悠月は、理玖が帰宅したあとも気になってしかたがなく、ずっと後をついてきていた。気遣っているように見せかけて、その実、探りを入れながら内心では喜んでいた。そのとき、理玖が梨央の部屋の前に立っているのを見つけ、悠月はそっと顔をのぞかせた。中がもぬけの殻だとわかると、胸の内ではたちまち喜びが広がったが、表向きは案じるように言った。「梨央、いったいどこへ行ったの?まさか何か危ない目に遭ったんじゃ……」言い終える前に、理玖が冷えきった声で鋭く遮った。「黙れ」悠月は目を見開き、呆然と彼を見つめた。理玖が彼女にここまできつく当たったことなど、一度もなかった。だが理玖は、もはや彼女など視界にも入っていないように、そのまま足早に階下へ向かっていった。歩きながら電話をかけ、部下に命じる。「探せ。どんな手を使ってでもいい。必ず見つけ出せ!」荷物はあまりにもきれいに片づけられていた。こんなことが一朝一夕でできるはずがない。思い返せば、このころ梨央の態度はどこかよそよそしく、ひどくそっけなかった。それなのに、自分は何ひとつ異変に気づけなかった。ふと、あの日のことが脳裏をよぎる。梨央が出かけると言い、送ろうかと声をかけたとき、彼女が告げた行き先は出入国在留管理局だった。その場所を口にしたあと、彼女は数秒、じっと彼を見ていた。まるで、何かを尋ねてくれるのを待っているように。けれどあのときの彼は、ただ海外旅行にでも行くのだろうと思っただけで、深く考えもしなかった。理玖は足早に階下まで下りると、しばしその場に立ち尽くし、無理やり自分を落ち着かせた。梨央はずっと、志保子に引き取ってもらった恩を忘れず、実の母親のように慕っていた。突然姿を消したのなら、志保子が何か知っているはずだ。そう思うと、彼はすぐに志保子へ電話をかけた。つながるなり、待ちきれずに問いただす。「母さん、梨央はどこに行ったんだ?」電話の向こうで、志保子は数秒沈黙したあと、静かに言った。「理玖。あなたからこうして電話をくれたのは、この三年で初めてね」三年前、理玖と梨央の関係が明るみに出たあと、志保子の判断で、二人は結婚することになった。理玖はそれに従ったものの、心のどこかで母を恨んでいたのだろう。それ以来
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