親って気を抜いちゃいけないわね」「せっかくの新年に。本当にかわいそう……」ママは遺影の前でひざまずき、泣き崩れながらこう言った。「純一、ごめんね……許してちょうだい。帰ってきて……」パパの目の下に濃いクマができて、少し老けたように見えた。兄も悲しんでいて、僕の写真を見つめながら言った。「純一、ごめんな……あの日、列に割り込まなければよかった。本当にごめん……」幼い妹は死の概念が分からず、ママの服の裾を引っ張って無邪気に聞いた。「ママ、お兄ちゃんはいつ帰ってくるの?一緒におもちゃで遊びたいよ」その様子を見ていると、僕の体は少しずつ透明になっていった。太陽の下で消える露のように、風で消える霧のように。まるで最初からいなかったかのように。親にがっかりしたこともあったし、兄や妹に嫉妬したこともあった。叔父には恨みさえ抱いたこともある。けれど、今はもう何も感じない。愛も恨みも命とともに消えて、二度と戻らないのだ。最後の瞬間に目に映ったママの絶望した表情。パパの疲れ切った背中。兄の涙と妹のつぶらな瞳。そして、僕は完全に消えていなくなった。煙が空気中に散っていくように。雪が融けて水滴になるように。僕がこの世界にいたことが嘘だったように。……僕が消えた後も、時間は流れ続けた。葬儀が終わってから、家の中はしばらく暗い雰囲気のままだった。ママは一日中泣き続け、僕の写真を持ってじっと眺めた。夜は眠れず、夢の中でサービスエリアで寒さに震える僕の姿を見た。目が覚めるたび、ママは泣き叫んでいた。パパは口数が減り、仕事も上の空だった。子供の話題を避け、街で歩く子供の姿さえうまく直視できなくなった。親戚付き合いも旅行に出かけることもしなくなって、代わりによく一人でタバコを吸うようになった。兄は、一晩で大人になったように見えた。わがままを言わなくなり、一日中パパとママに甘えることもなくなった。そして勉強に夢中だった。
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