公演当日、海市大劇場は満席で、すごい熱気に包まれていた。通路まで人で溢れかえるほどの大盛況だった。瑞樹は花束を手に、客席でそわそわと舞台を見つめていた。見慣れた姿を探す。しかし、全ての公演が終わり、会場に明かりが灯っても、直美を見つけることはできなかった。もしかして、直美は国立特級芸術アカデミーにいないのだろうか?焦った瑞樹は裏口へと走り、一人の出演者を呼び止めた。「すみません。松浦直美というダンサーはいますか?」その人は一瞬きょとんとしたが、こう答えた。「ええ、いますよ」瑞樹の目に希望の光が灯る。「今はどこにいますか?」「松浦さんなら、怪我で入院中です。今回の公演には参加していないはずです」「えっ?怪我ですか?どこを怪我したんですか?」相手が言い終わるよりも早く、背後から声が飛んできた。「宮本先生、急いで病院に戻ってください!大変なことが起きています!」瑞樹は病院の同僚たちに引っ張られるようにして、慌ただしく病院へ戻る羽目になった。到着すると、結香が慎也を抱え、泣き叫んでいるのが見えた。「なんて惨めな人生なの……誰が私を守ってくれるのかしら?なんでみんなしてこのしがない私をいじめるの?」瑞樹はそれを見て、すぐに駆け寄った。「白石さん。一体どうしたんだ?何かあったのか?」以前、結香と話し合いを持って以来、彼女はもう連絡をしてこなかった。だから、結香も理解してくれたのだと思い、瑞樹は特に気にしていなかった。なのに、今日は一体何をしに来たんだ?結香が瑞樹の胸ぐらを掴む。「瑞樹、ようやく来たね。責任を取ってよ!今の私にはあなたしかいないの。もし私を捨てるっていうなら、慎也を抱いて川に飛び込むから!」結香の嘆き声で、すでに周囲には野次馬が集まっていたのだが、瑞樹が現れたことで、彼らの注目は一気に増した。男女の情事のもつれということは明らかだった。医者とシングルマザーの恋物語とは、これまた興味深いと野次馬たちは盛り上がる。次々と人が集まり、周囲は話の経緯を大体察し始めた。「自分で蒔いた種なんだから、知らんぷりするなんて卑怯じゃないか。それに、親子を見捨てるなんて可哀想だろ」「堅物の先生かと思っていたけど、裏じゃかなりのことしてたんだな。人は見かけによらないってこのこ
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