Все главы 死ぬほど大嫌いな幼馴染と、政略結婚することになりました。: Глава 61 - Глава 66

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第61話 【side:香月祈里】①

【side:香月祈里/美森の父】 「……それで、こんな夜更けに何の用?」「息子たちの結婚、あの契約のことだ。 ……お前にとって、そう悪くない話が出てきた」 深夜、人目を忍んで別邸へと呼び出され、忠実な使用人である棗を叩き起こしてまで馳せ参じる自分を、つくづく馬鹿な男だと思う。 鳳里の高等部時代から、俺の人生はいつだってこの男に掻き乱され、翻弄されてきた。 目の前に突きつけられた提案書。そこに記された無機質な数字と名前を目にした瞬間、俺は思わず紙を握りつぶしそうになった。「話が違う……」「そうやって眉を吊り上げるだろうと思ってたよ。 いいから、座って冷静に聞け」 目の前で細い煙草を燻らす男――後堂嶺を見上げる。 紫煙の向こう側にあるその横顔は、苛立つほどに優雅な余裕を湛えていた。 俺の激情さえも、彼にとっては織り込み済みの余興に過ぎないのだ。「どこから嗅ぎつけたのか、黒瀬の家がこの縁談に首を突っ込んできた。この婚約を破断にする代わりに、後堂の負うべき違約金をすべて肩代わりし、さらにお前の家に三十億を積んで美森君を次期当主の嫁に迎えたいそうだ」「後堂はどうなる。……冴君の結婚相手はどうするつもりだ」「正直なところ、香月の息子よりも条件の良い相手など、いくらでもいるからね。俺がお前にこの結婚を提案したのは、ただ『お前』がそこにいたからだ。金に困っているのなら、黒瀬と結びついても構わない。そう言っている」「俺を……また捨てるつもりなの?」 弾かれたように立ち上がり、嶺のネクタイを力任せに引き絞る。 見下ろされる視線の冷たさに心臓が跳ねた。けれど嶺は、まるで壊れ物を扱うような手つきで、慈しむように俺の頬を撫でる。 その唇に浮かんでいるのは、この世のものとは思えないほど残酷で、甘い笑みだった。「捨てはしないよ。美森君が黒瀬の息子と結ばれても、お前のことは変わらず愛してあげる。子供同士の縛りなどなくても、俺はお前を繋ぎ止めておける。そんなに怯えなくてもいいのに」「……自分たちでは添い遂げられないから、子供同士を繋がせて、目に見える形で俺との絆を残すと言ったのはお前だろ。お前の妻が不出来だからと、俺に三人も子供を作らせたくせに……俺の絶望が、お前に分かるの?」「だから、それは何度も謝っ
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第62話 【side:香月祈里】②

