《死ぬほど大嫌いな幼馴染と、政略結婚することになりました。》全部章節:第 71 章 - 第 80 章

105 章節

第71話 贈りたかった栞

「まだ学習できませんか。逃げようとすればするほど、貴方を縛るものが増えるだけだと言ったのに……こんな山の中を裸で逃げだそうとするなんて」 引きずり戻され、仰向けに押し倒される。黒瀬は俺の抵抗を力でねじ伏せると、先ほどよりも太く、硬い麻縄を取り出した。 「脚を、閉じないでください」 「やめて、離して……っ!」 暴れる膝を黒瀬の体重で圧し潰され、脚は無慈悲に折り曲げられた。太腿を胸に押し付けるように深く折り、左右へと無理やり割り開かれる。 足首と太腿、そして腰を複雑に経由して縄が回される。関節を強制的に固定され、最も無防備な場所を曝け出した状態で、俺はベッドに縫い付けられた。 「痛い……っ!」 さらに黒瀬は、俺の上半身を引き起こすと、首筋から胸元、そして脇の下へと縄を這わせた。複雑に交差する縄の目が、肌に赤い筋を刻んでいく。動くたびに、あるいは呼吸をするたびに節々が肌に食い込むような、逃げ場のない縛り。脚を閉じたくても、膝の裏を通る縄がそれを許さない。もがかなくとも、身体は否応なしに熱を帯びていく。 その時、寝室に鋭いノックの音が響いた。 沈黙を破るその音に、黒瀬はわずらわしそうに眉根を寄せ、「なんだ」と扉の向こうへ冷たく言い放った。 遠慮がちにドアノブが回る。現れた使用人は、先ほどまで俺が身に付けていた衣服を抱えていた。 「……ポケットに、このようなものが入っておりました。一緒に処分してもよろしいでしょうか」 差し出された手のひらにあったのは、俺が冴に贈るために買った、あの栞だった。 黒瀬の瞳が、その小さな落とし物をじっと射抜く。彼は透明な袋に収まったままのそれを無造作に摘み上げた。 「これは預かる。服は予定通り処分しろ」 再び扉が閉じ、密室に戻る。黒瀬は栞を俺の目の前に翳し、検分するように眺めた。 「今日は後堂と美術館に行ったと、報告を受けています。……これは、彼に買ってもらったものですか?」 有無を言わさぬ圧。俺は必死で「俺が一方的に買っただけ」と首を左右に振った。 「そうですか」 黒瀬は短く応じると、栞のプレート部分に親指を添え、みしりと力を込めた。 「やっ……やめて、壊さないで、お願い!」 悲鳴に近い叫びが俺の喉を突いた。黒瀬はぴたりと指を止め、慈しむような笑みを浮かべる。 「後堂への贈り
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第72話 「大事」にしたかった

呆然と目を見開く俺の前で、黒瀬はわざとらしく眉を下げてみせる。 「ごめんなさい。手が滑りました」 言葉を失い、絶望に打ちひしがれる俺をよそに、彼は折れた残骸をゴミ箱へと放り捨てた。 乾いた音が、俺の中で何かが死んだ音のように響く。 彼は何事もなかったかのように俺の体の上に重なり、耳元で熱を孕んだ吐息とともに甘く囁いた。 「――昔、二人で童話を読んだのを覚えてますか?」 黒瀬の、熱に浮かされたような指先が、這いずる蛇のように俺の腿の付け根をなぞる。 「王子様とお姫様が、最後にはいつまでも幸せに暮らしました……という、あの美しい物語。美森様は何度も、幼い俺に読み聞かせてくれましたね」 忘却の彼方にあった、ささやかな記憶。 黒瀬がそれを呪いのように大切に抱え続け、今この瞬間のために研ぎ澄ませていたのだと悟り、俺は戦慄に目を見開いた。 「だから……俺たちも、あの物語の通りに」 黒瀬の瞳が、狂気的な充足感でゆらりと揺れる。彼は俺の頬を伝う涙を、愛おしそうに舌で舐めとった。 その眼差しは、慈愛に満ちているからこそ、底知れぬ深淵の暗闇を感じさせた。 「“いつまでも、ずぅっと幸せに”暮らしましょうね?」 逃げ場を塞ぐように、黒瀬の手が俺の身体の最も奥深くへと、所有を宣言する強さで食い込んだ。 圧し掛かる質量が、逃れられない絶望となって俺を塗り潰していく。 (――お願い。冴、助けて……っ) 届くはずのない名前を、心の奥底で血を吐くように叫ぶ。 いま、俺の心を繋ぎ止めているのは、冴がくれた体温だけだ。不器用な優しさ。 俺を見つめる、真っ直ぐで愛おしげな瞳。 強引に引き寄せてくれた、あの腕の熱。 「俺たちの物語は、途中でページを閉じることも、読み止めることも、もう二度と許されないのです。栞がなくても、俺がこうして貴方の身体に直接、消えない『しるし』を刻んで差し上げます。……そうすれば、貴方がどれほど深く俺に愛されているか、二度と思い出せずに済むことはないでしょう?」 冷たい指先で顎を強く掴み上げられ、強制的に視線が固定される。 目尻から溢れ出した涙を、黒瀬の熱い舌がねっとりと、執拗に絡めとる。 俺は視界を絶望に濡らしながら、指一本動かす自由さえ奪われ、ただ天井を仰ぐことしかできなかった。
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第73話 黒瀬の過去

