一方、夏目家を出た淳子は、軽い足取りで愛する人の住む家へと向かっていた。トランクに軽く荷物をまとめた彼女は、電車に乗り、隣町にある彼の家へと急いでいた。(ようやく、ようやく彼と一緒になれるんだわ……!)夏目家を追い出されたことを、彼女はもはや何とも思っていなかった。今心の中を埋め尽くすのは、ただ愛しき人と一緒になれるという喜び。由利や洋介はもちろん、あれほど溺愛していた紫苑ですら、今の淳子にとってはどうでもいい。淳子は結局のところ、子供よりも男が大切な人間だった。彼女は自身の行いを全て洋介のせいにして正当化していたが、元々性格が歪んでいたのだ。そんな彼女であれば、たとえ愛する人の子だったとしても愛せないのではないだろうか。「――聡!」彼女は事前に持っていた合鍵を使い、最愛の彼の家の扉を開けた。淳子と彼は、夏目家から少し離れたところにある小さなアパートで半同棲状態だった。洋介が仕事から戻る夜は夏目家に帰り、昼間は彼と暮らすアパートにいた。彼は夜勤が多い人であるため、昼は家にいることが多い。今日も絶対にあのアパートで自分を待っているはずだと、彼女は確信していた。突然家を訪れた淳子に、彼は驚いていた。「じゅ、淳子……どうしてここに……!?」「私ね、夫と離婚したの!だから一緒になりましょう、聡!」「り、離婚!?冗談だろう!?」突如彼女の口から飛び出した離婚という二文字に、彼は衝撃を受けていた。当然だろう、彼らの不適切な関係は今に始まったことではなく、なんと二十年にも及ぶ。二十年間ずっと離婚しなかった女が突然離婚したと言い出したのだから、信じられないのも無理はない。淳子は驚く彼に思いきり抱き着いた。「聡ったら、私が夫と離婚したのがそんなに嬉しいのね?仕方ないわ、私もあの人と離婚できるとは思ってなかったから」「……淳子、本当なのか?」淳子は彼の目をじっと見つめ、もちろんよと頷いた。見れば見るほど、彼女がかつて愛した彼によく似ている。(もし、あの人が年を取ったらこんな感じなんだろうな……)淳子は何も言わず、愛する人の面影を感じさせる彼を抱きしめた。特に秀でたところのない彼を愛する理由は歪んでいたが、本気の恋であることに変わりはない。淳子はこの日だけをずっと待ち望んでいた。しかし、洋介が自分を手放すわけがないと心のどこかで諦めていた。突然
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