百合、雲雀、美森。 嶺が「作れ」と言ったから、妻に産ませた子供たち。 その背景を幼心に悟ったかのように、常に俺の顔色を窺い、機嫌を取ろうとする息子たちが、俺はたまらなく鬱陶しくて仕方がなかったのだ。 ――もしも、こんな立場ではなかったら。 ――もしも、俺が男ではなかったら。 すべてを捨てて、嶺と二人きりで駆け落ちし、飢えた獣のように貪り合い、添い遂げる人生を送りたかった。 そんな叶わぬ夢の残骸が、今の香月の当主となった俺を突き動かしている。「……冴と美森くん。俺たちの息子たちには、いつ伝えるつもり?」「さあな。今度、あの二人が俺たちの機嫌取りをするために、睦まじいふりをして出かけた帰りにでも、現実を突きつけてやればいい」「随分と投げやりだな」「煩わしい契約から解放されるんだ、大喜びするんじゃないか? ……冴には、もっと条件の良い駒を当てがうよ。金次第でどうにでもなる。黒瀬との交渉は俺が完璧に差配してやるから安心しろ」「……できるだけ早く番わせて。黒瀬に行くなら、もはや学園に通わせる意味もない。あそこは後堂の真似事をして、先進的な家柄を気取りたいだけだ。飾り物の配偶者にするなら、さっさと中退させて、黒瀬の檻にでもぶち込めばいい。金は貰っても、俺はあの家に靡くつもりはないから」 吐き捨てるような俺の言葉に、嶺は「わかったよ」と艶然と微笑んだ。 そのまま、使い古された革張りのソファーに俺を押し倒す。 互いに「お飾り」の妻を娶ってから、何度ここで肌を重ねただろうか。 ビジネスや密談を口実にして、昼となく夜となく、正妻よりも深く、執拗に愛し合ってきた。「……愛してるよ、祈里」 耳元で囁かれるその声は、甘い毒薬のように俺の全身を麻痺させる。 ずっと手元に飾っておきたい蝶ならば、捕らえて、殺して。 その美しい翅を広げたまま鋲で刺し、標本にしてしまえばいい。 いつかきっと、そうするつもりで生きてきた。 俺は本当にこの男を殺してしまうだろう。 そう確信させるほどの狂気じみた情念を、何十年も抱え続けてきた。 “家を出て、後堂の息子と結婚したいだと? ふざけるな! 香月の家を何だと思ってる! そんなこと、あってはならない。 高校を卒業したら、すぐに嫁を取らせる。 子供を孕ませろ。後堂にもそうさせる。 男の跡取
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第63話 メイド服と文化祭

鳳里高校の広大な敷地を埋め尽くすのは、熱を帯びた喧騒だった。 渡り廊下のど真ん中で、俺と玲央の足はまたしても止まった。行く手を阻むのは、掲げられた無数のスマホのレンズと、獲物を囲む野次馬の群れだ。「あー、ダメダメ! 撮影禁止! プライバシーに関わるからな、SNSに無断転載したらタダじゃおかねーぞ!」 海外の警察官を思わせるタクティカルな衣装を完璧に着こなした玲央が、慣れた手つきで群衆を制止する。その鋭い眼光と威圧感のある立ち振る舞い。 そんな玲央が三歩歩けば黄色い悲鳴が上がり、五歩歩けば人だかりができる。 生徒会室までの短いはずの道のりが、今の俺たちにとっては、行軍にも等しく感じられた。 あぁ、面倒くさいな。早く、ソファーに座って休みたいのに……。「玲央、サマになってるよ。格好も、その威圧的なセリフも」「美森〜、お前なぁ……! 呑気なこと言ってんじゃねーよ。この人だかりの半分は、お前のその格好が原因なんだからな!」 玲央が振り返り、噴火寸前の形相で吠える。「そうかな? 玲央と撮りたがってる子も大勢いると思うけど」「知るか! つーか、なんなんだよお前のその姿は。誰の発案だ? さっきっから、すれ違う野郎どもが下半身抑えて悶えてんぞ。公害レベルの『エロ可愛い』を撒き散らしてんじゃねーよ」「なにその小学生みたいな言い方。俺だって想定外だよ。親衛隊の奴らに『今回だけは』って拝み倒されたんだから」 俺が今まとっているのは、鳳里高校の紺に白線が入った指定ジャージの上から、これでもかとフリルをあしらったエプロンと水色のスカートを重ねた――いわゆる「メイド」だった。 膝上十五センチ。足捌きを良くするためか、あるいは誰かの執念か、危ういほど短い裾の下には、薄水色のリボンが付いた白いニーハイソックスが絶対領域を描いている。 目の下には小さな星のホログラムが煌めき、ハートのヘアピンで留められた前髪。 剥き出しになった額が、どこか無防備で心許なかった。「マジで誰の性癖だよ。羽鳥か? メイドにするにしても、もっとこう……格式高いのはなかったのかよ」 玲央の呪詛に応えるように、廊下の角から一人の男が滑り込んできた。 俺の親衛隊隊長、羽鳥だ。「美森様! お待ちしておりました~! ああ、なんと麗しい……。大変恐縮ですが、文化祭終了後、親衛隊員限定の
last updateПоследнее обновление : 2026-05-16
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第64話 生徒会室でのひととき