代々続く茶道の名家。その次期当主という座は、子供の背にはあまりに重すぎた。 物心ついた頃から一分の隙も許されない作法。 師匠の鋭い眼差し、そして両親からの無言のプレッシャー。 期待という名の型に、自分という「個」を無理やり流し込むだけの日々。 その渇いた日常に、一滴の雫のように安らぎをもたらしてくれたのが「美森おにいちゃん」だった。 浮世離れした美しさは、そこにいるだけで周囲の空気を清めるようだった。 この国の頂を形作る有力者たちが集う夜会。 豪華絢爛な装飾の中でも、香月の両親に連れられた彼は、儚げで――孤独だった。『はじめまして、香月美森です』 幼心に、彼が両親から真実の愛を注がれていないことは、肌で察していた。 そして、その空虚な心の隙間を埋めるように「後堂冴」がずっと彼に寄り添い、守り続けてきたことも。 後堂が彼にとって「だいじ」以上の「なにか」であることを悟った瞬間、俺の胸の底からせり上がってきたのは、ドロドロとした醜い渇望だった。 だいじな、弟。 おとうと。 その枠組みの中にいる限り、俺は永遠に彼の特別にはなれない。 俺以外の誰かが、いつか恋人や番として、彼を独占する。 その未来を想像した瞬間、俺の正義は死んだ。 (美森お兄ちゃんは、俺のものだ) 欲しいものは、どんな手を使ってでも手に入れる。 それは黒瀬の家に連なる人間たちの、遺伝子に深く刻み込まれた狡猾な本能だ。 父は時折、酒に酔うと、美森様の父親である香月祈里対して屈折した劣等感と執着を漏らしていた。『俺から、身体で香月を奪った後堂が憎い。香月のような美しく高潔なものは、徹底的に跪かせてこそ価値があるのに』 父の言葉は毒のように俺の耳に馴染んだ。 美しいものは、汚して、奪って、管理しなければならないという思想。 金、人脈、権力。 時には色恋や、自分という肉体さえも道具にして、黒瀬の先祖たちはあらゆるものを強奪してきた。 そして俺の全身にも、その濁った血はもれなく流れていた。『あ、美森おにいちゃん……見て。いま冴くんが女の子にキスした。あの子と結婚したくなっちゃったのかなぁ?』 ある時、俺は無邪気な子供の仮面を被り、そんな言葉を彼に投げかけた。 たったそれだけ。 毒の一滴が清水を濁らせるように、幼い二人の純粋な関係
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第74話 添い寝のはじまり

