僕、河内純一(かわうち じゅんいち)は三人兄弟の次男だ。家の中では、誰からも気にかけてもらえない「透明人間」のような存在だった。パパとママは、兄と妹の誕生日を毎年丁寧にカレンダーに書き込んでいる。でも、僕の誕生日はいつも忘れられてしまう。兄と妹はいつも、新しいおしゃれな服を買ってもらえる。僕の分の服が買い忘れられることは、よくあることだった。正月の時期になると、兄と妹お年玉をもらえるけど、僕は一度ももらったことがなかった。パパの車が高速道路を走って、家族全員でおばあちゃんの家に帰省する日もそうだった。外は氷点下で凍えるような寒さだった。そんな中、パパとママは僕をサービスエリアに残したまま出発してしまった。トイレから戻ると兄と妹が車に乗り込むのが見えて、追いかけようとした瞬間、車が走り出してしまった。僕は慌てて追いかけながら、大声で叫んだ。「パパ!ママ!僕がまだ乗ってないよ!」でも車はすぐ角を曲がって、あっという間に視界から消えた。僕は車が走って行った方向を見つめて、震える声でつぶやいた。「パパ、ママ、僕はまだ乗ってないんだよ……」その声は風に吹かれ、かき消されていった。期待していた気持ちが、冷たい現実に飲み込まれていった。僕はゆっくりと視線を戻して、周囲を見回した。サービスエリアは静まり返っている。街灯の明かりがあるだけで、人の気配すらない。高速道路を走る車の明かりは流れていくけれど、僕のために止まってくれる車は一台もなかった。その場に釘付けになりながら、淡い期待を捨てられなかった。もしかしたら、パパとママは僕がいないことに気づいて戻ってきてくれるかも。僕は震えながら、家族の車が現れるのをずっと待ち続けた。だんだんと寒さが骨まで染みてきた。足先の感覚も、もうほとんどない。顔も冷たさで赤くなり、涙がこぼれそうになるのを必死に堪えた。泣いたところで、誰かが慰めてくれるわけじゃないと分かっているんだ。あまりの寒さに、僕はトイレの方向へ歩き出した。室外よりは、風を避けられると思ったからだ。静かなトイレには、自分の荒い呼吸の音と風の音だけ聞こえた。抑えていたはずの悲しみが、津波のように押し寄せてきた。去年、僕の誕生日をみんなが忘れていたことを思い出す。家族が
Leer más