「うわっ、ユキちゃん!また吐いたの?」美優は悲鳴を上げると、すぐに腰を下ろし、苦しむ愛犬を抱き上げた。そして目に涙をいっぱい溜めて湊を見上げて、訴えた。「湊さん、どうしよう?ユキちゃん、もっとひどくなってるみたい!さっきから具合が悪そうだったけど、また吐いちゃったの。ここだと土地勘もないし、動物病院もどこがいいのかわからなくて……お願い、湊さん。車を出して探してくれない?心配で、どうにかなりそうだよ」すると香織がすぐに便乗するかのように言った。「そうよ、湊!急いで車を出して、ユキちゃんを病院に連れてってあげて!犬だって生き物よ、さあ急いで!夏美のことは連絡が来てから考えればいいわ。どうせまた、何か悪戯してるだけでしょ!」一方、湊は美優に抱かれた愛犬を見つめながら、どうしようもない徒労感に襲われていた。拒否したい。今、最も優先すべきは夏美の状況を確認することだと伝えたい。だが、不安に顔をゆがめる大輔、香織と美優を見れば、言葉が喉に詰まって出てこなかった。「……ああ」結局、彼は折れて、乾いた声で答えた。「車を出してきます」そして、大輔と香織も心配し、一緒に付いてくることになった。こうして車が駐車場の出口を出ると、閑散とした正月未明の通りへと走っていった。車内はどんよりとした重い空気。犬の鳴き声と、美優の優しく宥める声だけが響いているのだった。後部座席では香織が、未だにぶつぶつと文句をこぼしているのだ。「帰ったら、夏美に一言言わないと。本当に迷惑ね!こんな正月の夜中に、犬のせいで家族中が病院を探し回るなんて。一体どうなってるのかしら」一方、湊はハンドルを握りしめたまま、前を見据えて口を閉ざした。そして、不安がどんどん高まり、どうにも落ち着けないでいたのだ。スマホはダッシュボードのホルダーに置かれている。画面は消えたままだが、彼は取り急ぎの連絡を待ち続けているのだった。「湊さん、次の交差点を右だよ。ナビで見たら、この辺りに24時間の動物病院があるみたい」美優がスマホの地図を指さして言った。そう言われ、湊は無言で右のウィンカーを出し、右折の態勢をとった。すると、右側の道路へ入ろうと、車体が向きを変えたその瞬間――リンリンリン――静まり返った車内に、けたたましいスマホの着信音が響き渡った。車内のブルートゥー
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