「……おい、一体何なんだよ、その格好は」 まぁ、この反応は想定内だ。 片手に持っていたファイルから数枚のプリントを取り出すと、俺はそれを机に置いて溜息をついた。「俺もよく分かってないんだけど。羽鳥がいうには『ジャージメイド』って言うらしいよ」 不機嫌な王様を宥めるように答えると、俺は冴の隣にどっかりと腰を下ろした。「おい。脚を開いて座るな」 さっ、とたしなめるように膝を手で閉じあわされる。 その動作がちょっと鬱陶しくて、俺は眉根を寄せて冴を睨みつけた。 本当に怒っているわけじゃないけれど、指摘されたことが恥ずかしいのと、大事にされているのが分かって、それを二人の手前、誤魔化したい気持ちが勝ってしまったゆえの表情だった。「なんで? 別に下に短パン履いてるからいいじゃん。俺がいきなり内股で座ったら、それこそ気味が悪くない?」 俺は冴の説教を遮るように、学園から差し入れられた幕内弁当の袋をガサゴソと漁る。「まったく、美森。お前って奴は……」 冴が深く額を押さえた。 次の瞬間、彼は自分のブレザーを乱暴に脱ぎ捨てると、俺の剥き出しになった腿にそれを被せた。そのまま視線を明後日の方向へ逸らす。「俺たち四人ならまだいい。だが、いつ来客があるか分からないんだ。せめて、それで隠しておけよ」 不器用で、独占欲の滲む優しさ。 本当に付き合い始めたら、相変わらず言い合いは減らないけれど……こんな風に気遣ってくれるのだと知って、やっぱり嬉しさを隠せなくなる。 それを目の当たりにした玲央と苑真が、ここぞとばかりに茶化し始めた。「理性ぶってんじゃねーよ。どうせ内心、この後どう剥くか考えてんだろ」「寮に帰ったら、絶対その格好のままヤるくせにね。なんなら『ご主人さま♡』くらいは言わせるんだろ?」「……黙れ」 冴の低く冷ややかな制止を合図に、二人は肩をすくめて黙り込んだ。 だけど、その口端には面白がるような笑みが張り付いている。 俺たちは四人で弁当をつつき合った。 割り箸の割れる乾いた音、他愛もないクラスの出し物の噂話。俺が冴にお茶のペットボトルを「開けて」と差し出すと、彼は当然のようにそれを受け取ってキャップを捻り、「ほら」とぶっきらぼうに返してくれた。「せっかくだし、記念に写真でも撮るか」 玲央がスマートフォンを構えた。 インカメラに映る冴は
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第65話 本当の初デート

