転生したら首が揺れる系ヒロインだったので、首を揺らすのを止めたら溺愛が待っていた!의 모든 챕터: 챕터 31 - 챕터 40

64 챕터

第三十一話:推しも悪魔も心を読む(気がする)問題

「確かに、お兄様と踊れば上手く踊れると思いますわ。ですが、他の殿方に誘われた時、恥をかくのはソフィアですのよ!」レミリア様は頬を膨らませ、ユリエル様に抗議している。ああもう、プンプンしてるレミリアたんも、いとカワユス……そんなことを考えていると、キッと私を見据え、「ダンスは私が完璧に教えます! よろしいですわね!」と、力強く宣言された。や〜ん、レミリアたん……怒ってても可愛い……なんてほんわかしていると、くすりと笑う気配。視線を向けると、ユリエル様が楽しそうにこちらを見ていた。「良かったな、レミリア。ソフィアは、どんなお前も可愛いってさ」(えっ!?)(ユリエル様、心が読めるの!?)思わず固まる私を見て、彼は堪えきれずに笑い出す。「ははっ、安心しろ。心は読めないよ」「ソフィアは全部、顔に書いてあるだけだ」「~~~~っ!」慌てて両手で顔を押さえると、「本当に面白いな、お前は」頬杖をついたまま、優しく目を細める。くっそー!!顔が良すぎるんだよ!! 見惚れるな、私!!忘れたのか!?コイツは顔面偏差値SSのドS悪魔!!歩く誤導装置……いや、悪魔か!!必死に自分に言い聞かせる。──その、瞬間。「酷いなぁ。"歩く悪魔"だなんて」至近距離から、声が落ちた。「……っ!?」いつの間にか距離を詰められていた。逃げようとした腕を、そっと捕まえられる。「なぁ、ソフィア」耳元で、甘く囁く。「そんなに警戒しなくてもいいだろう?」ぞくり、と背筋が震えた。(やっぱり……。絶対、読んでるよね!?)──※何故なら、悪魔だから!
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第三十二話:社交ダンスよりもドS若公爵の相手の方が難しい……

「はい! ソフィア、足が違いましてよ!」「ソフィア、笑顔!」「ソフィア!」──あれから、鬼のレミリア様にしごかれております。レッスン初日。レミリア様とユリエル様のお手本ダンスを拝見したのだけれど──それはもう、まるで夢のように美しかった。某ネズミの会社が制作する映画のワンシーンみたいに。普段は悪魔、腹黒ドS若公爵様が──この時ばかりは、本物の王子様に見えたくらいに。(レミリア様の可憐さは……言うまでもありませんよね)そして私も一曲目はユリエル様と。足を踏むんじゃないかとビクビクしていたのに──これが、意外とスムーズに踊れたの!(え? 私、社交ダンスの才能あった?)……なんて思ったのも、束の間。パートナーを変えた途端に──ムギュッ。「あ……ごめんなさい」ドカッ。「あ……ごめんなさい」……の連続。悔しいけど、ユリエル様のリードが上手すぎるのよね。その点、我が推しのレミリア様は──パートナーが誰であろうと、変わらぬ美しいダンス。思わず拍手したら。「何を呑気に拍手なさっているの! あなたもこれくらい踊れるようになるのよ!」と怒られました。(よぼよぼ)練習後は、毎回。申し訳なさから、パートナーに治癒魔法をかけていたのだけれど──ある日。突然、顔をぐいっと掴まれた。「お前は、その顔で何をしている」「私のせいで怪我をなさったので、治癒魔法をかけているだけですが!」「ほぉ?」低く、冷たい声。「毎回、目を潤ませて『ごめんなさい、痛いですよね』と?」「……え?」なんで知ってるの?背中に、ぞくりと寒気が走る。そのまま、ぐっと顔を引き寄せられる。「……やめろ」「は?」「他の男に、そんな顔をするな」── 一瞬。空気が凍った。「……はぁ!?」思わず素で叫んだ。いやいやいやいや!!
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第三十三話:ダンスパーティー

