Se connecter婚約者の浮気現場を目撃し、逃げ出した私は事故で死んだ。 目を覚ますと、そこは漫画の世界。 ヒロイン・ソフィアに憑依していた──しかも、ざまぁされる直前に。 すでに評判は最悪、逃げ場なし。 そのうえ──勝手に首が揺れる。 (いや無理無理無理!! なんで!?) このままじゃ、破滅一直線。 そんな未来、絶対にごめんだ。 運命を変えると決めた私は、悪役令嬢と手を取り立て直しを始めるが、 なぜか腹黒ドS公爵に執着されて……? 誤解と裏切りから始まる、リベンジ×再生×溺愛ファンタジー
Voir plus世の中には、男にモテる女と、そうじゃない女がいる。
私は昔から責任感が強く、学生時代はなぜか毎回、学級委員に選ばれていた。 小・中・高、すべて学級委員。 ──当然、モテない側だ。 それでもいいと思って生きてきた。 好きでもない男に好かれるくらいなら、一人でいる方がマシだと、本気で思っていた。 周りからは「一人で生きていけそう」とか、「肩で風切ってる」なんて言われてきた。 ……本当は、寂しくないわけじゃない。 でも、それを見せるのが悔しくて、ずっと強がってきた。 ──こういうところが、可愛くないのかな。 そんな私の周りには、なぜかいつも“首が揺れる女”がいた。 「菜穂ちゃんは強いから~」 そう言って、口元で手を合わせて「えへ」と笑う。 その首は、いつもふわふわと揺れている。 男は、大体こういう女が好きだ。 フリルにパステル、ゆるふわの髪。 甘い香りをまとって、天然を装いながら、男の懐に入り込むのが上手い。 (ちなみに私も天然らしいけど、私の場合は“お笑い担当”らしい) そんな私にも、社会人になってから彼氏ができた。 婚約が決まった矢先── 彼は、“首が揺れる女”と浮気した。 しかもその女は、二児の母。 既婚者であることを隠したまま、彼に近づいていた。 そしてある日。 私は、ホテルから出てくる二人を見てしまった。 頭が真っ白になって── 気づけば、走り出していた。 次の瞬間。 強い衝撃と、ブレーキ音。 視界がぐらりと揺れて、地面が近づいてくる。 ──ああ、これ。 死ぬやつだ。 意識が遠のく中で、ふと思い出したのは、昔スナックで出会った女の言葉だった。 「私、首が据わってるでしょう? それがダメなんだって。男は、首が揺れてる女が好きなんだって……」 皮肉なことに── 私が最後に見たのは、 婚約者の背後で、口元を押さえながら、 “ショックを受けたふり”をしている彼女の姿だった。 その首が、ゆらゆらと揺れていた。この女神、どうしてこうも緊張感がないのかしら。私はいぶかしげに彼女を見ながら尋ねた。 「なんで、そこまでしてくれるの?」女神は少し寂しそうに微笑んだ。 「本来あなたは、婚約者と結婚して幸せになるはずだったのです。 それを──元ソフィアである彼女のせいで……」そこで突然、女神が涙をこぼした。 「えぇっ!? 泣きたいのはこっちなんですけど!!」思わずツッコミを入れる私。 「だってぇ……! あんな女に好き勝手されるなんて耐えられないのです!あなたにはこの世界で幸せになってほしいのです!」その真剣な訴えに、私は頬をかきながら小さく笑った。 「……ありがとう。女神様の気持ち、受け取らせていただくわ」 「大丈夫! あなたなら、絶対に幸せな未来を掴めますからっ!」 ……その元気だけは、本物みたいね。 ──そして学園に到着。女子たちからは遠巻きに見られ、ヒソヒソ話が飛び交う。まさに、針のむしろ状態だ。彼女、よくこんな環境で平気だったわね。ある意味、鋼メンタルよ。 「あら。今日は他の殿方をはべらせていらっしゃらないのですね」 その声に振り返ると、悪役令嬢・レミリア様が立っていた。気の強そうな吊り目、美しい真紅の髪にルビーの瞳。 そう──漫画版『キミセカ』で真のヒロインとして描かれていた存在。その完璧な美貌に、思わず見惚れてしまった。 「あら、あなた。今日は首が揺れていませんのね」 ……おおっ!? 気付いてくださった!!そう、あの後、女神にお願いして“首が揺れない”ようにしてもらったのだ。首が揺れるのは赤べこだけで十分。しかも、あれで世界を見ると酔うのよね。 (うん! 揺れてない! 私、勝った!!)──そんな私の努力に気付いてくれ