文化祭という狂騒が幕を閉じ、真夏の暴力的な熱気が校舎を包み始めた七月末。 もうすぐ夏休みが始まるという解放感の中、俺と冴は週末を利用して都内へと繰り出していた。 アスファルトから立ち昇る陽炎を逃れるようにして滑り込んだのは、一等地にある美術館だ。「冴、待って。そっちの展示も気になる」「急がなくていい。お前のペースに合わせるから」 冴はいつだって、俺のわがままを優先してくれた。 けれど、今日は俺の方から冴を誘ったんだ。たまには彼が愛する、深く静かな世界に触れてみたかった。 そこで開催されていたのは、ジョン・エヴァレット・ミレーの展覧会。 一枚一枚の筆致を網膜に刻むように、じっくりと歩を進める冴。 気になった作品の間を、軽やかに縫うように歩く俺。 対照的な鑑賞スタイルの果てに、二人の足が同時に止まったのは、あのあまりに有名な『オフィーリア』の前だった。 水底へと沈みゆく乙女の瞳は虚ろで、その唇は歌を口ずさむかのように微かに開いている。 溢れんばかりの色とりどりの花々に囲まれ、緩やかに川を流されるその姿は、狂気と死の気配を纏いながらも、目を逸らすことを許さないほどに美しかった。「ケシ、スミレ……。こっちはヒナギクかな」 描かれた花々をなぞるように目で追っていると、ふと隣にいた冴の表情が、春の陽だまりに触れた時のように柔らかく緩んだ。「……? なんで笑ってるの?」 その逞しい腕に手を絡めて覗き込むと、冴は俺を見つめ返し、慈しむような、けれどどこか切ない響きを含んだ声で答えた。「俺が最初にお前を好きになった瞬間と……今の横顔が、あまりに重なっていたから」 一瞬、意味が分からず言葉を失ってしまった。俺の記憶にはない、幼い頃の断片。 けれど、冴にとってはそれが「本物」の恋に落ちた原風景なのだと、揺れる瞳が物語っている。 冴がそんな風に、俺との時間を心の中で、まるで壊れ物を守るように温め続けていた。 その愛情の深さを知るたびに、俺の胸の奥には「愛おしい」という熱い感情が、染み渡るように広がっていく。(……その頃からずっと……俺のことが、好きだったってことなんだよな……) きゅ、と手を絡めた指先に力を込める。 冴はそれが少しだけ意外だったのか、目を丸くしてからぞっと手の甲を指先で撫でてくれた。 出口付近のミュージアムショップ
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第66話 婚約の破棄

*** 結納の儀の際と何一つ変わらない、隅々まで磨き上げられた後堂の本邸。 出迎えた冴の父親は、精巧な仮面を貼り付けたような薄ら寒い笑みを浮かべ、俺たちをその深奥へと招き入れた。 俺と冴の間に流れる、隠しきれない親密な空気。 それを値踏みするように細められた瞳には、一滴の温もりも宿っていない。 「どこから見ても、まるで本物の恋人同士だ。……二人とも、契約を忠実に守っているね。やはり我々の息子たちは、最高に優秀な駒だということがよく分かるよ」 白々しい。すべてが計算ずくの賞賛だと分かっているのに、背筋に冷たい氷を這わされたような感覚に、思わず肩に力が入る。 冴の父親は、俺たちの強張った様子を愉しむように、奥の応接間へと促した。 運ばれてきたコーヒーの芳醇な香りが室内に広がる。 しかし、正面に座り、足を組んで書類を繰る彼の口から漏れたのは、その香りを一瞬で遮るような言葉だった。 「君たちの努力には感謝している。……だからこそ、実に心苦しいのだが。後堂家と香月家で協議した結果、この婚約は破棄することに決まった」 あまりに軽々と放たれた言葉に、俺と冴は、あの日と同じように絶句した。 動揺を隠せず、縋るように冴の顔を見やる俺に、父親は「驚かせてすまないね」と慈愛を装って微笑む。 だけど、隣に座る冴の声は、地を這うような冷徹さを帯びていた。 「……どういう風の吹き回しだ。今さら、何のために」 「破棄、というか……『再編』と言った方が正しいかな。実は後堂の方に、香月家よりも潤沢な資金源を持ち、将来的に強固な益をもたらす相手から縁談の申し出があった。 だが、そうなると香月家に多額の違約金を支払わねばならない。……ところが、その負債を丸ごと肩代わりし、さらに積みたいと言ってくれる家が現れてね」 情報量が多すぎて、思考が追いつかない。俺を置き去りにしたまま、冴の父親は手元の書類を指先で無造作に弾いた。 「香月への違約金を支払い、さらに金を積んででも、美森くんを『身請け』したいという家だ。つまり、すべての不都合が帳消しになり、より大きな利潤が舞い込んできたということだ。……冴、美森くん。それぞれに、より相応しい婚約者が現れた。我々両家は、この実利豊かな提案を全面的に受けることに決めた」 婚約解消。そして、お互いに別々の
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