遂に──ダンスパーティーの日がやって来た。鬼と化したレミリア様のしごきに耐え、三日前にようやく「まぁ……これならよろしくてよ」と合格をいただいた。(ひゃっほ~い!)おさらいとしてユリエル様とのダンスも無事にクリアし、血と汗と涙のレッスンは幕を閉じた。「ソフィア、少しよろしい?」レッスン後、レミリア様が静かに手招きをする。近づくと、少し言いづらそうに視線を逸らしながら「ドレスと装飾品は、お兄様が用意してしまいましたから……」そう言って、リボンを差し出された。ドレスと同じ布地に、銀糸と金糸の刺繍。先端には、小さなダイヤがきらめいている。「これは……?」驚いて見上げると、彼女は小さく呟いた。「マダム・マリーにお願いして、端切れで作りましたの。刺繍は、得意ですから」──え?レミリアたんが?私に?(え、ちょっと待って。これ……ファンサでは?)(推しの手作りとか、即死案件なんですけど!?)感動で固まる私に、「要らないなら、結構ですわ!」とリボンを引っ込めようとする。「ちょ、待って!!」慌ててその手を掴み、自分の手首に巻き付けた。「ありがとうございます! めちゃくちゃ嬉しいです!!」叫ぶと、レミリア様は頬を染めてそっぽを向く。「そんな、取って付けたような言葉……嬉しくありませんわっ!」……とか言ってるけど。耳まで赤いんですけど?もう、無理。可愛すぎる。「レミリアたん、好き♡」思わず抱きつくと、「ちょっ、ソフィア! おやめなさい! はしたない!」と、慌てている。あぁ……今日も推しが尊い。その余韻に浸っていた──その時。「おい」低い声。「……おい」……聞こえない。今は推しとの時間。男の声はシャットアウトです。──そう思った瞬間。ガシッと頭を掴まれ、そのまま後ろに引きずられる。「痛い痛い痛
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第三十四話:悪魔のごとき、イケメンの微笑みはロッテを惑わす

すると、ロッテがとんでもないことを言い出した。 「だってお嬢様、毎晩毎晩……ユリエル様のお名前を寝言で呟いていらっしゃいますもの!」 その瞬間、私は悟った。 ──終わった。 (ロッテ……それは寝言じゃなくて、うなされているのよ!) 心の中で絶叫する私の前で、ユリエル様の動きがぴたりと止まる。 そして――ゆっくりと、笑った。 「へぇ……どんな夢を見ているんだろうな?」 「ひっ……」 「逃げられると思っているのか?」低く落ちた声に、背筋が凍る。 「お聞かせするような……夢では……」必死に言い繕いながら、どうやってこの場を切り抜けるか頭をフル回転させる。 ──その時だった。 「それにユリエル様からのプレゼントのサンドバッグに、ユリエル様のお名前を付けて……それはもう、毎日大事に殴っていらっしゃるのですよ!」 (ロッテ……わざとよね!? ねぇ、わざとだよね!?) 「へぇ……そんなに大事にしてくれているなんて、嬉しいなぁ」 「あはは……あは……はは……」笑うしかない。完全に詰んでいる。 「ロッテ、いつもソフィアを支えてくれてありがとう」ふわりと、あの完璧な笑顔。その瞬間、ロッテの頬は真っ赤に染まり、うっとりと見惚れている。 (はぁ……顔面凶器め……)そういえば以前、私が冗談で言ったことがある。 『そんなにユリエル様が好きなら、ロッテが婚約者になればいいじゃない』 するとロッテは目を輝かせて、こう言った。 『お嬢様! 何を仰っているのですか! あんなに完璧な方は観賞用です!』 ……その気持ち、今なら痛いほど分かる。私も、できることなら遠くから安全圏で観賞したい。 ──関わりたくない。そう思った、その時。 「……で、いいかな?」 「もちろんです! ねっ、お嬢様!」目を輝かせたロッテと
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第三十五話:色気が凄すぎます……ユリエルさま

