冥界。死後の世界というのは、本当に存在するのね。晴香の魂は暗闇に浮かび、何も見えなかった。誰かがそばを通り過ぎた気がしたが、顔は見えない。行く当てはなかったけれど、どこへも行きたくなかった。ただ人間界へ戻りたかった。どれくらい彷徨っただろう。閻魔様が晴香を呼び出した。「三途の川を渡ろうとしないところを見ると、何かこの世に強い未練があるようだな」「はい。晴らさねばならない恨みがあります。帰らなければなりません」「魂は輪廻する。どうしても人間界へ戻るというなら、相応の報いがあるぞ」「どんな報いですか?」「魂は消滅し、輪廻転生ができなくなる。それでもよいか?」晴香は悔しかった。このまま無念を抱えたまま死ぬことが耐えられなかった。来世などどうでもいい。この恨みを晴らすだけでいい。「覚悟はできています」「よろしい。7日やる。全てを片付けて戻ってこい」その瞬間、金色の光とともに体が吸い上げられるような感覚がした。気づけば、再び自分の肉体の中へ戻っていた。目を開けようとしても、ピクリとも動かせない。耳元で、誰かが泣き声で話していた。「そんな……水を止めろと言ったはずだ。なぜ死んでいるんだ?」聡は、床で冷たくなった晴香の姿を見て使用人たちに怒鳴った。「そんな簡単な仕事もできないのか!」聡が報告を聞いたとき、頭は真っ白になった。晴香が死んだ?そんなはずはない。薬が致死量ではなかった上に溺れないように水位も制限していた。死ぬなんておかしい。慌てて海辺の別荘へ戻ると、そこには晴香の亡き骸があった。髪が濡れて、血の気を失った晴香は、あまりにも静かだった。鼻元に指を近づけたが、微かな温もりさえ感じられなかった。聡は膝から崩れ落ち、ゴン、という音だけが空虚に響いた。しばらくして、ようやく顔を上げた。「晴香……」名前を呼んでも、何の返事もない。使用人が震える声で告げた。「旦那様、奥様は亡くなってからすでに数時間経っています」聡は狂ったように叫ぶ。「嘘だ!こんなはずがない!君たちは一体何をしたんだ!」「おっしゃった通りのことをしただけで……何もわかりません」使用人たちは恐怖で震えていた。そばでは莉子が涙をこぼしていた。「聡さん、晴香さんのことをあんなふうに
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