「彩葉、お久しぶり。美月よ。帰国することになったから、身代わりサービスを終了したい。契約上、サービス期間が五年を超える場合は、身代わりに一ヶ月の引き継ぎ期間が設けられるんだったわよね?」長谷川彩葉(はせがわ いろは)は一瞬、呆然と立ち尽くした。自分と瓜二つのこの声を耳にするのは、実に七年ぶりのことだった。七年前、神崎美月(かんざき みづき)は身代わり専門の事務所を訪れ、そこにいた女性たち全員に「光希」という名前を呼ばせた。彩葉が声を発した瞬間、美月はその場で彼女を身代わりに即決した。サービス期間は、美月自身が帰国する、あるいは結婚するその日までと定められた。それからの一週間、彩葉は美月に付きっきりで、彼女のファッションセンスや生活習慣など、すべてを徹底的に叩き込まれた。「そうそう、私の誕生日は七月二十日なの。覚えておいて、これからはあなたの誕生日もこの日になるわ」契約上、身代わりはありとあらゆる面で雇用主と完全に一致させなければならないのだ。訓練を終え、ふとした仕草や佇まいに自分の影を宿らせた彩葉を見て、美月は満足げに頷いた。結城光希(ゆうき こうき)のそばに自分を連想させる存在を置いておけば、どれほど年月が流れようとも、彼が自分を忘れることなどあり得ないからだ。そうして彼女は、別の男のためにあっさりと海外へと飛び立っていった。「彩葉?ねえ、聞いてる?」電話越しに返事が得られず、美月の戸惑う声にはわずかな苛立ちが混じっていた。彩葉は気持ちを落ち着かせ、久しく使っていなかった恭しい口調でこう言った。「はい、神崎さん。サービス期間が長期に及んだため、後々神崎さんの生活に悪影響を及ぼさないよう、私どもが立ち去るための準備期間がどうしても必要になります」「分かった。この七年間ご苦労様。一ヶ月後、彼の目の前からきれいに消え去ってちょうだい」通話が切れ、彩葉の茶色の瞳から、わけもなく涙がこぼれ落ちた。きれいに消え去る、か。「彩葉、お前……また辛くて泣いてるのか?」不意に光希が部屋に入ってきた。彼は困ったように笑いながら、手慣れた動作でティッシュを手に取ると、彼女の涙を拭った。その口調は、心底痛ましそうだった。「お前はいつもこうだ。辛いものが苦手なくせに、どうしてそんなに強がるんだ?」このセリフを、彼はこ
Mehr lesen