そして今──朝早くから起こされ、アルシェイン家の美容部隊総動員で、私とレミリア様は磨きに磨かれた。そう……頭の先から爪先まで、それはもう……ピッカピカに……。鏡の中の私は、元々の美しさがさらに引き立ち、思わず息を呑むほどの美少女になっていた。「お嬢様、本物のお姫様みたい」夢見るように呟くロッテの言葉に、私は苦笑いを返した。すると、私のドレスと対に作られたタキシードを着たユリエル様が現れた。ボタンカフスが、ピンクダイヤモンドだ。……なんか、小っ恥ずかしい。いつもは束ねている解いた黒髪が、ずるいくらい艶っぽかった。(はぁ……観賞用にはもってこいなのになぁ~)すると、ユリエル様が私の視線に気付き、ニヤリと微笑んだ。「良いところに来たな。これで髪を結んでくれ」手渡されたのは、レミリア様の手作りリボン。「我が妹は兄思いでな。お揃いを作ってくれたんだ」──嘘だ。絶対、作らせたでしょう!ジト目で見上げると、「どうした? 早く結んでくれないか?」やけに上機嫌な悪魔《ユリエル様》が微笑む。機嫌を損ねるのも面倒だ……と、私はユリエル様の髪を束ねた。ふわりと香るその匂いに、思わず息が止まる。……こいつ、匂いまでイケメンかよ!心の中で毒づきながら、サラサラの漆黒の髪をまとめた。ユリエル様はフェイスラインが美しいので、やっぱり髪を束ねている方が素敵だ。……と、マズイマズイ!見た目に騙されるな。中身は悪魔より悪魔なドS若公爵様なんだから!私は首をブンブンと振って、自分を叱咤する。するとユリエル様は、私の髪に結ばれたリボンに触れながら「今日のソフィアは、いつもの数倍綺麗だな」そう言って微笑んだ。その笑顔の破壊力たるや……。私の心臓が、バクバクと早鐘を鳴らし始めた。(血迷うな、私! 相手はユ
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第三十六話:ドS若公爵様の甘い罠

ガタガタと一定のリズムで揺れる馬車。 会場へ向かう車内には、三者三様の空気が流れていた。ご機嫌な様子で口角を上げている「悪魔」ことユリエル様。落ち着きなく視線を泳がせる私。そして、その光景を半分呆れ顔で眺めるレミリア様。 「……もう、どこからツッコめばいいのか分かりませんわ」レミリア様が扇子で顔を半分隠し、深いため息をつく。 「ですよね~! ですから私は、レミリア様の隣に座らせていただこうと……」 「ダ~メ。ソフィアの席は、ここだよ」甘く、拒絶を許さない囁き。逃げ出そうと浮かせた腰を引き寄せられ、気付けばいつもの「定位置」──ユリエル様の膝の上に戻されていた。 「お兄様、一体何をどうしたら、そうなったのです?」問い詰めるレミリア様に、ユリエル様は悪びれもせず肩を竦めてみせる。 「ん? ソフィアがさ、俺を『クソバカドS若公爵』って呼んだんだ。酷くないか? だから今日一日、ソフィアの指定席は俺の膝の上。異論は認めないよ」そう言って、私の髪に結ばれたリボンを指先で弄り、愛おしそうに口づける。その甘やかな仕草に毒気を抜かれた──次の瞬間。首筋に、チリリッ……と熱い感触が走る。 「ちょっ……、今、噛み……っ」 「大丈夫。これをしておけば……さっきの印も見えないから」抗議しようとした唇を長い指でそっと塞がれ、手際よくチョーカーを結び直された。 (あぁ、そうなのね……跡を隠してくれたのね……)と納得しかけて──。 「違う! そういう問題じゃなくて!」我に返って立ち上がろうとした瞬間、タイミング悪く馬車が大きく跳ねた。 「危ないっ!」咄嗟に腕を引かれ、そのまま逃げ場のない椅子へと押し倒される。目の前には、あと数ミリで触れそうな距離にある端正な顔。全てを見透かすような、深く、吸い込まれそうな漆黒の瞳。心臓が耳元で鳴っている。息が止まり、指先一つ動かせない。 「……ごほん。私、別の馬車に
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第三十七話:告白と口づけ──そして忍び寄る黒い影

