로그인藤原渚(ふじわら なぎさ)が亡くなってから3年。その墓参りに向かっていた山口晴香(やまぐち はるか)は、途中で突然めまいを起こして倒れてしまい、同行した山口聡(やまぐち さとし)はすぐに救急車を呼んだ。 晴香が目を覚ますと、医者は晴香が膵臓がんで、余命1か月だと告げた。 医者の提案で心臓ドナーの同意書に署名した晴香は、それが聡の仕組んだ罠だと知ることになる。 聡は初恋の相手である渚の妹を救うため、医者を唆して晴香に末期がんだという嘘をつき、ドナーになるよう仕向けたのだ。 渚の死は自分のせいだと思い込んでいた晴香は、聡の嘘に気づいていながらも、罪滅ぼしのために彼が医者に用意させた致死性の薬を毎日欠かさず飲み続けていた。だがある日、渚の死が自分とは無関係だったことを知った。 ならば、もうこんな薬なんて飲むものか。この心臓も、誰にも渡さない。
더 보기日が西に傾き、晴香は空を見上げた。7日。今日がその7日目だった。命の終わりも、今日ということになる。「聡、覚えてる?言ったよね。私、一度死んだの。閻魔様と取引をして戻ってきたんだよ」晴香が青白く変色し始めた自分の手を、聡に見せた。聡は信じたくなかった。「晴香、もうやめてくれ。この世に閻魔様なんていないんだ」「信じるかどうかはあなた次第よ。私が輪廻転生できなくなる代わりに、7日間だけ人間として戻してもらった。今日が最後の日なの」晴香は深く息を吸った。「聡、人生で一番後悔してるのは、あなたに出会ったこと」「信じる、信じるよ!」聡はベッドから転げ落ち、晴香の腕をつかんだ。「どうすればいい?お前を助けるには何が必要なんだ?生き返らせる術はあるのか?」「私と同じ絶望を味わって、私の代わりに死んでくれる?」「いいだろう!」迷いなどなかった。聡が立ち去ろうとすると、瑶子が泣き叫んで彼を止めようとした。「聡、何を言ってるの!この女は頭がおかしいのよ。聡まで巻き込まれるなんて!」「母さん、口出ししないでくれ。晴香を絶対に失いたくないのだ!」瑶子を振り払い、聡は晴香を車に乗せ、海岸近くの別荘へ急いだ。止水栓を全開にし、水槽の中に立つことで、聡は自らの覚悟を晴香に示した。晴香のためなら、死んでもいい。そのくらい深く愛していると証明したかった。水が少しずつ胸元まで迫る。治りかけの傷口から鮮血が溢れ出し、水面が赤く染まっていった。死に急ぐ聡の姿を見て、晴香はあざ笑った。命を投げ出せば自分を救えると、本気で思っているのか?「晴香、見ていてくれ。絶対に生き返らせるからな!」水が彼の口元を、そして鼻を覆った。窒息感が聡を苦しめた。間違いなく、人生で味わったことのない辛い感覚だった。体が全て水に覆われていくのに、聡は少しも抵抗しようとしなかった。このまま溺れ死ねばいいのに、と晴香は思った。しかし、晴香自身の魂も肉体から離れ始めていた。朦朧とする意識の中、渚の姿が見えた気がした。「晴香、どうしてそんなことを?あんな男を殺したところで、晴香の手が汚れるだけ。彼が死んで償ったって、聡に晴香はもったいないよ」聡が息絶える直前、晴香の理性がふと戻った。彼女は残る力を振り絞って水槽へと飛び込み、聡を引きず
幸いなことに、晴香の願いは叶った。聡は死ななかったのだ。刺された傷は浅く、刃は心臓に届かなかったのだ。しかし、その容態は決して良いとは言えなかった。目を覚ますと、聡は一心に晴香の名を呼んでいた。晴香は遠くで聡を見つめていたが、心は微塵も動かなかった。瑶子が晴香を急かす。「耳が聞こえないの?聡が呼んでいるでしょ?」晴香は動じず、ただ静かに窓の外の太陽を見上げた。今日が人生の最後の一日だ。そして、勇太が聡を役員会から追放する日でもあった。この時をずっと待っていたのだ。「晴香……こちらへ来てくれ。顔が見たい」晴香は微笑んで答える。「ちょっと、お手洗いに行ってくるわ」晴香は最後まで、聡の側へ寄ろうとはしなかった。晴香が洗面所に行った後、聡のスマホが鳴り響いた。彼に代わって瑶子が電話に出る。「なんだって?勇太くんが聡を役員から追放するって?馬鹿な!聡は6割の株を持っているのよ。勇太くんはその半分も持っていないのに、どうやって聡を排除するというの?」「ご存知なかったのですか?副社長の持ち株はすでに7割に達しています。社長が持っている株はその足元にも及びません。今の役員たちは皆副社長に従っており、社長を変えさせるつもりですよ!」「そんなはずは……」瑶子は電話を切ると、ベッドに横たわる聡を振り返った。「聡、まさか勇太くんに自分の株を売ったのではないでしょね?」「勇太だって?」聡はかすれた声で答える。「売っていない。彼に株を売るはずがないだろう?株は晴香に渡しただけだ」「あの女に渡したというの!」瑶子はついに事態を悟った。「聡、騙されたのよ!あの女は受け取った株をすべて勇太くんに売り払ったわ!これであなたは役員会を追放され、山口グループで何の権力も持てなくなるのよ」聡は激昂した。「あり得ない!晴香がそんなことをするはずがない!晴香!晴香!」興奮して震える聡を見て、瑶子は必死になだめた。「聡、落ち着いて。手術したばかりなんだから、無理しちゃだめよ!」晴香が洗面所から静かに出てきて、ハンカチで丁寧に手を拭きながら言った。「私がやったわ」晴香は息も絶え絶えに震える聡を見つめながら冷ややかに笑った。「聡。あなたが昔私に言った言葉を覚えてる?渚の件で私を苦しめた時、当然の報いだと言っ