かつて美森様の父親、香月祈里は後堂嶺と恋に落ち、家を捨てる覚悟で絶縁を申し出たのだという。 だが、その願いは苛烈な折檻と暴力によって無慈悲に粉砕された。 結果として結ばれたのは、互いの子を婚姻させる「揺り籠からの契約」。 恋愛感情などという不確かなものではなく、血と利権を繋ぐ錆びた鎖。 国内で違法な産み分けと遺伝子操作まで行い、完璧な「番」を求めた果てに産声を上げたのは、皮肉にも二人の男児だった。 両家の期待を裏切り、計画を狂わせた「不備」にして「余剰」。 それが、この学園の誰もが憧れを抱く「美森様」の正体だ。 実家に帰るたび、彼は自尊心を剥ぎ取られ、邪魔者として扱われる。 俺はその度に、彼が削られていく様を、慈しむような貌をして飽きることなく眺めていた。 「……昔みたいに、添い寝してほしい時はいつでも呼んで?」 耳元で囁けば、彼は縋るように俺を見つめる。 幼い頃、互いの不安を溶かし合うように同じ布団で体温を分け合った夜が幾度もあった。 中でも忘れられないのは、俺が母親を失った夜の「添い寝」だ。 俺の母は、嫁入りした黒瀬家という針の筵に耐えかね、心を病んで別宅へ隔離された。 結局、母は『私は狂ってなどいない』と繰り返し、梁に縄をかけたらしい。 精神安定剤を大量に流し込み、意識を濁らせた状態での首吊りだった。 今でもハッキリと覚えている。 忍び込んだ別宅で、梁が軋む音。首に食い込む縄と倒れた椅子。 初めて人の死を目の当たりにした俺の心にあったのは、動揺でも悲しみでもなかった。 (やった……! これって、これって……。美森おにいちゃんが、ぜったいに僕だけを見てくれてるチャンスだ……!) ――俺は、彼の前で「可哀想な『だいじな』おとうと」を完璧に演じ続けた。 「っ、うぅ……お母様に会いたい、会いたいよ……」 「宗佑……そうだよね、寂しいよね。俺がぎゅってしてあげるから」 狙い通りだった。美森様が自分のことのように涙を流す姿が――たまらなく「愉快」で「嬉しかった」。 「ふ、うぅっ……ひぐ、っ……美森お兄ちゃん、もっとギュッてして。胸のところが苦しくて、おかしくなりそうなんだ」 「宗佑……」 母親の冷たくなった乳房よりも、美森様の温かな胸の中で一緒に泣ける時間の方が、俺にとっては数
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第75話 美森の兄

あの二人が、どのような糸に手繰り寄せられて再び結びついたのか。 まずは手飼いの使用人を動かし、静かに身辺を探らせる。 並行して父親へ現状を報告したところ、黒瀬の家が長年培ってきた情報の網が、一つの忌々しい推論を弾き出した。 ――後堂と香月の間で、互いの「息子」を駒とした、新たな盤面が再構築され始めている。 だが、待てど暮らせど詳細は掴めない。学園で顔を合わせる彼らは、日を追うごとに隠しきれない親密な空気を纏い、その静かな連帯の熱が俺の焦燥をひどく煽った。 業を煮やした俺は、真実の裏付けを自ら取るべく、休日の外泊許可証を寮監に叩きつけた。 向かった先は、古びた威厳を放つ香月家の本邸である。「黒瀬様、お久しぶりでございます。……ですが、あいにく旦那様と奥様は不在にしておりまして。折からの悪天候で新幹線も止まっておりますゆえ、今夜中のお戻りは叶わないかと」 玄関先で深々と頭を下げる使用人に、俺はあらかじめ用意していた仮面を被せる。「それは残念です。父から次の茶会に飾る花について、ぜひご相談したいと言伝を預かっていたのですが」 口を突いて出るのは、淀みのない滑らかな嘘の数々だ。困惑に眉を寄せる使用人の背後、廊下の奥から不意に柔らかな気配がした。「宗佑くん……?」「お久しぶりです、百合さん」 完璧な笑みを向けると、香月家の長男・百合は、見る間にその白い頬を朱に染めた。 学園を卒業し、現在は大学に通いながら、正当な後継者として父君からの絶大な信頼を得ている彼。 その「熱を帯びた反応」を見る限り、俺の狙いは的中した。 この男なら、喉元まで出かかった機密を引き出す鍵になる。「俺で良ければ、生ける花の相談くらいなら乗れるけど……。中へ入りなよ」「ありがとうございます。手ぶらで帰れば父に失望されてしまうところでした。助かります」 差し出された手を取り、俺は静かに、獲物の巣へと足を踏み入れた。 それからは、呆気ないほどだった。「っ……ん、あぁっ、宗佑く、……っ」 畳のい草が香る、閉ざされた茶室。 はだけた着物姿で、香月家の跡取りとしての矜持をかなぐり捨てた百合が、あられもない声を漏らす。 肉体の悦ばせ方も、黒瀬という家に生まれ落ちた自分は「ベッドマナー」として叩き込まれた経験がある。造作もないことの一つだった。「ちゃんと喉
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第76話 記憶を消す