「ソフィア……驚かないで聞いてね」いつになく真剣なレミリア様の顔に、こくりと頷く。「実は数日前から、我が家にソフィアを攫おうと何人も刺客が送られて来ているの」 「えっ!」 「お兄様といれば、まずは安心だからと傍にいさせていたのだけれど……。まさか夢でうなされるほどとは」溜め息交じりに言われてしまう。 (あ……バレてる) 「そのキスマークは、クソバカ王子への牽制よ」 「牽制?」 「そう。以前、あなたにお兄様が保護魔法をかけたついでに残したでしょう?」レミリア様はそう言うと、キスマークのある場所をそっと指差した。 「その時はまだ犯人が分からない時だったから、犯人のあぶり出しが目的だったの。そうしたら、釣れたのよ……大物が」そう言って、レミリア様が扇を静かに開いた。 「あの、クソバカ王子があなたを狙っているの」レミリア様の言葉に、目の前が真っ暗になった。 「なんでも、私とお兄様があなたを監禁していると思っているみたいですわ」 「えっ?」 「だから今日……必ず動くと思うの」扇がぱちりと閉じられた。「まぁ、あなたはそのドレスにも、チョーカーにも、イヤリングにさえも、お兄様の保護魔法がかけてあるから大丈夫だとは思うけれど……」 「相手は王族だ……どんな手を使うのか分からないからな」 「念には念を……と、ね」ニッコリと微笑むレミリア様。 「でも、それとこれとは……なんの意味が?」首の跡をそっと押さえて呟くと、 「あら! ここまで言って、まだ分からないの? ソフィアったら、鈍感さんね」クスクス笑うレミリア様に首を傾げると、「魔力を持つ人間の……その、触れた痕跡が、一番効くのよ」そう言われて、かあっと頬が熱くなった。 (じゃあ……あの時のキスは、本当に……)てっきりからかわれただけだと思っていた。「お兄様は、この国屈指の魔力をお持ちなの。この髪色と瞳の色は、その証拠。だからこそ、狙われるのですわ。お兄様ご自身が、薬にも毒にもなり得るのですから
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第三十八話:攫われた花嫁──闇に堕ちる前夜

目を覚ますと、私は見知らぬ部屋の中にいた。静まり返った空間には明かりがなく、窓を叩く風雨の音だけが耳に残る。「ソフィア……やっと君を取り戻せた」その声を聞いた瞬間、背筋が凍った。身に着けていたはずのドレスはなく、私はベッドに横たえられていた。周囲を見渡すと、着ていたドレスは無残に切り裂かれ、レミリア様が刺繍してくれたリボンは紙吹雪のように切り刻まれて床に散らばっていた。「許せないよ……。愛しい僕のソフィアに、こんな物を着せるなんて」暗い瞳が、執着の色を浮かべながら私を見下ろす。外では稲光が走り、部屋の輪郭を青白く照らし出した。次の瞬間、クリフォード殿下は私の髪を、親が幼い子をあやすように撫でながら、「安心していい。ここには誰も来ない。約束しただろう? ここは二人だけの、愛の巣だよ」そう言って、満足そうに微笑んだ。「可哀想に……。アイツらに脅かされていたんだろう?でなきゃ、きみが僕から離れるなんて、あり得ないよね?」薄暗い灯りの中、ニヤリと歪む笑みが浮かび、白い歯だけが不気味なほどはっきりと見えた。(……違う)これは、愛じゃない。ユリエル様の慈しむような瞳とは違い、執着と独占欲に歪んだ眼差しは、じわりと心を冷やしていく。恐怖で身体が震え、声を出そうとしても喉が張り付いたように動かない。生理的な本能が、ただひたすらに危険を告げていた。「ああ……愛しいソフィア。もう大丈夫だよ。これからは、僕がずっと傍にいる」その言葉に、血の気が一気に引いた。まるで、子供が駄々をこねて買ってもらったおもちゃを手にしたような顔に、恐怖が襲う。身体は言うことをきかず、視界が歪む。──そのとき。稲光が激しく閃き、刹那、彼の顔が照らし出された。恍惚とした表情で、私を見下ろすその瞳。それは、愛する者を見る目ではない。明らかな所有欲と独占欲。無意識に、これまで自分に向けられていたユリエル様の瞳が、どれほど大切に慈しんでくれていたのかを実感する。そんな事を考えていると、クリフォード殿下が私の髪
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第三十九話:3時間前 パーティー会場