結局その後、並本雪花は“職場の風紀を乱した”という理由で契約を切られたらしい。 ……まぁ、当然の結果だろう。でも彼女のおかげで、鬱憤が溜まっていた営業部の女子たちが私たち経理フロアにやって来て、まるで憂さ晴らしのように文句を言っていった。結果的に『昨日の敵は今日の友』状態。彼女が去った後の職場は、見違えるように平和になった。ちなみに、営業部の一部のバカ男子と部長はこう言っていた。 「雪ちゃんは、嫌われ役を演じて女子たちを仲良くさせたんだよ」 ……どんな聖母設定よ。どこをどう見ても、ただのクラッシャー女でしょ。 (クラッシャー女って、どんだけよ)彼女が辞めた後も、後味の悪さは残った。そして、こんな伝説までできた。 「ずっと首が揺れてる女って、女の敵よね!」 ──そのとき、私は初めて“首が揺れてる女”というワードを知った。後に部長に連れて行かれたスナックでも、ホステスさんが同じことを言っていた。 「首が揺れてないとモテないんだって」 ……いや、どんな理屈!?想像すると、頭に浮かぶのはお土産屋の“赤べこ”しかない。でも、思い返せば──前世で死ぬ間際、婚約者の背後から顔を出した彼女の首は……確かに揺れていた。そして今、ソフィアになった私の首も揺れている。 「でも、なんで彼女は私だけ攻撃対象にしたの?」思わず、女神に問い詰めた。 「あなたの婚約者、ホテルから出てきたのは浮気したからじゃないのよ」 「え?」 「むしろ、彼女のことなんて相手にしてなかったの」 思わず目を丸くした。 「どういうことでしょう?」女神の話によると、彼はしつこく送られてきたメッセージをすべて無視していたらしい。あの日も、彼女から“渡良瀬さんが他の男とホテルに入っていくのを見た”と連絡があり、確かめに行ったら嘘
そんな“雪ちゃん劇場”は、冬の間、延々と続いていた。 営業部の女子たちは、限界だった。 「職場はキャバクラじゃないんだよ!」 ついに、不満が爆発。 しかも彼女、婚約者のいる男性社員に書類を渡す時── わざと転んだフリをして、そのまま膝の上に座ったというのだから、呆れ果てる。 ……もう、ホラーでしかない。 それでも男性社員たちは「雪ちゃん」「雪ちゃん」と呼び、まるでお姫様扱い。 そんな中、彼女に物申せる男が一人だけいた。 ──営業部のホープ君、松永くん。 ある日、彼女が勝手に彼のジャケットを羽織った時のこと。 彼は無言でファ○リーズをシュッと吹きかけた。 「勝手に人のジャケットとか着るの、やめてもらえませんか?」 さらに、喜んでいる男性社員に向かって、こう言い放った。 「女物の香水の匂いさせて営業に行くつもりですか?」 蔑むような目。 その一言で、営業部の空気が一瞬で凍ったという。 以来、男性社員たちはコートを脱ぐと、すぐロッカーにしまうようになった。 そして松永くんは、彼女本人にもきっぱり言ったらしい。 「寒いなら、人のジャケットを着ないでください。他の女性社員は、ちゃんとひざ掛けや上着を持ってきています」 ──見事な対応だった。 この件で、松永くんの評価は一気に跳ね上がった。 営業部女子のハートを総ナメにしたとか。 だが、それでも雪花は懲りなかった。 ある日、大口契約を決めたメンバーで祝杯を上げることになった時のこと。 「私も参加したい!」
「ちょっと、並本さん。どういうつもり?」 私が怒りを抑えきれずに声を上げた、その瞬間だった。 「酷いです……。私、みんなと仲良くしたかっただけなのに……」ポロポロと涙をこぼし始めた。その涙に、私たちは何も言えなくなった。そこへ部長が通りかかり、眉をひそめる。 「まさか、社内いじめじゃないよね?」 ──そして、私たちは呼び出された。 けれど、そこは普段の人徳(という名の地道な信頼)が功を奏した。人事がきちんと話を聞いてくれて、一時は派遣契約終了まで話が進んだ。だが、最終的に彼女はなぜか営業部へ異動になった。うちの会社は、総務経理と営業部でフロアが違う。そのため、彼女に会うことはなくなった。 ──あの時は、それで終わったと思っていた。あの日以降、凛は彼氏と破局。葉子は片想いの人に振られ、私たちは最悪の後味を残したまま日々を過ごしていた。だが、彼女の異動によって、営業部の女子たちとも関係が悪化した。まるで、誰かが裏で焚きつけたかのように。そう、異動前から社内には妙な噂が流れ始めていた。──「経理部が意地悪して、並本さんを追い出したらしいよ」 ……はい、犯人バレバレ。営業部に行ってからというもの、彼女は“本性”を隠さなくなった。営業部は花形部署で、若い男性社員が多い。最初こそ猫を被っていたものの、徐々にボディタッチが増え、勝手に“お茶出し”を復活させていたらしい。 「外から大変な思いして帰って来てるのに、お茶くらい出してあげないと。独身の子には、そういう気が回らないわよね~」とか言って、夏は冷たいお茶、冬は温かいお茶を給茶機で入れていたそうだ。営業部の女子たちは注意した。 「並本さんが勝手にやるのは自由ですけど、私たちには求めないでくださいね」だが彼女は聞かない。 “お茶出し最優先”、仕