「……そうですか」 その臀部の締め付けが緩んだ瞬間に思い切り平手を喰らわせると、百合は悲鳴を堪えながら、必死に俺を繋ぎ止めるように力を込めた。 一気に熱い飛沫を叩きつけ、百合は事切れたように畳へと倒れ伏す。 その姿を、冷めた眼差しで見下ろした。 わずかに足袋を履き、かろうじて腕に引っかかっているだけの乱れた着物。 そこには、香月家の若き跡取りとしての威厳など、塵ほども残っていなかった。「ありがとうございます。知りたかったことがようやく分かって、すっきりしました」 まるで何事もなかったかのように指先で衣服の乱れを整え、艶やかな笑みを浮かべて告げる。 その声に弾かれたように、百合が縋りつくような手つきでこちらへ指を伸ばした。「待って。行かないで……。……俺のこと、美森の代わりにしてもいい。だからお願い、また会うと約束して」 懇願するその声に歩みを止めず、肩越しに氷のように冷たい一瞥をくれた。「あいにく、性処理を自ら買って出るような男なら、他にも心当たりがあるんですよ。『そういうの』は学園にいた方がいつでも、扱き捨てられるので都合が良くて。……それとも他に、俺に売れるような『価値のある情報』でもお持ちですか?」 突き放すような俺の問いに、彼は言葉を失い、喉を鳴らして黙り込んだ。 背中にねっとりと張り付くような彼の絶望を無視して、一切の容赦なく、音を立てて障子を閉めた。 *** こうして俺は、香月家の最深部に隠されていた契約書――三十億の身請けという事実を突き止めた。 香月の父親は、想像以上に金に目が眩んでいたのか、あるいは持て余していた三男を体よく処分したかったのか。条件を上乗せして提示すると、驚くほど呆気なく、サインを書き入れた。 俺の父親からも「祈里という『おまけ』がついてくるなら、安い買い物だ」とお墨付きを得ている。 父にとっては、学生時代に自分を振った男への、歪んだ復讐心。 香月家を支配下に置き、内部から蠶食するつもりだ。 だが、父のそんな卑俗な野心など、今の俺にはどうでもよかった。 次期当主としての重責よりも、目の前で無防備に晒された、この白い肌を貪ること。 それだけが、俺の生きる目的のすべてだった。***「っぁ、ぅう……やだ、やだぁ……」 後堂の家から連れ去る形で迎えた、記念すべき初夜。 美森
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第77話 一生離さない

「あなたが彼を忘れるまで、この家からは出しません。食事も、排泄も、すべて俺が管理し、躾けます。今日から死ぬまで、俺が与えるものだけを食べ、俺の言葉だけを聞き、俺だけに愛でられてください」 その言葉を聞いた瞬間、美森様の顔から血の気が失せた。 たまらない。 その絶望の極致が見たくて、俺の下半身は猛り、さらに質量を増していく。 執拗に弄ぶ指先に、彼は恐怖と屈辱の混じった喘ぎ声を上げ始めた。「この身体、何度あいつに触らせたんですか?」「そ、そんなの、覚えてないっ……」 乾いた音が室内に響く。白い臀部を思い切り叩くと、彼は弓なりに身体を逸らし、絶叫した。 ボロボロと流れる涙。 可哀想だと思うが、ここで手を緩めれば彼は「嘘」で逃げられると誤学習してしまう。「覚えていないほど、何度も重ねたということですか? 毎日? 週に何回ですか?」「っ、うぅ……言いたくない……」 その身体に刻まれた「痕」はあまりに雄弁だった。 俺はさらに強く、何度も手のひらを振り下ろす。 うつ伏せにされ、もはや声も枯れ果てた彼が、震える声で俺に縋った。「言う! 言うから、もうやめて、お願い」はぁはぁと息を切らし、頬を恥ずかしそうに赤らめながら涙目で答えた。「毎日シてた……」「でしょうね。夜だけですか?」「……朝も、たまに……」 その答えを聞いて、苛立ちが体を突き抜けそうになる。「なるほど、可愛らしい顔をして登校する数時間前まで、あの男に喘がされていたわけですか。親衛隊が聞いたら泣くでしょうね」 大量の錠剤が入った瓶を手に取り、その一粒を口移しで水で流し込もうとするが、彼は激しく抵抗し、口の端から水を溢れさせて拒絶した。 その強情さに苛立ちを覚え、俺は彼の鼻を摘んで強引に口を開かせ、数錠の粒を無理やり喉の奥へと押し込んだ。 飲ませすぎたらトぶかもしれないと思ったが、時既に遅しだ。「ん、ぅう! ……ぅ、げほっ」 必死に吐き出そうとするが、薬は非情にも食道を下っていく。彼は力なく泣き崩れた。 俺は、その震える双丘の間に顔を埋める。「……あ、っ、や……そこ、は、だめぇ……っ!」 俺は逃がさない。彼の白い臀部を両手で力任せに割り開き、最も無防備で、そして後堂に散々弄ばれたであろうその秘部を曝け出させた。 恐怖に小さく震えるそこへ、俺はためらうことなく舌
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第78話 誰か助けて、ここから出して

