碧斗から聞いたその情報に、由利は驚いた。「変な飲み物ってどういう意味よ?」「俺も詳しくはわからないけど……たしかに紫苑に渡された飲み物を飲んでから、妙な気持ちになったんだ。どうしてあんなふうになったのかはわからない」俺の勘違いかもしれない――と碧斗は困惑した表情で付け加えた。しかし、彼の勘が鋭いということを由利は知っていた。何かが違うと碧斗自身が感じたのであれば、きっと勘違いなどではないだろう。(……もしかして、紫苑は碧斗の飲み物に何か薬を入れたのかしら?)考えられる可能性はいくつかあるけれど、その情報だけだと確信まではいかない。紫苑を問い詰めたところで、言い逃れをされるのは目に見えているし。――由利の脳裏に、こちらを見て笑う紫苑が浮かんだ。その笑顔の裏に隠された本当の姿を、彼女は三度の人生で既に知ってしまっている。まさかそんなことをするだろうかと昔の由利なら思っただろうが、今は違う。常人なら躊躇うようなとんでもないことを、平然とやってのけるのが紫苑だった。碧斗からその話を聞いた由利は、彼に忠告した。「……碧斗、これからはできるだけ紫苑から貰ったものを受け取らないで。食べ物や飲み物ならなおさら、口にしてはダメよ」「……ああ、わかったよ」碧斗は素直に応じた。彼の中でもまた、紫苑に対する疑いを抱き始めていたのだろう。(紫苑のことを……調べる必要があるわ……)――彼女が何か仕掛けてくる前に、今は出来る限りの対策をしなければならなかった。***それから数日後、由利はいつも通り家を出た。しばらくの間休職していた彼女にとって、久々の出勤だった。「――いってきます」玄関で挨拶をすると、起きてきたばかりの紫苑が言葉を返した。「姉さん、いってらっしゃい。今日はいつもより早いのね」「ええ、大事な仕事が急遽入っちゃってね……」既に碧斗と父は家を出たあとだった。二人ともいつも出勤はもっと遅い時間だが、どうやらあまり家にいたくないようだった。特に父は、淳子がいなくなってからというもの、紫苑を避けるように早く家を出ている。元妻にそっくりな紫苑を見るのが辛いのだろう。そのため、由利も最近は父とまともに話していなかった。「姉さん、早めに帰ってきてね。家に一人は寂しいから」「……ええ、できる限りそうするわ」由利は目の前でニッコリと笑う紫苑に笑い返
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