「え……? アメリカの、大学院?」 驚きを隠しきれず、思わず冴の横顔を凝視する。 アメリカ。確かに目指しているとは言っていたけれど、有言実行するなんて、俺は一度も相談されていない――。 俺の動揺を察したのか、冴は少しだけ眉を下げ、目を細めた。 「美森、まだ話していなかったな」 「……本当だよ。俺、何も聞いてないんだけど」 少しだけ声が尖ってしまったかもしれない。 驚きと、ほんの少しの寂しさが胸を掠める。 冴は俺の左手をテーブルの下でそっと包み込み、耳元で低く囁いた。 「すまない。隠すつもりはなかったんだ。ホテルに戻ったら、詳しく話す」 その真摯な瞳に見つめられると、それ以上は何も言えなくなる。けれど、向かいの席のツッコミ担当がそれを逃すはずがなかった。 「おいおい新婚初日から重大な密約かよ! 報連相がなってないぞ、旦那さん!」「やめろ、茶化すな」 玲央がニヤニヤしながらすかさず突っ込んでくる。さらに苑真が、大袈裟に両手を頬に当てて悲鳴をあげた。 「え〜! 冴もアメリカ行っちゃうの!? 玲央と二人でニューヨーカー気取り? ずるい、俺も混ぜてよ! ベルリンで一人ぼっちにされたら、寂しくて死んじゃう!」 「お前は寂しがりのウサギか。つーかアメリカのどこだよ、国が広すぎるわ!」 玲央が間髪入れずに叩くと、冴は淡々と答えた。 「玲央の声は州を跨いでも届きそうだな」 「なにそれ、わざわざデンマークに来てまで俺のこと馬鹿にすんの!?」 声を揃えて突っ込む玲央と苑真の姿に、胸の奥のモヤモヤが一瞬で吹き飛んでいく。 冴がアメリカに行く。その事実にはまだ驚いているけれど、冴が自分の未来を、そして俺たちの未来をどう描いているのか、後でじっくり聞けばいい。 場所が変わっても、俺たちはそれぞれ違う空の下で生きていても、こうして集まれば一瞬で高校時代のあの距離に戻れる。その絶対的な安心感が、今の俺にはたまらなく愛おしかった。 『Her er vores klassiske æbletærte, serveret med hjemmelavet vaniljeis.』 (当店自慢のリンゴタルトと、自家製バニラアイスクリーム添えでございます) デザートに運ばれてきたのは、リンゴのタルトにバニラアイスクリーム。薄切りにされたリンゴが、まるで大輪
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