結腸の窄まりを強引に突破し、内臓の奥底を直接蹂躙する異物の質量に、美森様は激しく痙攣した。 視界は白く染まり、唾液を溢しながら、逃げ場のない快楽と苦痛の濁流に呑み込まれていく。 彼の中で、今度こそ「冴」という名前が、俺の熱によって焼き消される。 限界まで張り詰めた欲望が、爆発の瞬間を迎えた。 俺は美森様の腰を千切れるほど強く掴み、彼の胎内の最も深い場所へ、堰を切ったように熱い白濁を解き放った。「――っ、あ、ぁ……っ!!」 ドクドクと、脈打つたびに注ぎ込まれる大量の種。 内臓を熱湯で満たされるような衝撃に、美森様は弓なりに背を反らし、絶頂と絶望の極致で白目を剥いたまま崩れ落ちた。 注がれた種は、溢れることさえ許されないほど深い場所に、重く溜まっていく。 それは彼を「黒瀬の所有物」として繋ぎ止める、消えない錨だ。「……愛していますよ、美森様」 ついに手に入れた、俺だけのお姫様。 たとえ彼が俺を憎もうと、その魂が絶望に染まりきろうと、構わない。 俺が欲しかったのは、対等な愛などという空虚なものではない。 黒瀬宗佑という欠陥だらけの人間が、この世界で唯一「所有」を許された、美しく壊れかけた宝物。 その呼吸を、心臓の鼓動を、未来のすべてを支配すること。「ね? 幸せでしょう?」 頬を寄せて囁けば、彼はもう、拒絶する力さえ残っていなかった。 ようやく、俺たちの「いつまでも幸せな」物語が始まったのだ。 たとえそのページが、どれだけ血と情欲に汚れ、二度と開けないほど無残に癒着していようとも。***【side:香月美森】 あれから、もう何日が過ぎたのだろう。 二週間近くが経ったようにも感じるし、あるいはまだ一週間と少ししか経っていないのかもしれない。 カレンダーも、テレビも、スマートフォンも。外界と繋がるあらゆるデバイスを奪われたこの家で、俺が「今日」という輪郭を掴む術はどこにもなかった。『それでは、いってきます。美森様、いい子で待っていて下さいね』 平日の朝、黒瀬は車で高速を飛ばし、何食わぬ顔で学園へと登校していく。 そして夜になると、獲物を待つ蜘蛛のように必ずこの「家」へ戻ってきた。 日中は、黒瀬家の使用人が常に二人以上、監視として配置されている。 与えられた部屋と水回り、キッチンの行き来だけは許されていたが、玄関へと
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第79話 この家で生きていくため

