個室の中で、右原貴史(うはら たかし)の膝の上には一人の若い女の子モデル・八野かれん(はちの かれん)が腰掛けている。周囲の連中は、彼の妻である私の無様な姿を、見せ物のように眺めている。「貴史、奥さんが本当によく耐えてるんだな!」「これでも怒らないなんてさ!」嘲り混じりの声が響いている。「なあ、賭けようぜ。右原喜代美(うはら きよみ)がいつ我慢できなくなって、自分から這い出していくか」「俺は二千万円を賭ける。喜代美が貴史から離れるわけがない!」「じゃあ、俺は二億だ!この女の安っぽい顔を見ろよ、一生しがみついてるに決まってる!」貴史は鼻で笑うと、隣にいるかれんに激しく口づけをした。唇が離れた時、そこには銀の糸が引かれている。彼は私に視線を向け、嫌悪感を隠そうともせずに吐き捨てた。「見ろ。こいつはこれほどまでに厚かましいんだ。俺が何をしても、必死にしがみついて離れようとしない」個室の中にドッと爆笑が沸き起こった。貴史の挑発的な視線を受け止めながら、私は静かに口を開いた。「私は、自分が今日出て行く方に賭けるわ」五年だ。明日、父が刑務所から出所する。私たちの贖罪も、ついに終わりを迎えるのだ。個室は一瞬で静まり返り、全員の視線が私に突き刺さった。品定めするような、あるいは蔑むような視線が、私の上を這い回っている。「喜代美、怒ったのか?」「今日は何のつもりだ?」「駆け引きのつもりかよ?」誰も私の言葉を信じていない。無理もない。ここにいる誰もが、私が貴史のそばに侍る奴隷だと知っているのだから。貴史が女を連れ帰れば、私が寝室を片付ける。シーツを替え、大人のおもちゃを差し出すのも私の役目だ。私と貴史の視線がぶつかった。彼の瞳は暗く、口元には冷ややかな嘲笑が浮かんでいる。「喜代美、そのわざとらしい振る舞いはやめろ。お前は俺に命の借りがあるんだ。そんな口を利ける身分か」貴史の言葉が、重い槌のように私の胸を打ち据えた。引き裂かれるような痛みが走った。この言葉を、何度聞かされただろう。この言葉のせいで、私は耐え忍び、五年間も罪を贖ってきた。それなのに返ってきたのは、貴史による激しさを増す一方の辱めだった。五年前、私と貴史が結婚する前日のこと。海外にいた貴史の
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