「まだ学習できませんか。逃げようとすればするほど、貴方を縛るものが増えるだけだと言ったのに……こんな山の中を裸で逃げだそうとするなんて」 引きずり戻され、仰向けに押し倒される。黒瀬は俺の抵抗を力でねじ伏せると、先ほどよりも太く、硬い麻縄を取り出した。 「脚を、閉じないでください」 「やめて、離して……っ!」 暴れる膝を黒瀬の体重で圧し潰され、脚は無慈悲に折り曲げられた。太腿を胸に押し付けるように深く折り、左右へと無理やり割り開かれる。 足首と太腿、そして腰を複雑に経由して縄が回される。関節を強制的に固定され、最も無防備な場所を曝け出した状態で、俺はベッドに縫い付けられた。 「痛い……っ!」 さらに黒瀬は、俺の上半身を引き起こすと、首筋から胸元、そして脇の下へと縄を這わせた。複雑に交差する縄の目が、肌に赤い筋を刻んでいく。動くたびに、あるいは呼吸をするたびに節々が肌に食い込むような、逃げ場のない縛り。脚を閉じたくても、膝の裏を通る縄がそれを許さない。もがかなくとも、身体は否応なしに熱を帯びていく。 その時、寝室に鋭いノックの音が響いた。 沈黙を破るその音に、黒瀬はわずらわしそうに眉根を寄せ、「なんだ」と扉の向こうへ冷たく言い放った。 遠慮がちにドアノブが回る。現れた使用人は、先ほどまで俺が身に付けていた衣服を抱えていた。 「……ポケットに、このようなものが入っておりました。一緒に処分してもよろしいでしょうか」 差し出された手のひらにあったのは、俺が冴に贈るために買った、あの栞だった。 黒瀬の瞳が、その小さな落とし物をじっと射抜く。彼は透明な袋に収まったままのそれを無造作に摘み上げた。 「これは預かる。服は予定通り処分しろ」 再び扉が閉じ、密室に戻る。黒瀬は栞を俺の目の前に翳し、検分するように眺めた。 「今日は後堂と美術館に行ったと、報告を受けています。……これは、彼に買ってもらったものですか?」 有無を言わさぬ圧。俺は必死で「俺が一方的に買っただけ」と首を左右に振った。 「そうですか」 黒瀬は短く応じると、栞のプレート部分に親指を添え、みしりと力を込めた。 「やっ……やめて、壊さないで、お願い!」 悲鳴に近い叫びが俺の喉を突いた。黒瀬はぴたりと指を止め、慈しむような笑みを浮かべる。 「後堂への贈り
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