すると、黒瀬は何かが切り替わったかのように「本当にお優しいですね」と目元を緩めた。 そして俺を愛おしそうに抱き上げ、耳元で毒を吐く。『これで分かりましたか? また使用人を誘惑すれば、あなたの目の前で彼らを裏の崖から突き飛ばします』『ごめんなさい、もうしない。もう絶対にしないから……』 泣きながら頷く俺に、黒瀬は「知らない男に組み敷かれて、怖かったでしょう?」と甘く囁く。『そ、宗佑……』『さぁ、風呂場で身体を綺麗にしましょうね。セックスはそれまでお預けです』 それは決して慰めなどではなく、俺の魂に絶望を塗り重ねるための呪文だった。 *** 「ただいま帰りました、美森様」 ドアが開く。 制服姿の黒瀬に対し、シャツ一枚しか与えられていない俺は、シーツの上で、教え込まれた通りの表情を作って答えた。「……おかえり、宗佑」 頬を緩め、愛らしく見えるように微笑んでみせる。 それを見て黒瀬は満足げに目を細めた。「……寂しかった、ギュッてして」 心にもない甘い声を出すのは、俺がこの数日で学んだ唯一の処世術だった。 黒瀬の機嫌を損ねれば、食事は止められ、手痛い「躾」という名の暴力が振るわれる。 ならば、彼が望む完璧な人形を演じるしかない。 愛想笑いを浮かべ、彼が喜びそうな言葉を喉から絞り出す。 それが、ここで俺が生き延びるための苦肉の策だった。「寂しい思いをさせてしまって、ごめんなさい。あと少しの辛抱ですから。……卒業したら、死ぬまでずぅっと一緒にいましょうね」 悦に浸る黒瀬の前に膝をつき、俺は慣れた手つきで彼のベルトを外し、ジッパーを下ろした。 あぁ、またかというどこか冷めた気持ちを抱えながら、顔も言葉も作り込む。「宗佑、俺ももう我慢できない。舐めてもいい……?」「構いませんよ」 言葉だけでは彼は信頼しない。 下着越しに鼻を寄せ、熱を含んだ布地に口付ける。 媚びるように、何度も何度も目を見つめて食むと、黒瀬はふっと小さな笑みを浮かべた。「宗佑の匂い、する……」「可愛いことを言ってくれるのは嬉しいです」 頭を撫でる彼に、子猫のように擦り寄る。「……うん、宗佑のこと大好きだから、早くセックスしたかったの」 自らシャツを脱ぎ捨て、黒瀬を誘惑した。 どうしても、ここから抜け出す「きっかけ」を掴まなければならない。
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第80話 今の俺を冴が見たら

「っ、ごほっ……! げほっ、……ぅ」 生理的な涙が溢れ、視界が滲む。 喉の粘膜を直接蹂躙される凄まじい圧迫感に、内臓がせり上がるような不快感が襲うが、彼は止めてくれない。 それどころか、咽び苦しむ俺の顎を万力のような力で掴み、固定した。 「逃げない、ですよね?」 「に、逃げない。宗佑のことが大好き、毎日二人で暮らせて幸せだから」 往復運動が繰り返され、やがて熱い塊が喉の最奥に叩きつけられた。 熱を帯びた白濁が、口腔内に溢れ出す。 精液独特の青臭い匂いが鼻腔を突き抜け、黒瀬はゆっくりと自身を引き抜くと、俺の顎をくいと持ち上げ、覗き込むように囁いた。 「美味しいですか? ……ほら、ちゃんと俺に、お口の中に溜めて見せてください」 俺はコクコクと力なく頷き、言われるがままに「れぇ」と舌を出した。 赤い舌の上で、ドロリとした精液が糸を引いている。 その屈辱的な光景を、黒瀬は恍惚とした表情で眺めていた。「いいですよ、もっとよく見せて。……次は、もぐもぐ、くちゅくちゅは?」 幼子を躾けるような、残酷なまでに優しい声。 俺は逆らう術を持たず、口を閉じて、その熱い粘液を咀嚼するように動かした。 口内に行き渡らせ、泡立てるように左右に、何度も。 くちゅ、ぐじゅ、という卑猥な音が静かな部屋に響き、自分の尊厳が音を立てて崩れていく。 黒瀬は満足げに俺の頭を撫で、慈しむような眼差しで命じた。 「良い子。……さあ、一滴も零さずに、飲み込んでいいですよ」 彼の支配は、もはや皮膚の上だけでは足りない。 内臓の奥、意識の深淵まで、黒瀬宗佑という毒で満たされなければ、彼は満足しないのだ。 潤滑もない、荒れ果てた窄まりに熱い質量が無理やり食い込む。 腹の奥が焼けるように痛み、汚された感覚が消えなくても、黒瀬は必ず「生」で俺の深い所を汚し続けた。 「すっかり卑猥な形になりましたね。もう少しで縦に割れそうで、本当に愛らしい……縁も盛り上がって、ぷっくりしてますよ」 今の俺を見たら、冴は……なんて思うだろう。 その名を一度でも口に出せば、とんでもない折檻が待っている。 だから、俺は引き裂かれるような痛みと絶望の中で、心の中だけで何度も、何度も、冴の名前を叫び続けていた。 *** 明け方まで散々身体を嬲
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