浩の告白に対し、真奈美はもう一度断った。「浩さん、あなたはとても素敵な人。だから、私なんかにこれ以上無駄な時間をかけないでほしいの」浩の顔には、隠しようのない挫折と落胆が浮かんでいた。「木村がいるから?」真奈美は静かに首を振った。諦めきれない浩が続ける。「前に、君のお父さんの心臓が急変した時も、俺は出張中だった。もしあの時、俺が側にいれば……」「あの人とは、何も関係ないから」真奈美は浩の目をまっすぐに見つめ、穏やかに言った。「浩さん、私があなたを断る理由には、誰一人関係ない。ねえ、知ってる?こっちに戻ってきたばかりの頃の私は、まるで心臓の動きが止まってしまったみたいだった。毎日猫と花を世話していても、心の中はぽっかり空いたままだったの。でも、仕事を始めて画筆を握ったとき、世界には愛よりも素晴らしいものがたくさんあるって気づいたんだ」半年ほど前から、真奈美のデザインは世間から高い評価を受けてきた。今では生産ラインを増やしてでも彼女のデザインを製品化したいというアパレル企業が後を絶たないのだ。真奈美は今、ちょっとした有名デザイナーだった。「だから、分かってくれる?」真奈美は、浩を深く傷つけないように慎重に言葉を選んだ。真奈美の瞳に宿る輝きを見て、浩は諦めたように優しく笑った。「じゃあ、ずっと待ってるから。いつか愛が必要だと思ったときには、必ず俺を思い出して。俺は、いつでも君の側にいるからさ」浩は真奈美の手をそっと引き、自分の唇を寄せた。真奈美がよく利用するカフェでは、いつものように直樹が彼女を待っていた。ここしばらくの間、直樹は決して真奈美の前に姿を現さず、遠くから静かに見守り続けていたのだ。慎吾が発作を起こし、予断を許さない状況になって初めて、彼はその姿を見せることにした。直樹は今もはっきりと覚えている。あの時の真奈美の赤い目元と、こぼれ落ちた心細そうな涙を。真奈美が歩み寄り、直樹の目の前の椅子に腰を下ろした。「直樹、父を救ってくれて本当にありがとう!」直樹の胸は高鳴った。直樹が厳しい家法を受けたことを知った真奈美は、明らかに直樹を心配していた、と祖父から聞いていたのだ。「でもね、それはそれだから。父を救ってくれた恩には、とっても感謝してる。でも、私はもうあなたを愛してはいないの。だからも
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