瑶子が聡が倒れるのを見て、駆けつけて叫んだ。「聡!大丈夫なの?返事して!」しかし、聡は瑶子を見ようともせず、側に立っている、ただ自分を見下ろしているだけの晴香に視線を向けた。「晴香、怪我はないか?」「なんてこと。そんな時になぜこの女のことを気にかけるのよ?この女は、不幸を招く疫病神のような存在なのに!」瑶子は晴香に向かって罵った。晴香は、聡の胸元から流れる血をただ眺め、その場から動くことはなかった。聡は晴香に手を伸ばし、彼女の目を見つめた。「晴香……」「何ぼんやり突っ立ってるの?早く救急車を呼んで!」晴香がスマホを手にした瞬間、警察がドアを蹴り開けて雪崩れ込んできた。パニックに陥った莉子は、逃げ出そうとしたところで警察に取り押さえられた。「この女、うちの息子を刺したのですよ!早く捕まえてください!」瑶子はもう莉子を憐れむ気など失せていた。震える手で莉子を指さし、低く唸った。「ああ、聡、お願い、死なないでちょうだい!」結局、莉子は逮捕された。刑務所からの脱出と傷害罪で無期懲役の判決を受けた。晴香にとって、無期懲役こそが何よりの復讐だった。莉子はようやく、報いを受けたのだ。聡は重傷を負い、搬送先の病院でそのまま緊急手術を受けた。手術室の外で、瑶子は狂ったように晴香を叩いた。「あんたのせいよ、全部あんたのせいよ!あんたがいなければ、聡はこんな傷を負わずに済んだのに!」晴香は立ち尽くしたまま、瑶子の拳を抵抗せずに受け止めていた。「聡が今こんな目に遭っているのは、自業自得ですよ」そんな晴香の言葉に瑶子は激昂し、思わず晴香の頬をひっぱたいた。「黙りなさい!なんてことを言うの?聡はあんたのために盾になって死にそうなのよ。よくもそんな薄情なことが言えるわね!」パシッ。晴香は怒鳴る瑶子の顔を、思い切り叩き返した。「言ったでしょう?聡がこんな目に遭っているのは、自業自得で、誰のせいでもないです!私を水槽の中に入れた時に、こんな未来を予想していればよかったのに!」「あんた、私を打ったの?」瑶子はやり返されるとは思わず、逆上した。「あんたは聡にいじめられたと言いたいの?実際はどうなのよ?元気に生きてるじゃない?」「お二人とも、ここは病院です。喧嘩はお控えください」通りがかりの看護
「誰と連絡取ってるんだ?」聡が顔を近づけてきたのを見て、晴香は素早くスマホを閉じた。「別に。誰でもないわ」「怖がらなくていい。俺がお前を守る。莉子には絶対に指一本触れさせないから」聡のそんな言葉に対し、晴香はただふっと微笑んだ。晴香には、莉子がどこへ逃げたのか大体予想できた。そしてその予想は的中した。間もなくして、勇太からメッセージが届いた。その内容を見て、晴香は隣の聡を見上げた。「あなたの実家に行ってみない?」「母さんのことは好きじゃないだろ?それに最後に縁を切ってから一度も会っていない。急にどうして?」「思い出したの。以前そっちに行った時、腕輪を置いてきちゃったみたい。昔、私のおばあちゃんからもらったものなの。高価じゃないけど、どうしても取り戻したくて」「分かった。お前の言う通りにしよう」二人が山口家の本邸に着くと、瑶子が顔を見せた。聡がついに自分と仲直りしに来てくれたと思ったのだろう。だが、そこに降り立ったのが晴香であったことに、瑶子は顔を曇らせた。「何の用でここへ?」「別に。晴香がここに腕輪を忘れたみたいで、取って帰るだけだ」聡が言い終えるか終わらないうちに、2階から莉子が駆け降りてきた。「聡さん!」莉子は勢いよく聡の胸に飛び込み、過呼吸気味に泣きじゃくった。「聡さん、すごく怖かった。ずっと会いたかったの。刑務所の中が本当につらくて……お願い、助けてくれない?」目の前の莉子を見て、聡は目を見開いた。「なぜここに?お前、渚を死なせて刑務所に入ったはずだろ!すぐに警察を呼ぶ!」「嫌!呼ばないで!」莉子は、自分に向けられる聡の愛を過大評価していた。聡が自分を愛していると思っていたが、実際自分は彼にとって姉の代わりに過ぎなかったのだ。「聡さん、どうしてそんなことを言うの?やっと逃げ出してきたのに、行くあてなんてないわ」「そうよ、聡。莉子はもう十分に反省しているわ。私が手配したプライベートジェットで、すぐに海外へ逃がすから」瑶子の優しさは相変わらず歪んでいた。晴香はこの光景を冷めた目で見つめながら、スマホを確認した。勇太からのメッセージが届いていた。【警察はもう向かっています。藤原の罪をもっと重くしたければ、今がチャンスです】晴香は目を細める。彼