その夜、晴香は法外な金額で、チャリティーオークションに出品されていたほとんどの品を競り落としていた。聡の金は、もはや底を尽きかけていた。帰路につく車内、聡はずっと不機嫌そうだった。彼が怒っていると察した晴香は、わざと何度か吐き気を催すような素振りを見せた。「どうしたんだ?」「なんでもないわ、ちょっと気分が悪くて」「きっと妊娠のせいだな。悪い、もっとゆっくり運転するよ」「うん」晴香は小さく頷き、窓の外の景色に視線を向けたまま、黙り込んだ。家に帰ると、聡はまた晴香に触れようとしてきた。しかし、晴香は妊娠を理由に、彼を拒んだ。聡は晴香が妊娠していることを少しも疑わず、彼女の言葉を信じていた。先月、欲求を満たすために無理やり関係を持ったのだから、当然のことだ。「これからは、お前と子供を養うために、もっと一生懸命稼がないとな」聡は晴香を寝かしつけた後、書斎へと向かった。晴香は窓から差し込む月光を見つめながら、一睡もできなかった。翌日、聡の秘書から、例の株式譲渡にまつわる契約書が届いた。次は、聡をグループの社長の座から引きずり下ろし、取締役会から完全に追放することだ。山口グループの社長を、他の人間にやってもらう。聡が出社した後、晴香は山口グループの第2株主である聡の弟、山口勇太(やまぐち ゆうた)に連絡を取った。勇太はひねくれた性格で滅多に人と会わないため、簡単には会話できなかった。「どなたですか?」二人の男に個室の入り口で阻まれると、晴香は息を深く吸い込んで告げた。「勇太さんに用があります。晴香が山口グループの経営に関わる、ある大事な相談をしに来たと伝えてください」男は冷ややかな目で晴香を一瞥した。「そこで待っていてください」しばらくして、男が出てきた。「申し訳ございません。会わないとのことです」勇太が簡単には動かないと予測していた晴香は続けた。「勇太さんが喉から手が出るほど欲しい情報があると言ってください。話ができるなら、どんな条件でも飲むと伝えてください」個室の中でそれを聞いた勇太は、鼻で笑った。「ほう?いいだろう、中へ入れ」勇太と対面すると、その妖しい瞳が暗闇の中で浮かび上がり、何を考えているのか読めなかった。しかし、晴香の姿を見ると、彼の口調にはどこ
Read more