馬車から降りた私の手を、ユリエル様が自然に取った。 そのままパーティー会場へと歩き出すと、 眩いシャンデリアが輝く大広間が、ざわっ──と静まり返った。 まぁ、そりゃそうよね。 お揃いの装飾、対になったリボン。 そして、私の瞳の色と同じ”ピンク”のボタンカフスを身につけたユリエル様。 極めつけは、普段は眉間に皺を寄せた”ムッツリ腹黒若公爵”が、今日に限ってやたらと上機嫌なこと。 ……視線が集まらない方がおかしい。 「ソフィア、俺から離れるなよ」 耳元に落ちる低い声に、馬車の中の出来事を思い出して、顔が一気に熱くなる。 すると、そっと腰を抱き寄せられて── 「そんな恥じらう顔は、他の人に見せちゃダメだろう?」 吐息が触れそうな距離で囁かれたら…… そりゃ、真っ赤にもなるじゃない!! 思わず睨み上げると、ユリエル様はいたずらっぽい笑みを浮かべている。 心臓がドクドクと鳴り響いて、今すぐその場から逃げ出したい衝動を、必死に堪えた。 (無理無理無理……前世でも、こんな甘々展開、一度も経験したことないって……!) 恥ずかしさで頭の中が真っ白になりかけた、その時── ふと、ある人物が記憶の中をよぎった。 ……あ、いたな。 私を、唯一”女性”として扱ってくれた人。 私はなぜか、“彼”のことを思い出していた。
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第四十話:前世の記憶

そんな時、ふと、ある人物を思い出した。 ──前世で、唯一、私を”女の子”として扱ってくれた人。 前世での会社で、私は経理部に所属していた。 コピー用紙の箱が届くと、経理部の男性陣──六十歳直前の課長と、五十代の主任は、 雑務は女の仕事だと言わんばかりに、見て見ぬふりをする。 他にも女性はいたけれど、人に頼むより自分でやった方が早く、 結局、重い荷物を運ぶ役目は、いつも私だった。 その日も、重たいコピー用紙の束が入った箱を持ち上げようとした、その瞬間。 「渡良瀬さん、待って! 俺が持つから」 営業部のホープ──松永君が、走ってきたのだ。 「え? 悪いよ。松永君、営業部なのに」 「気にしないで。経理あっての営業でしょう?」 そう言って、爽やかな笑顔を向けながら、コピー用紙を軽々と運んでいく。 (イケメンの爽やかスマイル……眩しすぎ……) この時、私はようやく気付いた。 今の自分が”女”として扱われることに、どうしてこんなにも戸惑っているのかを。 前世の私は、男メンバーにいじられるキャラで、 力仕事はいつも、私の担当だった。 荷物を運んでいると、 「お! 渡良瀬、男前! これもよろしく!」 そう言って、荷物の上にさらに荷物を乗せられる。 そんなやり取りが何度も重なるうちに、 寂しさを感じながらも、今さらイメージを覆すことは出来ないと、諦めていた。 そんなある日、ふいに荷物がふわりと軽くなった。 驚いて見上げると、そこには松永君がいた。 「渡良瀬さん、また無茶して……」 苦笑いしながら荷物を持ち上げた彼は、こう言った。 「渡良瀬さんは”女の子”なんだから、無理しちゃダメですよ」 ──その一言が、胸の奥を強く揺らした。
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